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図解 樹脂部品設計

Volume 2 アンダーカットと貫通穴

射出成形によるパーツ側面のフィーチャの成形
ボードゲームの人生ゲームやモノポリーで使う家の形をしたコマを手にしたことはあるでしょうか。その家にはドアも窓もありません。これはシンプルな 2 方向抜き金型で成形するために、穴を開けていな いからと考えることができます。



もっとリアルな家にしたいとなった場合、パーツに作り込む必要のある形状としてドアや窓形状の開口部や凹凸など、2 方向抜きの金型ではアンダーカットとなるフィーチャが必要になります。そのようなフィーチャを成形するためには、射出成形を考慮した設計として、スライドや、置き駒、あるいは無理抜きなどを考慮して進める必要があります。この「図解 樹脂部品設計Volume 2」では、そのようなアンダーカット形状の取り扱いについてご説明します。

3D rendering of monopoly house with undercuts made with side-action cams
図1
スライドによる成形

アンダーカットフィーチャの成形で最も使われることが多いのがスライドです。スライドは型開き方向とは直角に動いてフィーチャを成形する金型部品です。スライドは金型が閉じている時に、側面部のフィーチャを成形し、固定側の金型が開く時に自動的に引き下がり、パーツを可動側の金型から取り出せるようにします。図1ではドア形状の開口部が形成されていますが、これは、可動側のコアにスライドが密着した状態で溶融した樹脂が充填され、その後でスライドが動いて形成されています。穴ではない、窪みのようなアンダーカット形状の場合も、同様の方法で成形することができます。

スライドはアンダーカットを成形する方法としては、比較的簡単ですが、注意点が2つほどあります。1つは、スライドが動く方向は型開き方向と直角である必要があるということです。パーツの側面が常に型開き方向に直角で、抜き勾配を設ける必要がないという好都合な形状はほとんどないので、製品を設計するにあたっては、スライドがアンダーカット面に対して直角ではなく、型開き方向に対して直角になるようにすることが重要になります。(スライド自体の抜き勾配は弊社で設計して製作します。)

図1の屋根には突き出した天窓がありますが、図2のように屋根の面上に天窓を設けるための開口部を形成する場合を考えてみましょう。図2-1のように角度のついた屋根に垂直な開口部をスライドで成形しようとしても、スライドは引っかかってしまうため、求める形状を成形できません。それに対して図2-2のようにパーティングラインに対して開口部が直角であれば、問題なく求める形状を成形できます。幸いにも、ほとんどの 3D CADソフトが、フィーチャーや抜き勾配を配置する面とその方向を定義する機能を備えています。

スライドは比較的小さなフィーチャを成形する際に使用されることが多いのですが、比較的大きなフィーチャの成形にも使用できます。図3で示しているのは、パーツの上下が金型の固定側と可動側で成形され、赤で示されている円周の側面部分が2つのスライドで成形されている例です。

Molded part circumference formed by cams
図3
テーパ合わせ面による成形

場合によっては、テーパ合わせ面※をうまく使い、スライドを使うことなく、2 方向抜き金型のみで成形できるようにして金型コストを抑えることができる場合があります。例えば、図1の家にはドア形状の開口部下に敷居がありましたが、図4のように敷居を無くしてしまえば、このフィーチャは固定側と可動側の金型のみで成形できるようになります。

※固定側と可動側の合わせ面で、型開き方向と平行に動きます。

金型が閉じているとき、可動側の金型から伸びているドアの形をした形状が、固定側の金型と擦り合わさり、ドアの形(赤い部分)を塞ぎます。ドアには敷居がありませんから、可動側の金型に引っかかることなく型が開くと同時に真っ直ぐ引き抜くことができるのです。

Using part orientation to achieve features
図4

このドア形状の開口部をスライドで形成する場合の抜き勾配は家の外側に向かって付けますが、2方向抜きの可動側の金型で形成する場合は、家の底の方向に抜き勾配を付けます。同様に、ドア形状の開口部を成形する固定側と可動側のテーパ合わせ面自身についても、最低3°の抜き勾配を設けるのが理想的です。その理由は2つあります。一つは、両方の金型がしっかりと閉じて密閉され、樹脂が充填されるようにするためです。もう一つは、金型が開く際に摩擦で金型が痛まないようにするためです。摩擦で金型が痛むと、溶融した樹脂の漏れにつながり、バリの発生の原因になる場合があります。これは見た目の問題であるばかりでなく、バリの場所によってはパーツの機能にも影響することがあります。

Hinge created with a sliding shutoff
図5

テーパ合わせ面による成形には、他にも有効な使い道があります。図5示すような留め具を例に取ります。この留め具の相手方をひっかけるフック部分は機能的に重要な部分ですが、普通にこのフックを床から突き出す形で成形しようとすると、フックのアゴの下の部分がアンダーカットになってしまいます。しかし、フックのアゴの面の真下の部分にあたる床面に穴を開けることで、下側の金型から凸形状を突き出すことができるようになり、このフックの下側の面を成形することができるようになります。この凸形状の側面がテーパ合わせ面になって、フックの側面部分を成形します。

Creating through-holes with sliding shutoffs
図6

テーパ合わせ面のもう一つの便利な使い方が、金型の型開き方向と直角に開けられた貫通穴の成形です。(図6 参照)

軸が通る穴の側面に互い違いに穴を開けることで、2方向抜きの金型で成形できるようになります。固定側と可動側の金型の合わせ面は、貫通穴に沿って複数の場所で存在しますが、その全てに抜き勾配を付ける必要があります。実例は弊社で設計・成形した「デザインキューブ」で確認できます。まだお持ちでない場合、下記URLからご請求ください。無料で進呈しております。
https://get.protolabs.co.jp/design-cube/ 

窓の枠部分の上面は可動側の金型で成形され、逆に下面は固定側の金型で成形されます。通常、2つの金型の合わせ面には、少なくとも3 度の抜き勾配が理想的ですが、ここで示しているような成形をするには、パーツの側面自体にも3 度以上の勾配が必要になります。(どの程度の角度を付加すれば良いのかは、パーツの形状に依存します。)なお、テーパ合わせ面で成形できるかどうかの判断基準として、以下のことを確認してみてください。(図8 参照)

1. テーパ合わせ面を上から見下ろした時、エッジ1と2の両方を同時に見ることができますか?2が1に隠れて見えない場合には、テーパ合わせ面による成形をすることはできません。

2. エッジ1と2の間の角度は3度よりも大きいですか?

置き駒

Proto Labs 射出成形プロセスでは、パーツの内側にあるアンダーカット形状の大きさによってはミニスライドで対応できる場合もありますが、できない場合は代わりに、置き駒を使うことで、成形が可能になります。置き駒とは、樹脂を充填する際に金型にセットする金型の部品(入れ子)ですが、離型の際にパーツと一緒に取り出され、その後に手作業で外されます。そうすることで、パーツにアンダーカットフィーチャを成形することができるのです。図9では2つの置き駒を使用している例を示しています。置き駒がパーツのアンダーカットの部分を埋め、一時的にパーツの一部のようになることで、離型の問題がなくなります。


Injection molding pickout to create internal undercut

図9


置き駒はスライドと同じような役割を果たしていますが、いくつか異なる面があります。スライドでは離型の際に、まずパーツからスライドが外され、その後パーツが離型します。置き駒の場合には、まずパーツが離型され、その後に置き駒がパーツから外されます。またスライドは自動で動きますが、置き駒は手作業で外し、その後、金型にセットしなければなりません。通常は効率を考えて、置き駒を複数用意して、パーツから置き駒を取り外す前に、次の置き駒を金型にセットできるようにします。

Injection molding bumpoff for slight undercut
図10
無理抜き

アンダーカットの領域が非常に小さく、また比較的柔らかい樹脂を使用する場合には、「無理抜き」という奥の手を使うことも考えられます。樹脂が柔らかく、アンダーカットの部分が充分に変形する場合には、パーツに損傷を与えることなく、そのまま引きぬくことも可能です。さらに、無理抜きをする部分に適切な傾斜があると、さらに、パーツを金型から引き抜きやすくなります。(図10 参照)

これらのテクニックの詳細については、protolabs.jp/resources/design-tipsをご覧ください。