4大要素をチェック!外観向上のための成形パーツ設計ポイント

※本記事は米プロトラブズにて編集・作成されたものです。文中の一部サービスには日本では未展開のものも含まれています。

外観の見栄えひとつで設計した製品の成否が決まることもあります。樹脂パーツは見栄えの他に、その表面仕上げによって、手触りが違ってきます。製品を握ったときや触ったときに伝わる感触が品質の判断材料になることもあります。

製品の設計においては、強度、耐久性、機能、コストなどの他の特性に対して外観の重要度を見極めなければなりません。内蔵部品では、外観よりも使用上の特性を重視するべきです。外付部品の場合は、まず外観を考えるべきでしょう。

パーツの表面処理によって、外観だけでなく製品の機能もアップする可能性があります。たとえば、製品の色は、外観を綺麗に見せるだけでなく安全目的で選ぶことがあるでしょう。ハンドルのシボ加工は、見栄えだけでなく、ハンドルの感触や握り具合を良くするために施すことがあります。

パーツの外観の仕上がりに大きな影響を与える主な要素には、パーツの形状、材料の選択、金型設計、射出工程での成形条件の4つがあります。この4つの要素が互いに連動しており、強度、耐久性などの特性とも結びついています。

パーツ設計上の課題

外観上の目標を達成する最初のステップは、強度、機能、コストなどの他の特性と比べた場合の外観の重要性を相対的に判断することです。外観が一番重要ですか?それとも2番目ですか?一般的に、外観の品質を上げれば、金型コストの増大、場合によっては、パーツコストの増加につながります。外観が最終製品に影響しないのなら、外観に過剰なコストをかけるのは避けましょう。

次に、製造工法を理解します。プロトラブズでは、アルミ合金製の金型を製作しており、マシニングセンターによって金型加工を行います。パーツ形状によっては加工制限がある場合がありますので、お見積りの製造性の解析結果など、カスタマーサービスエンジニアから内容のご説明をさせていただきます。

3番目は、実際にパーツを成形するまでは発見できない外観上の問題もあることを認識することです。これは、本格的生産を始める前に、実際の製造工法で試作を行う理由の1つです。

4番目は、外観上の問題は、複数の特性が影響して生じることを理解することです。次のページで3つの主要な特性を採り上げますが、他にも特性があることを覚えておいてください。

ポイント1:パーツの形状

パーツの形状は、外観のさまざまな要素に影響を及ぼす可能性があります。パーツの形状はさまざまであるため、この対策をすれば全て必ず良好な外観に仕上がるとは言い切れない部分があります。射出成形の基本的ルールに沿った最適な方法でパーツを設計することで、通常は、パーツの見栄えを改善することができます。多くの場合、このルールから外れると外観上の問題を引き起こします。これらのルールは、樹脂の溶融、流動、金型への充填、固化の工程において、物理的な法則に基づいています。そのため、パーツの形状がその外観にも影響を及ぼすことになります。

ポイント2:材料の選定

選択した樹脂は、外観に大きく影響します。一番わかりやすい影響は、色ですが、それ以外にも、材料の選定に影響する要素が数多くあります。選定する材料には、ベース樹脂、着色材、フィラー(添加剤)などの検討要素があり、希望するパーツの機能や外観などによって制約を受けます。

樹脂の中で、最も外観不良を招きにくい材料は、ABS、ポリカーボネート(PC)、PC/ABSなどです。外観にやや影響を及ぼす可能性があるのが、アセタール(例:Delrin®)やPBTなどです。ガラス繊維を含有した樹脂や熱可塑性スチレン系エラストマー(、例:エラストマーAR 741B)などは、パーツの表面状態が期待したとおりにならないことがあります。パーツの機能はもちろん、外観のどの要素(ヒケ、均一の質感、バリ)を重要視するかによって、最適な樹脂にたどり着く可能性は高まります。樹脂メーカーにご相談されるか、樹脂ガイドをご利用ください。これらのアドバイスから樹脂の特性を理解することで、パーツに必要な機能を熟知しているパーツ設計者は、より適切な樹脂の選択を行うことが可能になります。

パーツの機能面から樹脂の選択に制約がある場合、外観は妥協しなければならないかもしれません。たとえば、ガラス繊維を含有した樹脂を使用する必要がある場合、光沢のある表面を避ける設計上の配慮が求められます。フィラーのある樹脂では、鏡面のような仕上がりにはなりません。金型を磨くためにかけた費用が無駄になってしまいます。弊社在庫材料エラストマーAR 741B などのTPEを使用する場合、シボ加工などの表面仕上げにコストをかけても、期待する結果は得られません。これは、一般的に、金型に施した微細な表面処理がTPEに転写されないためです。

プロトラブズでは、金型の表面仕上げを標準化しています。(SPI-A2、SPI-B1、SPI-C1など磨きによる表面仕上げから、ビーズブラストによる表面仕上げまでご用意しております。) SPI-A2(鏡面)仕上げを施した金型で製作したパーツの外観は、樹脂が異なると大きく違ってきます。新しい樹脂での試作を検討されているのなら、プロトラブズの標準在庫材の中から同種のサンプルプレートをお送りすることが可能です。サンプルプレートには弊社の表面仕上げ7種類全てが施されており、対象のパーツにどのような表面仕上げが期待できるか確認することができます。

ポイント3:金型の設計(ゲート位置の決定、ガス抜き、流動)

数多くの外観上の問題が金型の設計に起因して発生しています。パーティングライン3やエジェクタピン跡など一部の外観上の問題は、何らかの方法でパーツを離型しなければならないという必要性から生じています。

金型に起因する外観上の問題のほとんどは、樹脂の流動に関係があります。ゲートから樹脂が入り、パーツの末端まで流れるまでのく(および金型内で閉じ込められたガスを金型のベントから外へ逃がす)過程が、最終パーツの外観に大きな影響を与えます。

金型設計者がProtoFlow® 流動解析も駆使して、パーツの外観や寸法が最適に成形できるよう、プロトラブズではゲート、エジェクタピンの位置をご提案しますが、パーツの外観や機能面から希望する位置の情報をいただければ、より目的に沿ったお見積りの提示が可能となります。

ポイント4:射出工程での成形条件

一般に、成形条件は、射出成形技術者に任せるのが最も望ましいです。射出成形機には、多くの成形パラメータがあり、成形技術者はそれぞれのパーツの形状や材料、金型仕様に応じて適切な成形条件を作り、成形を行います。又、成形品の品質要素においてパーツ設計者と成形技術者で優先順位が異なることがあります。(例えば、パーツ設計者はバリを最小限に抑えたいと考えているのに、成形技術者はヒケを最小限に抑えるよう充填圧を増してややバリを大きく出してしまう、あるいはその逆の場合もあるかもしれません。)。成形パーツに外観上の問題があるなら、カスタマーサービスエンジニアと品質の優先順位を話し合ってみるとよいでしょう。

互いに連動する問題点

外観上の問題の多くは、2つ以上の特性間で一方を追求すると他方が犠牲になるような関係性から生じています。表1では、一般的な外観上の問題、その原因、解決策を示しています。時として、1つの問題を解決することで別の問題を悪化させてしまうこともあります。

表1:一般的な外観上の問題、その原因、考えられる解決策 

外観上の問題 一般的な原因 考えられる解決策
ゲートカット跡 樹脂は製品上のある位置から注入しなければなりません。その位置には、ゲートカット跡が残ります。 ゲートの種類と位置を変更します。ゲートの配置と種類を最適ではないものに変更すると、別の問題を引き起こす可能性がありますのでご注意ください。
ヒケ すべての樹脂は、冷却とともに収縮します。形状の厚肉部分は薄い部分より収縮しやすく、表面に目立つ窪み5ができます。 1. 厚肉部分を肉抜きします。
2. 肉厚を均一にします。
3. 形状を変更できない場合、樹脂の種類を変更することでヒケを改善できることがあります。
エジェクタピン跡6 エジェクタピンは、必ずパーツの表面に跡をつけてしまいます。金型設計者は、通常、外観を重視しないパーツ表面にエジェクタピンを配置します。 1. パーツの外観を重視しない部分にエジェクタピンを配置します(パーツ設計全体の制約を考えると常に可能なわけではありません)。
2. 外観部品の場合(例:プラスチックレンズ)パーツがスムーズに離型するような形状を設計の段階から組み込んで(追加して)おくことが重要になります。
3. エジェクタピンではなくプレート状の突出し(ストリッパープレート)にてパーツを取り出すこともできます。エジェクタピンと同じく金型分割線は残ります。
離型による擦り傷 通常、抜き勾配が足りないために生じます。パーツを金型から取り出す際に、金型の壁に沿って引き抜くので、パーツの表面を傷つけてしまいます。 1. 抜き勾配を設けます。
2. 影響を受ける部分の金型の表面仕上げを変更して、擦り傷を軽減します。
ウェルドライン7 1. パーツに穴形状がある場合、樹脂が二手に分かれ合流するため、ウェルドラインが形成されてしまいます。
2. 多点ゲートにおいても樹脂の合流部によりウェルドラインが発生します。
3. パーツの肉厚が不均一な場合、樹脂の流れが不均等になり、、ウェルドラインを引き起こす可能性があります。
1. 可能であれば、穴形状を取り除きます。
2. ゲート位置を変更します。
3. ゲート数をできるだけ減らします。
4. パーツの肉厚をできるだけ均一にする。
バリ8 1. 肉薄部分、長くて薄いパーツ、厚肉部分にヒケがある場合など、樹脂の充填や外観を改善するために充填圧を高めに設定することによりバリが発生しやすくなります。
2. 一部の材料は、バリが発生しやすいです。
3.パーティングラインが複雑になると、金型の合わせが複雑になりバリが発生しやすくなります。
1. 充填圧を上げなければならない、根本の問題を修正します。
2. バリが発生しにくい樹脂に変更します。
3. 単純なパーティングラインで対応できるパーツ形状に設計にします。
ヤケ 金型内に閉じ込められたガスが高圧力で圧縮され、急速に高温になります。その熱で樹脂が焼けてしまい、見栄えに影響します。とりわけナイロンなどの特定の樹脂は、焼けやすいです。 1. 必要に応じて、金型設計者がベントを設置しガスが金型の外へ逃げるよう対策を行います。ス逃げ対策としてピンを追加する場合もあります。
2. 成形条件を調整する。

シボ加工部分のウェルドライン

図1:シボ加工部分のウェルドライン。中央の縦のぼんやりした明るめの部分は、周りと見た目に違うシボの状態となっています。

例:ウェルドライン

外観の問題解決にあたって複数の要素が影響する例を挙げてみましょう。

図1の写真を見てください。コンシューマーデバイスのカバー部分を示しています。カバーの外側は、中程度のビーズブラスト仕上げにしています。金型設計者は、2つのサイドゲート(カバーの裏側の外観を重視しない、見えない面に配置し、ゲートガット跡が隠れる状態)の使用を選択しました。理由は、パーツ形状が非常に大きく、多少厚肉部分がある薄いパーツなので、充填が困難と考えられるためでした。

 写真では、シボ加工部分にウェルドライン(中央の縦の線)が発生しています。

ピンゲートカット跡

図2:ピンゲートカット跡。これは、フランクリン・ルーズベルトの目の先にあるパーツ上端に残る小さな突起形状の跡です。通常、成形後、できるだけ平坦になるように突起のカット処理を行いますが、どうしてもその痕は残ります。

ピンゲートに変えた後

図3:ピンゲートに変えた後の、図1と同じ部分。ゲートは、この写真中央の上端にあります。

この問題を軽減できる可能性はいくつかあります。サイドゲートを2点から1点へ変更し、ウェルドラインが発生しないようにする方法があります。しかし、ゲートを1点にすると流動距離が長くなりゲートの反対側まで充填しない(又は著しいバリが発生する)懸念があります。1点ゲートを実現させるためにはパーツの肉厚を増す必要がありますが、パーツの重量やコストも増え、さらに再設計の時間や嵌合パーツによる問題発生の可能性もあります。ゲートをパーツの中央に配置すれば流動距離が短くなり未充填やバリのリスクは下がりますがこれでは外観を重視する部分にゲートカット跡を残すことになります。

 この例では、お客様は、カスタマーサービスエンジニアの協力を得て、パーツの中央にピンゲートを配置することにしました。ピンゲートでは、金型の固定側から直接、キャビティに樹脂を注入します。パーツの表面には小さな跡が残ります(図2のゲートカット跡の拡大写真をご覧ください)。さらに、ピンゲートの周囲には小さなフローマークが残ります(図2(10セント硬貨の直径の2倍の部分で、かろうじてわかります)と図3)。ゲートを移動することは、ピンゲートカット跡が生じる(これが生じるため、ピンゲートは最初の選択肢ではありませんでした)ことと、ウェルドラインをなくすことの妥協点でした。

図4から図8では、まったく同じ金型(材料のサンプルプレート)で異なる材料を使用しており、表面の差異をわかりやすくするため、光を当てた状態で撮影しています。各プレートの表面仕上げは、SPI-A2(鏡面仕上げ)、SPI-B1(600番のグリットペーパ処理)、SPI-C1(600番のグリッドストーン処理)、PM-F0(切削したままの面)、PM-F1(大部分のツールマークを除去する)、PM-T1(微細粒のビーズブラストによる処理)、PM-T2(中程度のビーズブラストによる処理)などです。

ABS(黒)

図4:ABS(黒)。この樹脂は、金型の表面仕上げを忠実に再現しています。

ナイロン66(黒)

図6:ナイロン66(黒)。ABSのように、フィラーのないナイロンは、見栄えの良いパーツになります。

TPE(熱可塑性エラストマー、黒。デュロメーター硬さ55)

図8:TPE(熱可塑性エラストマー、黒。デュロメーター硬さ55)。鏡面仕上げを施した面(SPI-A2)と切削したままの面(PM-F0)ではマット調でほとんど違いが見られないことに注目してください。

ABS(ライトグレー)

図5:ABS(ライトグレー)。明るめの色の樹脂を使用することにより、多少のシボのムラやヒケなどを目立たなくすることができます。

ナイロン66(黒。ガラス繊維33%含有)

図7:ナイロン66(黒。ガラス繊維33%含有)。図9のフィラーのないナイロン66と比較してください。シボ加工(PM-T1とPM-T2)、SPI-C1やSPI-B1の磨き仕上げ面には、ガラス繊維含有の影響で表面にもやもやがあらわれます。SPI-A2においては違いが顕著にあらわれます。

例:パーツ形状の変更

外観上の問題を解決する方法としてパーツ形状の変更が最も有効であることがあります。

 

POMのパーツ

図9:POMのパーツ。左から(A)ゲートフローマークが出ないように条件調整。(B)オレンジの皮のようにゴツゴツした表面にならないよう条件調整。(C)厚肉部分を取り除くように再設計。

図9をご覧ください。このパーツはPOM製ですが、外観の仕上がりにはあまり向かない材料になります。

左から(A)(B)(C)の順で並んでいます。(A)と(B)は同一の形状でかなり厚肉の部分があります。(A)では、ゲートフローマークを最小限に抑えるために、射出速度を遅くしました。それによってオレンジの皮のようにゴツゴツした感じの表面になりました。(B)では、その状態を無くすために、射出速度を速くしました。それによって、ゲートフローマークが残り、厚肉部分のヒケが悪化しています。ゲートとランナーは、説明目的で表示しています。材料の特性を損なわずに、最高の外観を得るために成形条件調整を実施しましたが、このパーツの外観にはどうしても目立つヒケとゲートフローマークが残ってしまいます。

このパーツの外観を良くするには、樹脂設計の基本的ルールに従ってパーツ形状を再設計します。この例では、POMの推奨肉厚内で均一な肉厚のパーツになるよう再設計しました。完成したパーツは、図9(C)です。写真での比較は難しいかもしれませんが、前述のヒケとフローマークは解消しています。

まとめ

外観は、樹脂パーツ設計において対処しなければならない数多くの問題の1つです。しかし、ことのほか複雑な問題です。色、形状、表面仕上げが関わっているほか、設計、材料、成形条件の影響を受けます。外観は主観的な部分もあるため、問題が更に複雑化したり、予想外の仕上がりになる場合もあります。

プロトラブズの射出成形サービスでは、アップロードいただいた3D CADデータをもとにお見積りと製造性の解析レポートをご回答します。それらの情報を活用いただくとともに、より外観の向上にむけたご提案が可能な場合もありますのでカスタマーサービスエンジニアまでご相談ください。

 

射出成形パーツの設計ガイドライン
(protolabs.co.jp/services/injection-molding/plastic-injection-molding/design-guidelines)

 

樹脂ガイドは以下からご覧ください。各種汎用エンジニアリンググレードの樹脂の機械特性を比較したものです。
(protolabs.co.jp/media/883594/injection-molding-resin-guide-jp.pdf)

 

金型の合わせ目。成形パーツにはこの合わせ目に沿って細い線ができます。

4例として、ProtoFlowをご覧ください。

ヒケ。樹脂は金型内で冷却、固化する際、収縮するため肉厚が厚い部分においてはパーツの表面に窪みのような跡(ヒケ)が発生することがあります。
ヒケを避ける方法については、ガイドラインをご覧ください。(protolabs.co.jp/resources/white-papers/designing-for-moldability-fundamental-elements/#wall-thickness)

 

エジェクタピン。射出金型の可動側に取り付ける丸ピンで、成形品を金型から押し出すために使用し、パーツには丸い跡が残ります。

ウェルドライン。樹脂の流れが合流する部分に発生する線状の模様。見栄えに影響するだけでなく、樹脂がしっかり融合していない場合もありパーツ強度の低下につながる可能性があります。

バリ。樹脂の流れが合流する部分に発生する線状の模様。見栄えに影響するだけでなく、樹脂がしっかり融合していない場合もありパーツ強度の低下につながる可能性があります。金型の合わせ目から僅かに漏れ出た薄い膜状の樹脂。

^

検索されたキーワード ""