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摩擦と摩耗、材料適合性、結合が成形品の設計に与える影響

樹脂部品の設計に材料科学の知識が欠かせないのはなぜか

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※本記事は米プロトラブズにて編集・作成されたものです。文中の一部サービスには日本では未展開のものも含まれています。

完璧にデザインされた射出成形品でも、不適切な材料を選択してしまった場合、失敗してしまうことがあります。選択できる熱可塑性樹脂やエラストマーは何百種類もあり、用途に合った材料を見つけるのも簡単ではありません。しかし、材料選定時には、コスト面以外にも機械的強度、耐薬品性、耐紫外線性、潤滑性、耐摩耗性など、多くの要素を慎重に検討する必要があります。

二色成形品を製作するとなると、状況はさらに困難になります。設計者は、射出成形のルールを遵守するだけでなく、選択した材料同士の化学的結合や機械的結合について十分に検討しなければなりません。
今回この記事では、成形品の設計時に知っておくべき3つの重要分野、「摩耗と摩擦(トライボロジー)」、「材料適合性」、「結合」について説明します。

 

摩擦と摩耗(トライボロジー)

トライボロジーとは、こすれ合う2つの表面の間で発生する摩擦、摩耗、潤滑に関する学問です。身近な例は、「靴と地面」や「自動車のタイヤと路面」の関係でしょう。物理学者Wolfgang Pauliの「神が物体を作り、悪魔が表面を作った」という言葉が有名なように、設計段階での予測が極めて難しい分野です。実際に試作品を製作しテストを繰り返すことがとても重要になります。

上図は互いに噛み合っている歯車の図です。このようなパーツの設計には、接触面の間に生じる摩擦や摩耗を考慮することが重要です。

上図は互いに噛み合っている歯車の図です。このようなパーツの設計には、接触面の間に生じる摩擦や摩耗を考慮することが重要です。

スナップフィット式のラッチの例では、高密度ポリエチレン(HDPE)などの耐摩耗性に優れた樹脂が適していますが、ポリアセタール(POM)のような比較的潤滑性のある材料を検討してもよいでしょう。どちらの材料にもそれぞれ長所・短所があるため、開発プロセスの早い段階で慎重に検討する必要があります。ただし、形状設計も摩擦や摩耗特性に大きく影響します。互いに触れ合う面は滑らかにしないと、繰り返し使用するうちに、表面の細かい凹凸が破損の原因なってしまう場合があります。

パーツを製造する方法も影響します。ラッチの例(スナップフィット式の容器は、嵌合面や連結面を持つ樹脂パーツの数が多くなりがちです)では、切削加工仕上げの場合と、3Dプリンティングで造形した場合とでは、表面の特性が異なってきます。射出成形を使用した場合も同様です(多くの場合、前述の2つよりも滑らかになります)。したがって、パーツ同士の接触が設計上の懸念事項となるような場合は、開発プロセスの早い段階から、このような特性を慎重に調べてテストする必要があります。

別の例を挙げましょう。金属インサート成形は、パーツ製造のオプションの1つです。銅製のブッシングを射出成形するファンの軸に挿入したり、ステンレス製のスリーブを樹脂プーリーに挿入したり、真鍮製のナットを筐体の締結部に挿入するなど、金属製の部品を樹脂成形品に挿入することが可能です。設計者が直面する最大の問題は、インサート部品の周囲に樹脂を流し込んだときに、優れた機械的結合が得られるかどうかでしょう。ところで、銅や真鍮は低コストで優れた軸受面を作るのに役立ちますが、ボールベアリングよりも摩耗しやすい傾向があります。製品の長期的要件を満たしているかどうかを十分にご検討ください。トライボロジーをよく理解することで、この問題や他の重要な課題を解決することができるでしょう。

材料適合性

樹脂製品の分野で起きた画期的なプロセスの一つが二色成形であることは疑いようがありません。二色成形が適しているのは、機器のグリップや携帯型電子機器のケースなど、本体を柔らかい材料で覆う必要がある場合や、意匠的に複数の色を使いたい場合です。二色成形プロセスにおいては、接触する2つの材料の間に適切な結合や化学的適合性が必要になります。

幸い、化学的適合性のある材料はいくつもあります。たとえば、弊社ではスチレン系エラストマーのAR791Bを在庫しています。これは、硬度の高い黒色の熱可塑性エラストマーであり、ポリプロピレンとの間に強い化学的結合が形成されるため、さまざまな自動車部品やコンシューマ製品での利用に適しています。ポリエステル系エラストマーES-A60NXは極性樹脂との融着性に優れた熱可塑性エラストマーで、ABSやポリカーボネートなどとよく結合します。AR-BOIN-65は、ABSやポリカーボネートの他、ナイロンとよく結合します。一方で、ナイロンは吸水性があるため、一次側成形材料として使用するのは比較的困難です。ただ、この材料は今もなお、さまざまな用途でよく使用されています。

結合

それ以外にも考慮すべき点があります。パーツの形状設計は、二色成形品の結合の強さに大きく影響することがあります。一次側成形品と二次側成形品の境目は、肉厚が徐々に薄くなるのを防ぐために、切り立った形にして二次側の肉厚を確保する必要があります。段差や溝で材料の流れを遮る箇所を作るとよいでしょう。二次側成形材料の肉厚が薄すぎる(1.5mm以下)と、材料の冷却速度が速すぎて、適切に結合しない可能性があります。肉厚に対して充填エリアが広すぎても、同様の問題が生じることがあります。

弊社在庫ラインナップにない材料の使用をご希望の場合は、材料メーカーに問い合わせて、成形性や用途に関する助言を求めることをお勧めします。特に添加剤にガラス繊維や鉱物などを含有している場合、これらの含有量が多いと結合に問題が発生することがあります。必ず試作品を製作し、十分にテストしてから量産を開始することをお勧めします。

左側の図では、一次側成形品を灰色で、二次側成形品を青色で示しています。このような設計の場合、図のようなめくれが生じる可能性があります。右側の図では、一次側成形品を灰色で、二次側成形品を黄色で示しています。二次側樹脂の流れを止め、良く結合させるため、段差を設けています。

左側の図では、一次側成形品を灰色で、二次側成形品を青色で示しています。このような設計の場合、図のようなめくれが生じる可能性があります。右側の図では、一次側成形品を灰色で、二次側成形品を黄色で示しています。二次側樹脂の流れを止め、良く結合させるため、段差を設けています。

設計ガイドラインの遵守

考えられる材料の組み合わせは、ほぼ無限にありますが、設計プロセスの初期段階で、材料の結合や化学的適合性に詳しい人物と相談すると良いでしょう。選択した材料の相性が良いかどうか、現在の設計でパーツまたは二色成形品が成形可能かどうか、トライボロジーの観点から見て材料が適切かどうか、つまり、製品の用途に必要な潤滑性、耐摩耗性、粘着性が十分にあるかどうか、確認しながら設計を進めることをお勧めします。

弊社の製造ガイドラインを守っていただくことは特に重要です。添加剤が多い樹脂を使用すれば、製品の要件を満たせるかもしれませんが、添加剤が増えれば増えるほど、成形性の「スイートスポット」は小さくなります。非常に複雑なパーツの場合は、なおさら厳しくなるでしょう。

とはいえ、ご心配はいりません。このような問題はいずれも対処が可能です。設計中にプラスアルファの注意を払い、場合によっては材料の選定を見直せば解決する問題です。まだ設計の初期段階であっても、疑問点がある場合は、弊社までお問い合わせください。知識豊富な弊社のエンジニア、自動見積りシステム、そして無償の製造性の解析(DFM)をご利用いただければ、化学的に扱いが難しい材料でも、使いこなすことができるでしょう。

本件に限らず、ご質問やご不明な点につきましては、弊社エンジニアまでお気軽にお問い合わせください。

電話:0120-2610-25

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ご参考:
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技術資料(ホワイトペーパー):
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図解 樹脂部品設計 Vol 1

樹脂射出成形を考慮した樹脂設計について図解しました。射出成形の仕組みから推奨肉厚、肉厚、表面仕上げ、公差、キャビ・コア、樹脂の選定など樹脂製品の設計にお役立てください。

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図解 樹脂部品設計 Vol 2

凹凸形状や穴形状、直線や曲線などさまざまなフィーチャを備えた樹脂パーツの設計に関するアドバイスをまとめました。 スライド、テーパ合わせ、置き駒、無理抜きなどに関する解説もお役立てください。