Design Tip

ホット・チップがゲートの問題を解決します

金型の中に溶けた樹脂を簡単に瞬間移動させられるとしたら、こんなに楽なことはありません。もちろん、それは“射出”成形ではありません。また、瞬間移動技術の開発者がプラスチックの試作部品を作ってもらいたいとプロトラブズへ来るはずですが、そのようなことは今のところ聞いていませんので、瞬間移動成形は、確実にまだまだ先の話でしょう。

溶けた樹脂を成形機のシリンダーとスクリューを通して金型へ注入する手段としてゲートなるのもがあります。残念ながら、ゲートは金型の表面に割って入り、パーツの表面に傷をつけます。これは避けることはできません。そのパーツの働きやゲートの位置によっては問題になる場合もあります。例えば、パーツやその表面が外から見えないところにあれば、ゲートの痕跡は問題とはならないでしょう。しかし、ゲートが見える位置にあれば、パーツを設計する上で、美観に対する影響を考慮しなければならないでしょう。

Example of a tab gate
図1:タブ・ゲート

Tタブ・ゲートが最も一般的ですが、必ずしも綺麗ではありません。
(図1.を参照)

タブ・ゲートは金型のキャビティー内に樹脂を簡単に注入する方法の1つですが、欠点もいくつかあります。

  • まず、ランナーを通して樹脂を金型に注入します。従って、その時に樹脂が多少なりとも冷却されることによって粘度が上がるため、金型のキャビティーに対して、比較的大きな開口が必要になります。その結果、その大きなタブを切り取らなければならないために、表面処理が損なわれる場合があります。
  • 二番目に、タブ・ゲートにつながるランナーが金型の限られた表面積の一部を占有します。金型に、パーツに必要な大きさのスペースが取れなくなるようなことが起きれば問題です。
  • 三番目に、樹脂がゲートに到達する途中で、多少なりとも冷やされるので、均一性や同心度、ニットラインの形成、肉厚が薄くなるなど、樹脂を金型に注入する際の潜在的な課題に配慮する必要が出てきます。
  • 最後に、タブ・ゲートは、金型のパーティングライン上に設けなければならないと言うことです。

このような問題の解決策として、“ホット・チップ”ゲートが考えられます。ホット・チップ・ゲートは金型の固定側に小さな円形のゲート開口を設けて、そこからプラスチックをキャビティーに注入します �ホット・チップ・ゲートという名前の由来は、金型の後ろにサーモスタットで制御されるヒーターがついていて、樹脂を十分な熱さに保ちながら(又、十分な流動性を確保しつつ)、小さなゲートの穴を通過させることから来ています。

ホット・チップは、成形機のシリンダーとスクリューが直接伸びたものと考えることができます。樹脂は射出するポイントで熱せられているので、開口部を小さくできます。ランナーを必要としないので、許容される金型の面積を最大限に使用してパーツを作ることができます。樹脂がより熱せられているということは、肉厚の薄い、遠くの部分まで到達しやすいことになります。

通常、ホット・チップ・ゲートはパーツの中央の上部(タブ・ゲートのパーティング・ラインと反対側)に設けて、丸または円錐形をしており、流動性が均一になるため、同心度も改善されます。ホット・チップ・ゲートでは、パーツの表面に小さな突起が残ります。パーツの表面にくぼみをつけることによって、突起をパーツ面より下に下げることができます。事前にトリミングする必要も(ほとんど)なく、シールのようなものを貼ることもできます。

Two versions hot tip dimples
図2:球面状に凹んだホット・チップのくぼみ 図3:円筒状に凹んだホット・チップのくぼみ

ホット・チップのくぼみの大きさは、おおよそ直径が3~9.5mm、深さが0.25~0.73mmです。形は、球面状または円筒状のへこみになります(図2、3を参照)。常に均一な肉厚を保持するためには、パーツの反対側に材料を追加して、流動性を保つことが考えられます。

気を付けなければならないのが、パーツの“固定側”は、通常は“おもて面”になるということです。従って、ホット・チップを使用する場合、ゲートの痕跡(“突起”)がパーツのおもてから見える可能性があります。このように、ホット・チップのくぼみは、突起を隠すために通常使われる方法で、美観が重要なパーツでは、シールを貼る場所などを良く考える必要があります。また、ホット・チップ・ゲートは、アセタールやガラス入り樹脂では使用できないことも憶えておいてください。さらに、樹脂がホット・チップの中で長い時間“調理”される傾向があるので、小ボリュームのパーツでは、特性の低下など、問題が起こる場合もあります。

金型の固定側の裏側にマシン加工をして細工を施すなど、ホット・チップ・ゲートをインストールするためのコストアップも考慮しておく必要があります。そして、ホット・チップ・ゲートの金型を修正するのも、非常に高くつきます。例として、金型の固定側を完全に作り直さない限り、簡単にホット・チップを移動させる方法はありません。

プラスチックのパーツは何でもそうですが、設計と樹脂材料の両方が、成形部品をうまく作る上において欠かせない要素です。ゲートの種類やその位置を注意して選択し、また使おうとする樹脂が適合することを確認するなど、うまく設計されたパーツによって、最良の結果を手に入れることになります。