Design Tip

抜き勾配が必要な理由

図1:抜き勾配がない場合(左図)、パーツ全体が型の垂直面に接触しながら取り出されますが、勾配がある場合(右図)には、抵抗なく取り出すことができます。

樹脂製品の設計や製造に関わっていなくても、実は抜き勾配は身近な存在なのです。例えば、棒にささったアイスキャンディーです。アイスキャンディーの滑らかな表面は、ジュースを注ぐ容器に抜き勾配が設けられているから実現できています。これは樹脂パーツでも同じで、金型に勾配(テーパ)を設けることで離型がスムーズにでき、外観の整った成形を実現しています。勾配のない容器でアイスキャンディーを作ったとしても味が劣るわけではありませんが、見た目もきれいであれば、美味しさも倍増します。

アイスキャンディーの型の場合、液体は凍る際に体積が増えるという性質があるので、型の開口部分から棒を突き出させることで、増えてしまう氷を棒の方へ逃がすことで対処しています。型が完全に閉じていれば、型に収まりきらない氷があふれ出て、まるで樹脂を金型に注入しすぎたときに発生するバリができてしまうことになります。

樹脂パーツの場合は、アイスキャンディーとは逆で、樹脂は冷却に伴って収縮し、パーツの表面は、わずかながらも固定側の型から離れ、可動側の型から突き出たコアにはしっかり張り付いてしまいます。したがって、スムーズに離型させるためにはパーツの形状に抜き勾配をつけることが重要になってきます。

図2: 紫色の形状が射出成形するパーツです。抜き勾配のあるパーツ(右)のほうが、パーツの離型がスムーズになります。

成形作業にあたっては、冷却にともなってパーツが収縮しても、寸法公差を維持できるよう、成形条件を調整しています。このことは、金型の隅々でパーツが冷却、固化している間も樹脂を注入し続けることで実現しています。言い換えると、金型に95%程度樹脂が充填された時点であれば、抜き勾配がなくても離型させることができます。しかしこれでは、成形されたパーツにはヒケやボイドができてしまったり、シボが適切に反映されないなどの可能性があります。金型の体積を満杯にする残りの5%を注入することで、問題の発生を回避することができるわけです。適切な角度の抜き勾配をつけることで、樹脂がぎりぎりまで充填された状態でもパーツの離型がスムーズにでき、不完全な充填の状態で発生し得る外観の問題を防ぐことができます。

設計の段階で抜き勾配を設ける理由は二つあります。一つ目は金型部品同士がこすれ合う擦り合わせ構造がある場合の金型の損傷を防ぐことです。もう一つは高さのあるリブ形状を形成する際に、金型に深い溝形状を加工できるようにするためです。

金型のテーパ合わせ面に抜き勾配をつける理由は、抜き勾配がないと、金型の摩耗が非常に早く進んでしまい、摩耗によって生じた隙間が原因でバリが発生し易くなるためです。金型に勾配があれば、金型の開閉に伴う摩耗を最小限に抑えることができます。

高さのある、細長い形状を成形するためには、長いエンド ミルで金型を切削します。その場合、刃先はマシニング センターの固定位置から遠くなるため、回転する刃先の位置がブレる可能性が高くなります。そうなると、刃先でビビリが生じて、金型面はえぐられるように削られ、最終的にはエンド ミルが折れてしまうことにもつながります。幅のあるリブであれば、直径が大きめのエンド ミルを使えるので、横からの負荷があっても安定した切削が可能になります。薄いリブでも抜き勾配が設けられていれば、テーパ エンド ミルを使うことができ、同じサイズの刃先であっても、まっすぐなエンドミルよりも安定した加工ができます。

些細と思える形状部分でも、ぜひ抜き勾配を設けることを考慮してください。文字やロゴのように厚みのないフィーチャであっても、実は驚くほどの力で樹脂が金型に張り付き、離型不良の原因になりえます。このことで、めくれあがったフィーチャが形成されてしまい、文字の見栄えや外観にも問題が出てくる可能性があります。ちょっとした抜き勾配を設けていただくことが、スムーズに離型できる金型を製作するうえでたいへん重要な役割を果たします。

抜き勾配を設けていただいていない場合や、角度が不足している場合には、ProtoQuote対話式見積りの画面でそのことを図解させていただいています。抜き勾配を設けるタイミングは設計段階の終盤よりも初期段階のほうが設計を効率的に進めるうえで有効といえます。

抜き勾配の一般的なガイドラインは以下のとおりです:

  • 垂直面な面には最低でも 0.5度
  • ほとんどの場合、2度あると最適です
  • 擦り合わせ面の場合は3度以上
  • 軽めのシボ加工(PM-T1)の場合は 3度
  • 強めのシボ加工(PM-T2)の場合には、最低 5度以上

抜き勾配に関する詳細は、樹脂部品設計ガイドでもご紹介しております。また、ご不明な点などにつきまして、気軽にお問い合わせください。

ご参考:
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 Email: customerservice@protolabs.co.jp

技術資料(ホワイトペーパー):
plastic injection-molded part

図解 樹脂部品設計 Vol 1

樹脂射出成形を考慮した樹脂設計について図解しました。射出成形の仕組みから推奨肉厚、肉厚、表面仕上げ、公差、キャビ・コア、樹脂の選定など樹脂製品の設計にお役立てください。

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図解 樹脂部品設計 Vol 2

凹凸形状や穴形状、直線や曲線などさまざまなフィーチャを備えた樹脂パーツの設計に関するアドバイスをまとめました。 スライド、テーパ合わせ、置き駒、無理抜きなどに関する解説もお役立てください。

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