医療用途向けの試作と小ロット生産

~各製造手法の長所・短所を徹底比較~

迅速な製造により機器や部品の市場投入を加速化


医療業界向けのパーツや機器の開発は、リスクの高い困難なプロセスであり、スピード(市場投入期間)と精度が成功には不可欠です。そのためには、新しい製品の設計や材料を評価したり、必要に応じて素早くその設計を繰り返し、迅速かつ一貫した費用効果の高い方法で試作品作りや小ロット生産を実施できる試作メーカーを選択することが重要な要素となります。

本ホワイトペーパーでは、射出成形、CNC 切削加工、3D プリンティングを取り上げ、医療業界向けの試作品作りと小ロット生産における各技術の長所と短所を比較検討します。また、検証と妥当性確認、形状・嵌合テストを含む、製品開発およびFDA(米食品医薬品局)承認プロセスについても取り上げます。

 

試作および小ロット生産のメーカーに期待すべき事項

医療製品の開発プロセスは、FDA の関門をいかに素早く通過できるかにかかっており、高品質の試作パーツを迅速に提供できるメーカーが不可欠です。

特に射出成形に関しては、短時間で何度にも及ぶ繰り返し作業が可能な迅速さと、一度に複数の繰り返し作業を並行して実施できる規模を備えたメーカーを選ぶ必要があります。

価格競争力も大切な要因です。価格競争力のある射出成形によって、費用効果に優れた短期生産が可能になり、製品開発者はリードタイムを短縮して、対応時間を増やすことができます。

短期生産が可能なことに加え、パーツをできるだけ早く入手できるよう、迅速な自動見積もりを行っているメーカーを探すことも必要です。3D CAD モデルをアップロードしてから数時間以内に自動見積もりを受け取ることができれば、確実に時間を節約できます。

見積もりを受け取る際に、パーツの製造性を向上させるような設計フィードバックをただちに提供してくれるメーカーが好ましいでしょう。これによりプロセスを大幅に加速できるとともに、製品の製造がより適切かつ容易になり、最初のパーツを生産する前に外観上または性能面での潜在的な欠陥を排除することができます。

迅速かつ一貫して高品質な試作パーツを納期通りに提供してきた実績があり、高い評価を得ている、経験豊かなメーカーを常に採用して下さい。また、依頼されたことを毎回実行できる能力と、学んだ教訓を後の開発段階に適用できる仕組みを備えていることも重要です。オンデマンド注文に対応できる規模を備え、完成品の製造手法を厳密に再現できること。さらに、医療業界で使用されている材料を用意でき、医療承認プロセスに関する基本的な理解を有していることも必要です。

3Dプリンティング

3D プリンティングは、複雑なパーツ形状であっても妥協なく、金型費よりも低コストで、新製品の設計を素早く評価できる優れた手法です。設計の変更が比較的容易であり、コストも低く抑えられます。

試作に3D プリンティングを使用するデメリットは、単価が上がること、そして色や表面仕上げの選択肢が限られていることです。また、プラスチックライクと呼ばれる材料は、金型や機械加工のプロセスで用いられる完成品のプラスチック材料と異なる場合があります。表面仕上げ、色、摩擦係数が完成品の材料と異なる場合、これらの特性の細かいニーズやメリットを正確に評価することは困難です。

3D プリンティングの最大のメリットは、正確な形状・嵌合テストができることです。3D プリンティングの製作プロセスでは、目的のパーツの形状とサイズを正確に再現できるため、新しい医療用パーツの初期評価に非常に役立ちます。医療用機器の開発者は通常、3D プリンティングを使用して設計上の欠陥を特定し、変更を加えてから、次の段階で機械加工パーツを製作したり、金型に投資したりして射出成形パーツを製作します。

多くの材料は3D プリンティングに適用できますが、使用される材料にかかわらず、完成品を生産するメーカーはパーツと材料の安全性・有効性を確認する責任を負います。使用予定の用途や環境における安全性を証明するため、パーツと材料のテストが必要です。

埋め込み型のパーツや機器は、より高い生体適合性基準に合格する必要があり、使用される材料が患者にもたらすすべてのリスクを明らかにする必要があります。

SLA(Stereolithography、光造形)
SLA(Stereolithography、光造形)は、頻繁に使用される3D プリンティングの1 つであり、モデルや試作品、パターン、場合によっては製造パーツを作る際に使用されます。UV レーザーなどの熱源で光反応性樹脂を硬化させることで、単一の薄い層でパーツを(場合によっては複数パーツの機器を1 つのパーツとして)製作します。SLA は一般的に、パーツ内での液体の流れを確認できるように、透明な材料で試作パーツを製作する際に使用されます。他のプロセスでは、穴があいたり表面が粗くなったりして、望ましい防水特性が得られない可能性があります。このプロセスを補うには、耐吸水性を備えた透明処方の材料を選択することが重要です。たとえばAccuraR ClearVue™プラスチックは、多様な用途向けにほぼ無色のパーツを作るために使用されます。

機器の形状・嵌合評価に関しては、高解像度のSLA によって医療用機器・パーツの用途が大幅に拡大しています。SLAを用いたラピッドプロトタイピングにより、形状・嵌合に関して設計を容易に繰り返すことができます。3D プリンティングによって、このプロセスが加速するとともに、製品設計者は材料の特性への依存を最小限に抑えて、パーツの強度や形状・嵌合に基づいて、パーツに求められる役割に焦点を絞れるようになります。

SLS(Selective Laser Sintering、粉末焼結積層造形)
SLS(Selective Laser Sintering、粉末焼結積層造形)は、CO2 レーザーを用いて高温の熱可塑性粉末床に描画する3Dプリンティングのプロセスです。レーザーによって粉末を素早く焼結(溶融)して固形にします。1 つの層が終わると、ローラーが床の上に新たな粉末層を積層するというプロセスを繰り返します。SLS は熱可塑性ナイロンを使用するため、パーツは精度と靱性に優れていますが、表面のきめが粗く、細部まで表現できません。SLS は、丈夫で耐久性に優れた医療用の試作品の製作に使用することができます。

DMLS(Direct Metal Laser Sintering、ダイレクト金属粉末焼結)
DMLS(Direct Metal Laser Sintering、ダイレクト金属粉末焼結)も、医療用パーツや機器の試作に使用される3Dプリンティングのプロセスです。このプロセスではレーザーを用いて粉末金属を焼結し、医療用機器で使用されることの多いステンレス鋼やチタニウム部品など高密度の金属パーツを製作します。

3D プリンティングのパーツメーカーを選択する際には、精度、品質、スピード、信頼性において優れた評価を得ている企業を探し、できるだけ早く高品質のパーツを確保できるようにします。

CNC切削加工

CNC 切削加工プロセスでは、ブロック状の材料を工具で切削加工してパーツを製作します。この試作手法は、金型費が不要で製品を迅速かつ比較的安価に提供できるため、製品ライフサイクルの初期および寿命末期に大きな役割を果たします。

CNC 切削加工プロセスでは、ブロック状の材料を工具で切削加工してパーツを製作します。この試作手法は、金型費が不要で製品を迅速かつ比較的安価に提供できるため、製品ライフサイクルの初期および寿命末期に大きな役割を果たします。

機器開発者は、関門を通過できなかった場合は単に方向転換するわけにはいかず、もう一度やり直す必要があるため、各関門で複数の設計オプションをテストすることにより成功率を高め、プロセスの終わりにただちに適切な製品を提供できるようにします。

切削加工は、エンジニアリンググレードの材料でパーツと機器をテストする上でも重要です。切削加工した金属やプラスチックは、完成品と同じ手触りと重さを再現できるため、医師テストでの誤った情報を排除できます。あらゆる金属試作に関して、CNC 切削加工は通常、製品の強度と重さをテストするための最適な選択肢となります。

CNC 切削加工はパーツの少量生産というニーズを満たすため、機器の需要が減り始める製品寿命末期において優れた費用効果を発揮します。こうしたオンデマンド受託製造は、余剰製品のための不要な倉庫スペースや、それに伴う金銭的リスクも減らします。

パーツの複雑さにもよりますが、CNC 切削加工は生産量が200 未満の場合に、費用効果に優れた選択肢になる可能性があります。パーツが200 以上の場合や、テストがすべて完了する前に設計変更の可能性がある場合は、CNC 切削加工よりも、アルミの金型を作って射出成形を行ったほうが合理的です。

 

射出成形
医療グレードの液状シリコーンゴム

射出成形は、医療用パーツや機器の開発における一般的な生産手法であり、プラスチック、金属、LSR(Liquid SiliconeRubber、液状シリコーンゴム)といった材料のパーツを最短で提供できます。これは、FDA の審査プロセスにおいて重要なメリットになります。この堅固なプロセスにより、再現性と信頼性に優れた成果が一貫してもたらされます。大半の射出成形メーカーでは、小ロットと見なされるパーツ数は約1 万個です。

小ロットでの射出成形のデメリットは、先行投資の金型費が少数のパーツで振り分けられてしまうこと、および金型の製作後に設計変更が必要になった場合、コストが高くなるという点です。しかし、高価な鋼鉄製金型の代わりに低コストのアルミ型を使用すれば、金型への初期投資の金銭的リスクを緩和できます。

射出成形パーツに多く見られる短所についても、理解しておくことが重要です。最終パーツには通常、バリ、パーティングライン、ウェルドライン、ゲートカット跡、エジェクタピンマークが見られます。設計が極めて難しい、または設計が不十分な射出成形パーツは、後に問題を引き起こすことになります。最適な射出成形の基準と慣行に沿ってパーツを設計することは、優れたパーツの生産に向けた最大の道を開くことになります。

材料

機器開発者は、さまざまなグレードのプラスチック、金属、液状シリコーンゴムといった多数の材料を試作や小ロット生産で利用しています。各材料に、異なった特性や用途があります。

医療用機器は滅菌の必要性があるため、材料が加熱滅菌に耐えられるよう保証するとともに、電子ビームやガンマ線による滅菌が極めて重要です。材料の生体適合性も、患者の皮膚に接触する機器の健全な相互作用を促進するには不可欠です。PEEK およびPEI は、凹凸のある物理特性を維持しつつ、高圧蒸気滅菌に耐えられる長期的生体適合性を備えたプラスチック材料です。

USP クラスVI およびISO 10993 試験の目的は、さまざまな種類のプラスチック材料の、生体内における生物反応を評価することにあります。これらの試験は生体適合性試験に代わるものではありませんが、メーカーが材料を分類するために頻繁に使用しています。多くのプラスチック供給業者は、自社の樹脂についてUSP クラスVI およびISO 10993 の認定を取得したほうが有利と考えており、樹脂が医療用機器に使用される可能性が高い場合には特にそうです。こうした認定に合格したプラスチック樹脂は、生体適合性に関して好ましい結果をもたらす可能性が高いと見なされます。

ロットが大きい場合のMIM(Metal Injection Molding、金属粉末射出成形)や、CNC 切削加工および3D プリンティングでパーツを試作する際に使用できる金属は、数多く存在します。たとえばプロトラブズでは、機械加工が可能な硬質および軟質金属を30 種類以上、コバルトクロムやインコネル、チタニウムといった少数の付加金属、射出成形に使用するステンレス鋼やニッケル鋼などを用意しています。特に、硬度、強度、および強靭性に優れた17-4 PH ステンレス鋼は、医療用機器に有用です。

医療グレードの液体シリコーンゴムで成形されたケーブルストレインレリーフ

LSR(液状シリコーンゴム)
LSR(液状シリコーンゴム)は、耐熱性、耐薬品性、電気抵抗、生体適合性、および滅菌時の極端な温度でもその特性を維持できる性質によって、医療用製品に頻繁に使用されています。LSR 成形は、高品質のLSR パーツの製作に用いられる一般的な製造プロセスであり、プロトラブズのような供給業者では数週間以内に小ロット生産が可能です。

二色成形
二色成形は、硬質パーツの外側または内側に柔軟な軟質パーツを成形するプロセスであり、医療業界での利用が増加しています。多くの場合、複数の部品を組み立てるよりも高い費用効果があります。エラストマーや液状シリコーンゴムのような二色成形材料は簡単に清潔にできる必要があり、設計の一部分と見なすべきです。ゴム製の二色成形ハンドルを備えた外科用機器がその好例です。液体の流れを確認し、すべての連携動作をより詳細に把握するために、試作時には透明な材料を使用すると有益です。パーツの見栄えは劣るかもしれませんが、試作の目的がパーツ内の液体の相互作用を観察することである場合、外見については将来の繰り返し工程で対処すればよいでしょう。

2 つのパーツから成る防水の密閉部品を製作する場合、事前に密閉方法を決める必要があります。設計上、超音波溶接は可能でしょうか。超音波溶接は、特にパーツが透明である場合、ひっかき傷などの傷がつく場合があります。熱板溶接はあまり望ましくありませんが、ひっかき傷のような外観上の問題が少ないため、困難なプロセスではありますが、選択される場合があります。 

再現可能で失敗や人為的ミスのリスクが低い、繰り返し作業の追跡手法を開発する必要があります。たとえば、繰り返しの作業の追跡にさまざまな色分けをしたパーツを用います。ただし、大幅に色を変更すると、成形の問題が生じる可能性があるので気を付けます。たとえば、ウェルドラインは色によって見え方が異なる可能性があります。

最終的に使用される医療用製品は、医学的な認定を受けた材料で製作し、パーツによっては無菌室など適切な環境で製造する必要があります。長い開発サイクルにおいて、予想される製品の生産期間中に、製造中止にならないであろう材料を選ぶことも重要です。さもないと、メーカーは新しい材料が適切であるか証明するために、再び審査に合格する必要が生じます。製造スケジュールの妨げとならないような、入手可能性の問題のない材料を選択します。

機器の市場投入

新しい医療用機器の開発を決定し、事業計画を策定したら、低リスク(例:歯ブラシ)、中リスク(例:血圧計カフ)、高リスク(例:ステント)など患者に対するリスクに基づいて機器を分類する必要があります。機器が最終的に使用される場所に応じて、適切な市販前申請を準備する必要があります。

A 510(k) は、FDA に対する市販前申請で、市販予定の機器が安全かつ有効であること、つまり合法的に市販されている市販前承認(PMA)対象外の機器と実質的に同じであることを証明するためのものです。当該機器が510(k) 要件を免除されていない限り、FDA に対する510(k) 市販前届は、少なくとも市販の90 日前までに提出する必要があります。

FDA によると、PMA は同機関から要求される最も厳しい機器市販申請であり、市販の承認を求めるためにFDA に提出するものです。PMA 承認は市販前届とは異なり、「PMA には機器が所定用途において安全かつ有効であるという合理的保証をもたらす十分かつ有効な科学的エビデンスが含まれるというFDA の判断に基づくもの」です。

IRB(Institutional Review Board、治験審査委員会)は以下のように述べています。「2 つの広範な基準を順守するために、ヒト被験者が関与する調査プロジェクトを審査します。1 つは被験者が過度のリスクにさらされないこと、もう1 つは参加に対して情報を得たうえで非強制的に同意していることです」。患者に相互作用する物の安全性をテストするために前臨床試験を実施するには、IRB の承認が必要です。

FDA は通常、組織がユーザーのニーズと製品要件に合致した製品設計を製作していることを保証するものとして、ステージゲートまたはウォーターフォールプロセスを位置づけています。多くのコンサルティング会社や工業デザイン会社は、FDA の承認プロセスに精通しており、このプロセスを進もうとする組織にとってコンサルタントの役割を果たします。

Nova-Tech Engineering の製造マネージャーであるPaulJossart 氏は、次のように述べています。「企業はユーザー要件に照らして、定量化可能な方法で製品要件をテストできる必要があります。ユーザーのニーズと、そのニーズに対応する機器の設計要件を確実に文書化したら、設計チームに引き渡して電子モデリングを行い、最終的に試作します」。

 

検証、妥当性確認、適格性評価

検証は、製品、パーツ、分類ごとに異なり、製品やパーツが適切かつ一貫した再現可能な方法で製作され、設計意図にも合致していることを保証するために行われます。妥当性確認の目的は、製品やパーツが顧客のニーズとすべての設計仕様に合致しているかを確認することにあります。

IDEXX Laboratories Inc.の医療用部品 (獣医が使用する血液・尿検査機器の一部)

IQ(Installation Qualification、据付時適格性評価)は、機器がメーカーの要件に合わせて安全かつ正確に据え付けられたかを検証するものです。その後、メーカーが規定したテストを実施して、要件に準拠しているか確認するために結果を評価します。OQ(Operational Qualification、運転時適格性評価)は、テスト計画の仕様に合わせて機器が適切に動作しているかを確認するプロセスです。結果が仕様に合致していない場合、調整を実施・記録して、再度テストを実施します。結果は報告書に文書化されます。機器のPQ(Performance Qualification、性能適格性評価)の目的は、生産プロセスの妥当性を確認し、その結果が典型的な作業環境で再現可能かどうかを確認することにあります。

 

成功率を向上

Jossart 氏は次のように述べています。「テスト段階のできるだけ早期に、完成品で使用される材料、特に患者と相互作用する材料を確保することが重要です。メーカーには、機器が後の段階で適切に機能するよう、機器を設計意図に合致させる能力が必要です」。

メーカーが試作品をエンジニアの手に素早く届けられれば、機器の市販化も早まります。材料の物性はさまざまであるため、完成品の材料の特性と合致させることは、有効なテスト結果を得るために重要です。

Jossart 氏は次のように述べています。「製品開発を成功させるには、製品設計とプロセスの連携が必要です。最初からうまくいく人は、ほぼ存在しません。短納期での試作パーツ製造サービスの活用なしでは、どうしたらよいか見当もつきません。小ロット生産のパーツを素早く製作できる試作品メーカーを探す能力が、成功に不可欠です」。

早い段階で失敗し、できるだけ開発の初期段階で問題点を把握し、迅速かつ効率的に試作を繰り返すことが、FDA の関門を何度もやり直すことなく合格するために重要です。適切なメーカーはこの作業を後押しし、機器の市販化に向けて一歩前進させてくれます。

出典:fda.org
   irb.umn.edu
   memmert.com
   wikipedia.com