射出成形 > Design Tips >
いま、皆さんが触れているマウスやキーボード、ディスプレイの枠、その表面はどうなっているでしょうか?ツルツル、スベスベ、それともザラザラ?パーツによって様々な表情をしているはずです。
仮に同じ材料でも、全く異なる印象や質感が生み出せる、表面仕上げはそんな手法の一つです。
しかし、デザイナーや設計者にとって選択肢が増える事は、悩みが増える事と同じかもしれません。そんな時、適切な表面仕上げを判断するためには、次の3つの要素に立ち返る事が重要になります。
- 製品開発のステージ・・・表面仕上げを考察すべき段階なのか
- 製品に求める機能・・・どんな表面仕上げが最適なのか
- 製作に使用する材料・・・その表面仕上げに適した材料なのか
樹脂パーツの表面仕上げ
射出成形で使用される熱可塑性樹脂は何百種類もあり、それらの中には柔軟性や強度に富むもの、そしてABS、PCやPMMAの様に外観を綺麗に仕上げることができるものもあります。プロトラブズではご要望に応じて、シボ加工から鏡面仕上げまで、7つのレベルで表面仕上げをおこなっています。
- PM-F0: 低コスト仕上げ(切削したままの面)
- PM-F1: 非外観面向け仕上げ(大部分のツールマークを除去)
- SPI-C1: 外観面向け標準仕上げ (表面粗さRa = 0.25 - 0.30)
- PM-T1: 細目(標準)のシボ加工
- PM-T2: 粗目のシボ加工
- SPI-B1: 外観面向け上級仕上げ(表面粗さRa = 0.13 - 0.18)
- SPI-A2: 鏡面仕上げ(表面粗さRa = 0.03 - 0.05)

PM-F0は、切削したままのツールマークがある状態で、外観を重視しない内装部品などに用いられます。 SPI-C1は、ツールマークを磨きで除去しますが、細かい磨きスジは残ります。外観部品として必要な仕上げレベルですが、まだ最上級レベルの仕上げではありません。
どの表面仕上げもパーツではなく金型に直接施されます。それが射出成形の過程でパーツの表面に転写されます。
一般的には、金型の表面仕上げによってパーツの表面状態も変わりますが、ガラス繊維や鉱物系フィラーが含有されている樹脂やエラストマー樹脂などの場合は、パーツの表面状態が期待したとおりにならないことがありますので注意が必要です。
特にガラス繊維が多く含有された樹脂の場合は、成形パーツの表面にガラス繊維が浮き出たように見える状態になり、パーツの表面は金型の表面仕上げとはかけ離れた見栄えになりやすくなります。この傾向は金型の表面仕上げが鏡面に近いほど顕著です。
また、ガラス繊維入りの樹脂は離型性が悪いため、金型が切削したままの面だと成形が困難になる場合があります。少なくともPM-F1以上の表面仕上げをご検討ください。
プロトラブズでは、標準在庫材料ごとに7種類の表面仕上げを施したサンプルプレートを取り揃えていますので、使用予定の材料に応じてお気軽にご相談ください。
プロトラブズのお見積りでは、お客様の設計に対して製造性の観点からフィードバックさせていただきます。たとえば、シボ加工に際して抜き勾配が不足している場合、その面を色分けしてご案内します。
シボ加工面に抜き勾配が必要な理由は、離型時にパーツに擦り傷がつかないようにするためです。
そのため、以下の抜き勾配が必要になります。
- PM-T1:最低3°
- PM-T2:最低5°
また、深さがある薄いリブ形状の面にシボ加工を行う場合には、対象の面にブラストを当てやすくするため、金型を入れ子分割する場合もあります。
プロトラブズの見積り画面上では金型の固定側、可動側それぞれ7種類の表面仕上げのうち、1種類の表面仕上げを選択するようになっていますが、部分的に異なる表面仕上げが必要とされる場合は、カスタム仕上げの設定が可能です。
なお、通常はパーツの外観面を金型固定側に、金型に貼り付きやすい面を金型可動側に設定します。エジェクタピンで押されるのも可動側になります。
また、3D CADでの設計に際しても対応していただきたい点がいくつかあります。
- 異なる仕上げの領域を色分けした図をJPEGやPDFでご用意ください。
- 仕上げの際のマスキングに明確な境界が必要ですので、段差をつけてください。(最低0.4mm)
- CADデータは、前述の仕上げに応じた抜き勾配をつけてアップロードください。
ゲート位置やエジェクター位置についても、特に外観部品の場合は考慮が必要な要素です。透明色や意匠面があるパーツなどは、ゲートカット跡やエジェクタピンの跡について制限が多くなりますので、カスタマーサービスエンジニアがご相談に対応します。通常は、金型からパーツを取り出すためにエジェクタピンが必要ですが、ピンの配置、サイズや数は、様々な要素を考慮して判断します。

SPI-A2は、レンズ等の機能や光沢面が必要な外装品用途向け、最上級仕上げレベルです。 PM-T2は、粗目のシボ加工です。標準のシボであるPM-T1よりも粗めの質感が必要な場合に用いられます。

お客様の仕様に応じて、シボ加工から鏡面仕上げまで、複数のレベルで表面仕上げを承っております。
LSRパーツの表面仕上げ
液状シリコーンゴム(LSR)は熱硬化性樹脂で、通常の射出成形とは成形の方法が異なり、2種類の液体を混ぜ合わせて射出成形を行います。
※このサービスは米国本社経由で製造、輸出対応しております。
LSRパーツの仕上げオプションは、熱可塑性樹脂の仕上げからいくつかの仕上げを除いたものになります。次の6種類に対応しています。
- PM-F0: 低コスト仕上げ(切削したままの面)
- PM-F1: 非外観面向け仕上げ(大部分のツールマークを除去)
- SPI-C1: 外観面向け標準仕上げ
- PM-T1: 細目(標準)のシボ加工
- PM-T2: 粗目のシボ加工
- SPI-A2: 鏡面仕上げ
熱可塑性樹脂と同様に部分仕上げ(カスタム仕上げ)も可能です。
熱可塑性樹脂と違い、LSRパーツは、エジェクタピンを使わず手で金型から引き剥がす方法を採用することが多く、その場合はエジェクター跡が残りません。また、流動性も良いため、ゲートも薄く設定でき、カット跡も比較的目立たなくすることができます。
無償で提供している「デザイン キューブ」にもプロトラブズで行っている射出成形の表面処理の例がありますので、合わせてご覧ください。デザインキューブは、こちらからお申込みいただけます。
本件に限らず、ご質問やご不明な点につきまして、カスタマーサービスエンジニアまでお気軽にお問い合わせください。
電話: 0120-2610-25
Email: [email protected]
ご参考:
= カスタマー サービスへのご連絡 =
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電 話: 0120-2610-25
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技術資料(ホワイトペーパー):
樹脂射出成形を考慮した樹脂設計について図解しました。射出成形の仕組みから推奨肉厚、肉厚、表面仕上げ、公差、キャビ・コア、樹脂の選定など樹脂製品の設計にお役立てください。
凹凸形状や穴形状、直線や曲線などさまざまなフィーチャを備えた樹脂パーツの設計に関するアドバイスをまとめました。 スライド、テーパ合わせ、置き駒、無理抜きなどに関する解説もお役立てください。