
成形パーツへの影響を最小限に!<エジェクタピン>の設計と配置ノウハウ
射出成形で、パーツを金型から押し出すエジェクタピンの設計で考慮すべき要素や設計のポイントを解説
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≪目次≫
1.エジェクタピンとは?
2.考慮すべき要素
3.押し出し位置が限られている場合の設計
エジェクタピンとは?
エジェクタピンは、「Ejector」+「Pin」 = 「押し出す」+「棒」 ですので、文字通り成形パーツを金型から排出するためのものです。成形の際、樹脂は数10~数100MPaもの圧力で金型に充填されますので、成形パーツは非常に強い力で金型に張り付いています。エジェクタピンはこれを押し出すのですから、パーツへの食い込みが発生し、ピンの跡が残ります。設計においてはこの考慮が不可欠です。
プロトラブズでは、エジェクタピンの跡が最小限に抑えられる金型設計を心がけています。通常は注文後にエジェクタピンの位置を提案いたしますので、その配置をお客様にご確認、ご承認いただいてから正式に製造スタートという流れになります。
エジェクタピンは金型の可動側(コア側)に配置されます。型が開いた後、ピンが突き出し、パーツを型から押し出します。その後、ピンは元の位置に戻り、型が閉じ、再び樹脂が充填されます。
考慮すべき要素
エジェクタピンの形状は様々ありますが、当社では円柱状の丸エジェクタピンを使用します。配置と径の選定にはパーツの形状が鍵を握ります(図1)。抜き勾配が小さい箇所やシボ加工面、深い溝やリブ形状などは、離型抵抗(金型にパーツが張り付く力)が大きくなります。そういった形状周辺はエジェクタピンがパーツに食い込み易いため、より太いピンが必要になります。
樹脂の特性も影響します。高粘度の樹脂(PC,PMMA,ガラス繊維含有樹脂など)であれば、離型抵抗も高くなりますので、より太いピンで力強く押し出す必要があります。柔らかい樹脂(PPやLDPEなど)では押し出しにより、パーツが変形する、ピンの跡が白化するリスクがあります。こういった場合はピンの数を増やすか、太いピンを使用して全体を押し出す必要があります。

(図1)ゲートとエジェクタピンの位置の表示例

図2-1

図2-2

図2-3
上から順に(図2-1)(図2-2)(図2-3)、パーツの曲面に使用する際の断面を表しています。ピンの長さにより、仕上りが異なります。
エジェクタピンの先端は平面ですので、成形品を効果的に押し出すためには、ピンを配置する面が、押し出し方向に対して垂直である必要があります。曲面にピンを配置する際には、後述するように押し出すための平らな座面が必要になりますので、ピンの跡が目立ってしまいます。また、ピンの先端は切断加工された面になりますので、シボ加工等が施された意匠面では、ピンの跡が更に際立ってしまいますので注意が必要です。
鉄金型の従来のプロセスでは金型の形状面とピンの先端形状が一致してない際、ピンの先端を削って形状面に合わせる手法が一般的です。形状の再現性は高いですが、コストも高くなります。当社でもご相談いただければ、曲面に合わせた先端のアングル加工が可能かどうか検討させていただきます。
当社の射出成形では特に指定がない限り、通常は先端が平らなピンを使用します。
押し出し位置が曲面であるなど、ピンの先端形状と一致してない場合は、ピンの高さを調整することを提案いたします。座面として駄肉をつけるか、ピンが形状に食い込む形をとるかになります。もちろんこのバランスを調整する事もできます。
エジェクタピンを最長にした場合(図2-1)は形状の最も深い位置に合わせピンが食い込む形になります。最長のピンでは成形パーツの肉厚が局所的に薄くなりますので、樹脂の充填が不十分でショートしたり、ピンで押し出した際にパーツの面に穴が開くことのないよう、肉厚を薄くしすぎないよう考慮する必要があります。最短の場合(図2-2)は、形状の最も浅い位置に合わせて座面として駄肉をつけます。パーツの肉厚が増す箇所にヒケが発生する可能性があり、注意が必要です。
通常はこれらの平均をとり提案いたします(図2-3)。このピンの先端の半分はパーツに食い込む形になり、残りの半分は駄肉をつけます。重要な部分のピンの位置や種類については、カスタマーサービスエンジニアにご相談ください。

トンネルゲートは、エジェクタピンの使用方法の中で特殊な例です(図3)。サイドゲート、ピンゲートが使用できない場合、エジェクタピンの穴を介して樹脂を充填させることもできます。成形品が冷却すると、押し出し時の際にエジェクタピンと金型のせん断により駄肉部(紫色の円柱)からランナーが切除されます。残った駄肉部は次の工程でカットされます。
エジェクタピンは非外観面に配置するのが一般的ですが、その配置が難しい場合があります。フック形状を例にして考えてみましょう(図4)。フックが伸びている側は金型との表面積が増え、金型に張り付く危険性が高まります。そのため、フック側を金型の可動側にする必要性も高くなります。固定側・可動側の判断は全体の離型抵抗の度合を考慮して決められますが、フックやその他の形状の存在により意匠面を金型可動側とするケースもあります。
またエジェクタピンはエアベントの機能も持っています。金型とエジェクタピンが摺動するための非常に狭い隙間は、気体が通る事ができますが、樹脂が入る事はできません。樹脂の充填時に発生するガスが成形不良を引き起こすことも多く、これを抜き易くするために使用されることもあります。
押し出し位置が限られている場合の設計
ここまでは、十分な押し出し位置が存在していることを前提として説明してきました。形状によってはそれが確保できない場合もあります。たとえば、格子のような形状は、リブの上面が金型の可動側に形成されることになります。
リブの肉厚がエジェクタピンよりも細い場合は、円柱形状を成形パーツに追加して押し出しの座面を追加する必要があります。
別の例として、LSR(液状シリコーンゴム)製のパーツが挙げられます。この場合、エジェクタピンを使用する代わりに、パーツを手作業で金型から取り出します。
当社からは成形性を考慮したエジェクタピンの配置を提案させていただきますが、製品設計の初期段階から、どのように金型から取り出すか、どちら側にエジェクタピンを配置するかを考慮していただくことで、設計の手戻りを少なくすることができます。
本件に限らず、ご質問やご不明な点につきまして、カスタマーサービスエンジニアまでお気軽にお問い合わせください。
電話: 0120-2610-25
Email: [email protected]

(図4)フック形状の例
ご参考:
= カスタマー サービスへのご連絡 =
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