Design Tip

嵌合パーツの設計

通常、嵌合パーツと聞くと、異なる形状のパーツが右と左、前と後、上と下で組み合わせることを、イメージするのではないでしょうか。しかし、場合によっては、全く同じ形状であっても、嵌合させることのできるパーツを製作することができます。言い換えると、袋に同じパーツを入れておいて、ランダムに二つを取りだして嵌合させることができるということです。このように自己嵌合するパーツを設計すれば、一型の金型で成形できるため、製造コストを抑えることができ、在庫管理のコストも低減できます。

図1: 軸対称の自己嵌合設計を実施することで、一型の金型だけで成形できます

嵌合パーツが全く同一の形状で問題ない場合は、そのように設計する方が良いことは明白です。ただ難しいのは、本当に自己嵌合パーツとして設計することが妥当かを見極めることです。パーツの形状は非常に単純なものから、複雑なものまでさまざまです。ただ、共通する要素はあります。その一つが、常に軸対称ということです。(左右対称または鏡像体ではないということです。)Wikipediaでは、軸対称(Rotational Symmetry)について「ある角度を回転させた後に、同じと認められる対称性」と説明しています。四角い箱という非常に単純な形状であれば、左右対称であり、軸対称でもあります。しかし、図1のように箱の背面にヒンジの軸とフックを一つずつ作成し、前面にラッチの突起とタブ穴を一つずつ付加すると、軸対称ではありますが、もはや左右対称ではなくなります。どのようにヒンジ形状とラッチ形状を配置するかが、この形状を自己嵌合パーツにできるかのポイントになります。

自己嵌合するパーツとして設計をしていなかった場合、箱の片側にヒンジフックとラッチタブを二つずつ、もう片方には、ラッチの突起とタブ穴も二つずつ配置することが考えられます。しかし、ヒンジとラッチを一組ずつ配置する設計にすることで、二つ目の金型が必要なくなります。図1の設計では、形状の上下を重ねた時、それぞれのヒンジのフック(左上)がもう半分のヒンジの軸(右上)とかみ合います。また、それぞれにあるラッチのタブ穴(左手前)は、嵌合相手であるラッチの突起(右手前)と嵌合します。結果として、一つのパーツを上下を気にせずに利用できます。

図2: 二つのパーツを結合すると、チューブ形状ができます

二つ目の例は、図 �に示すエルボーです。曲げの入ったチューブは、成形時のエジェクション(ピンによる成形品の押し出し)を容易にするために、半分ずつを二つの金型で成形し、後で結合することになります。二つのパーツを結合させたい場合は、それぞれの形状に同数のオス側、メス側の嵌合形状を配置するように設計することで対応できます。図1で示した箱のように、片方の形状を回転させた時、オスの側の形状と、もう一方のメスの側の形状が嵌合するわけです。

図3: このカギ型の形状は、低侵襲外科的処置に使用する医療機器を構成しているパーツの片側です

図3はより複雑な例です。形状の右側にある突起形状は、左側の穴形状に嵌合するようになっています。二つのパーツを嵌合させることで、一つの部品を完成させることができます。

このパーツは、半分に分割して製作するのではなく、一体として設計・製作することも考えられますが、肉厚が厚すぎる部分ができてしまうなど、射出成形を成功させるための基本的なルールに反することになってしまいます。

肉厚を薄くすることで、成形上の問題を回避することも可能ですが、反面、取り扱い性に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。二つの形状として設計すれば、最適な肉厚を維持でき、取り扱い性に影響する外形形状も維持しながら成形もスムーズに行えます。そして、中が空洞であるため、組み立てられたパーツは軽量で、使用する材料のコストも低減できます。

自己嵌合パーツを設計する機会はそれほど多くはないかもしれません。形状の上下、前後には通常、それぞれに異なる機能が求められ、役割や目的があり、それを考慮した設計が行われるからです。ただし、二つまたはそれ以上のパーツで構成されたアセンブリ製品が対称形である場合、今回ご紹介したような自己嵌合を実現する設計が最適と考えられます。その際に、最も大きな課題となるのが、嵌合面と結合部の設計です。

ご紹介した3つのパーツでは、嵌合面が同一平面上にありますが、それが必須というわけではありません。もし、突き出た形状がある場合には、軸対象に回転させた形状(引っ込んだ形状)が必要になります。より確実な嵌合性は、開発の企画段階からはじまり、実際のパーツでテストするという流れで実現することが可能となります。

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