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インダストリー4.0環境における製品開発の戦略

~デジタル・マニュファクチャリングの経済性を効率、収益、利益へと結び付け、プロダクト4.0を実現するには~

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※当該資料は米国市場を基に書き起こされているため、組織、法令名称等で必ずしも日本市場においては該当しない用語が用いられている場合がありますのでご了承ください。

製造業界に、次に大きな変化と進歩をもたらすものはインダストリー4.0です。機械化(水力/蒸気の利用)に始まり、組立ラインと製造ラインの発明、デジタル化(アナログからデジタル、そしてロボットへの移行)に続くこの第4の革命は、世界的なメガトレンドであり、データ、自動化、テクノロジーにより、近代における製造業の能力と経済性が再構成されつつあります。McKinseyによると、35%のグローバル製造企業は、インダストリー4.0により今後5年間で20%以上収益が向上すると見込んでいるといいます。同様に、約半数の企業が20%以上のコスト削減と効率向上を達成できると予想しています。

保守、修理、モノのインターネット(IoT)、センサーアレイを中心とした用途から生まれた、デジタル・マニュファクチャリング企業を支えるテクノロジーやアプリケーションは、市場投入までの時間、労働力と資産の活用、品質管理、在庫管理といったさまざまな要因に対して恩恵をもたらすほど発展しました。マクロからミクロに視点を移すと、デジタル・マニュファクチャリングはプロダクト4.0が生み出す新しい経済の基盤を整えていると言えるでしょう。プロダクト4.0とは、デジタル・マニュファクチャリングが生み出すメリットを収益と利益に変える製品のことをいいます。プロダクト4.0によって、新しい収益源が生まれるとともに、機敏で即応性に優れ、コスト効率が高く開発期間が短いサービスを提供できるようになるでしょう。プロダクトマネジメントに留まらず、プロダクトリーダーとしてプロダクト4.0によって顧客の獲得や経済的な成果をどれだけ促進できるかということを評価する時期に来ています。

製造業における破壊的変革

製品戦略を策定する際には、次の4つの要素を考慮することが重要です。

  1. コスト
  2. 収益源(特に新しい収益源)
  3. 品質
  4. セキュリティ

デジタル・マニュファクチャリングの概念は数多く存在し、どの概念も、さまざまなテクノロジー、機能、ソフトウェア、ハードウェアに支えられています。私たちが最もよく知っている例を挙げるとしたら、それは当社独自のデジタル・マニュファクチャリング・システムでしょう。プロトラブズはデジタル・マニュファクチャリング企業であり、20年近く前にインダストリー4.0の概念的枠組みに基づいて創業されました。私たちは自動化ソフトウェアを開発し、ICTによる製造設備と統合することで、試作品や小ロット生産の製造速度を飛躍的に向上させました。当社のデジタル・マニュファクチャリング・システム自体、非常に興味深い話ではあるのですが、この記事ではデジタル・マニュファクチャリングがもたらすメリットを、実行可能なプロダクト4.0計画に変える方法についてご説明します。

 

インダストリー4.0とプロダクト4.0を「つなぐ」デジタル・マニュファクチャリング

デジタルマニュファクチュアリング

ではなぜ私たちはプロダクト4.0戦略を提案しているのでしょうか。大企業から小企業まで世界中の企業に当社デジタル・マニュファクチャリング・サービスを提供する中でわかったことは、激しい製品競争といくつかのメガトレンドによって、環境・状況に敏速に反応できる製品に対するニーズが高まりつつあるということです。そのトレンドを以下に示します。

モノのインターネット(IoT
ホームセキュリティから航空機エンジンまで、大量の新製品やアプリケーションが登場しています。そしてほぼ全ての業界で見受けられます。

マスカスタマイゼーション
企業はビジネス獲得のために、カタログ製品のカスタマイズや多岐にわたる付属品、小規模のカスタム製品ラインを提供しています。顧客に多くの選択肢を提供し、満足度を高めることで、ビジネスを獲得しているのです。

製品サイクルの短縮
製品のライフサイクルは、エレクトロニクス、顧客の嗜好、競争といった要因により、短くなり続けています。

そして従来の製品開発基準とサプライチェーン管理基準が、必ずしも上記のような需要の変化に効果的に対応できているとは限りません。さまざまな業界のプロダクトリーダー達はどのようにして適応しようとしているのか、また、彼らの適応の取り組みが貴社および貴社のお客様のビジネス目標をいかに支えうるのか、時間と労力をかけて検討する価値はあるでしょう。

プロダクト4.0の概要を把握するために、当社サービスを提供している顧客企業様の視点から眺めてみたいと思います。当社がこれまで扱ってきた400万に及ぶCADモデルは、すべて何らかのストーリーを語ってくれています。これらのストーリーから、プロダクト4.0戦略へのシフトを進める際に参考となる、共通の条件、メリット、トレンドが見えてきます。ここでは、革新的なスタートアップ企業からテクノロジー関連の最大手企業まで、世界中のプロダクト4.0のパイオニア企業らから得られたデータを検討し、あらゆるプロダクトリーダーが考慮すべき事柄を明確にしてみましょう。

 

「従来の製造モデル」対「デジタル・マニュファクチャリング」

それではまず、従来の製造モデルの特色や成果を、インダストリー4.0固有のデジタル・マニュファクチャリングの特性と比較してみましょう。

デジタル・マニュファクチャリングの機能は、スピード、信頼性、そして想定可能な結果をもたらします。これらはいずれも、そのままプロダクト4.0の特長になります。しかし、皆さんがお知りになりたいと思っている点はより具体的なメリットでしょう。そこでここからは、インダストリー4.0のテクノロジーを利用した射出成形プロセスの経済的側面と意義を中心に検討していきます。また、その他のデジタル・マニュファクチャリング・プロセスでも利用できるメリットも併せて見ていきましょう。

プロトラブズのデジタルマニュファクチュアリング

プロダクト4.0戦略を検討される際に重要なポイント

プロトラブズのエコシステムは、約50万人のユーザーにご利用頂いています。今回はその実績を前提として、前述のプロダクト4.0戦略の考慮事項について詳しく検討していきます。

1. コスト

当社では、効率的なオンラインビジネスモデルにより、コストを抑えています。保険業界から小売業界まで、コスト水準のデジタルディスラプション(破壊的変革)はほぼすべての業界で見受けられますが、製造業界も例外ではありません。デジタル化によって、加工速度が向上し、高額の人件費が不要になり、製造規模が拡大しています。では、製品ラインの収益に対するメリットを証明する例として、どのようなものが考えられるでしょうか?

カスタムの手持ち式バーコードリーダーを例に考えてみましょう。この機器には5つの射出成形部品が含まれているとします。射出成形は比較的抵コストでパーツを作れますが、その代わりに金型のコストが高額になり、新製品の採算を取るのが難しくなります。その難しさは、販売する部品の数量と販売までにかかる時間によって決まります。さて、その機器のプロダクトマネージャーが、製品発売後の市場のフィードバックを受けて、新しい要件を満たすために、設計を若干変更しようとしたとします。従来の製造法では、金型への初期投資が障害となり、手持ち式製品の改良版を開発できない可能性があります。そこで問題となるのが、どれだけの確信を持って、「市場の需要を考えると、金型への投資と大量生産を行う価値がある」と言えるかということです。以下に一般的な内訳を示します。

金型のコストが4分の1になれば、当然、回収期間も4分の1になります。ただし、どれだけの販売数量で射出成形が現実的な製造法になるかということや、対象となる市場の規模が果たして見合うのかといった点にも注意する必要があります。

2. 収益源

工場生産の速度と柔軟性が向上した場合、収益と利益に関する制約や前提はどのように変わるでしょうか。業界のプロダクトリーダーたちは、次の3つの方法で現状に挑戦しています。 

A.製品開発の頻度、速度、リスク低減、範囲

アジャイルソフトウェア開発は、短期間で集中的に開発し、利用可能な製品のユニットを提供する手法です。そのスローガンは「早期から何度も価値を提供する」ことです。大手オンライン小売業者やエンタープライズソフトウェア企業では、開発を迅速かつ頻繁に繰り返してテストと学習を行い、顧客に価値を提供しています。これまで、物理的に実態のある製品を販売する企業は、この分野でなかなか太刀打ちができませんでした。スケジュールやハードウェアにより、反復、イノベーションの速度、同時に進められる計画の数が制限されていたためです。

では試作が従来より10倍速くなり、コストが10分の1に抑えられたらどうでしょうか。これは3Dプリンティングがもたらす主な利点の1つです。同業界はここ数年で数十億ドル規模にまで拡大しました。テストし、学習し、改良し、反復するという原則を、ハードウェア製品にも適用できるようになったのです。そしてプロトラブズでは、切削加工、射出成形、板金加工といったプロセスでも同じ原則が適用されています。一度「普通だ」とみなされると、以前のような高い評価は得られなくなります。「新しいカスタムパーツを1日のリードタイムで製造できる」ことも、インダストリー4.0が現れるまでは、前代未聞のことでした。

このように、スピーディーで柔軟な製品開発は、インダストリー4.0の副産物であると言えます。医療機器、電子機器、自動車、航空機部品など、あらゆる主要業界の企業が、アジャイルの概念を自社製品に適用しています。競争は年々激化しており、挑戦する以外に進む道はありません。会社の競争力と俊敏性の維持に役立つ、一般的な方法を以下に紹介します。

  • 最大10回まで製品開発を繰り返し、顧客のフィードバックを得てそれに対応する
  • ボトルネックを解消し、製品開発プロジェクトの数や頻度を増やす
  • 開発の反復によりコストを削減し製造性を向上させる
  • 高価な生産用金型を作る前に、製品の形状、嵌め合い、機能を改良する

リスク軽減にフォーカスする開発計画もあれば、顧客満足度を重視する計画もあります。ほとんどの場合、両方とも考慮に入れます。重要なのは、デジタル・マニュファクチャリングによって、時間とコストの制約が取り払われ、製品の性能と競争力が高まるということです。イノベーターたちは各プログラムを推進し続け、プロダクトリーダーたちはあらゆるプログラムの効率を高め続けています。

B. 小ロット生産とマスカスタマイゼーションによる増収の機会

プロトラブズのデジタル・マニュファクチャリングは、小ロット生産に最適化されています。通常、小ロット生産とは、成形品の生涯生産数量が数百個から数十万個の生産のことを指します。ただし、従来と異なっている点は、25個から対応していることです。これは大量生産業者では普通は対応することができない数量です。

ここで、1.で取り上げたコストモデルを、小ロット生産が持つ俊敏性と合わせて考えてみましょう。デジタル対応の射出成形モデルの経済的価値が見えてくるでしょう。収益を高めるためには、このようなコスト削減効果と小ロット生産が持つ俊敏性をどのように利用すればよいでしょうか?

さまざまな製品段階での収益源の創出

ここでもやはり、一般的なシナリオをいくつか参照してみましょう。

新製品の導入

  • 初期の市場の需要が不明な場合。多くの企業は、金型のコストを抑え、納期を短くして、新製品を市場でテストしています。プロダクト4.0戦略では、ハードウェア製品をソフトウェア製品のように扱うことができます。「テストして学習する」ことがこのアプローチの本質です。
  • 先行量産。数十万または数百万個販売される量産品を生産する場合でも、デジタル・マニュファクチャリングによる小ロット生産を利用して、試作から大量生産へと移行することができます。さらに、次のような用途もあります。
    • 急なパーツ注文や発売前の需要増加に対応する
    • 市場投入までの期間を短縮して競争力を高める
    • 技術的な承認、サプライヤーの遅れ、労働争議など、何らかの事情による生産用金型の製作の予想外の遅れに対処する


需要が少ない特殊な製品

  • 従来型の製造業者指定の最小発注数量が原因で生じる、数千規模のパーツ在庫の発生を回避する
  • 予想外の顧客の需要に対応する
  • 需要の変動にかかわらず、総コスト(金型+パーツ)を最小限に抑える

マスカスタマイゼーション

  • 得意客のためにカタログ製品を変更する
  • 特殊な用途やニッチ市場向けに独自の製品SKUを開発する
  • 付属品や付加装置を多様化し、平均販売価格を高める
  • 異なる嗜好、ニーズ、規制要件を持つ外国の顧客のために製品をローカライズする

製造部品のライフサイクルの短縮

  • 顧客のトレンドや変化に敏感に対応する
  • 新しい技術の進歩についていく

顧客要求に迅速に対応し、「できます」と答える回数を増やす、それこそが多くの企業が日々真摯に取り組まれていることです。そして小ロット生産がそれらを可能にします。顧客の懸念を解消し、カタログ商品の設計を調整する必要があるか、新規市場でベータテストを実施したいか、製品を顧客にすぐに届けたいか、規制の変更に対応する必要があるか、危機的状況に対処する必要があるか、製品の評判をすぐに市場に広めたいか等々、プロダクト4.0ならすべてが可能です。シリコンバレーからデトロイトまで、抜け目のないビジネスリーダーは、プロダクト4.0の概念を利用して行動を起こし、大きな経済的利益を獲得しています。

C. 生産終了時の顧客満足度とコスト

製品の生産終了を喜ぶプロダクトマネージャーやプロダクションマネージャーはあまり多くありません。生産終了は、顧客にとっては残念なことであり、企業にとっては多額のコストがかかることです。また、在庫を減らしたくても、製品の保証やサポートを続ける必要があります。

プロダクト4.0は、スピード、即応性、緊急対応力を特長としており、生産終了と保証義務に対処するためのジャストインタイム(JIT)製造を導入する企業の増加にも幅広く対応しています。「マスカスタマイゼーションが普及するにつれて需要も増加する」という仮説を立てることもできるでしょう。

3. デジタル品質管理のメリット

品質は、製造業者にとって、市場への「入場料」のようなものです。適切に構成されたデジタルファクトリーを利用することで、パーツの設計や生産から、最品検査や発送まで、品質を向上させることができます。

デジタルファクトリーは、詳細なバージョン管理が可能なだけでなく、顧客の要求どおりの成果を確実に提供します。当社のように、3D CADモデルで作業を行い、設定可能なオンライン見積りを利用することで、よく見られるような有効期限切れの見積書に頼る必要がなくなります。2Dモデリングとハードコピーによる見積書は現在でも確かに用いられてはいますが、今後の方向性については議論がある点かと思われます。プロダクト4.0の時代において、2Dは潮流に必ずしも沿うものではなく、決して効率的なプロトコルとは言えないでしょう。オールデジタルの設計環境と従来の業界標準とを比較してみれば、製造プロセスの品質と精度が向上していることがわかります。たとえば、追跡可能なバージョン履歴を備えたデジタルスレッドを利用することで、製品開発者と製造業者が同じバージョンのパーツ設計を使用して作業を進めることができます。

その他のメリット:

  • CADファイルのPMI(製品製造情報)データを活用し、2D図面と転記ミスを排除
  • 自動生成した加工プログラムによる再現性
  • ベンダーの事業所内およびベンダー全体で製造設備を統一

デジタル品質管理システムの成熟度はさまざまです。デジタル・マニュファクチャリング・サプライヤーを選定する際には、製造機能が自社の要件に合っているかを確認する必要があります。

 

4. デジタルサプライチェーン全体のセキュリティ

CADモデルをオンラインでアップロードする場合、サプライヤーに安心してCADモデルとIPアドレスを預けられるでしょうか。このようなセキュリティ上の懸念は正当なものであり、真剣に考えるべきものです。プロダクト4.0の実現を目指すならば、必ずデジタル・マニュファクチャリングの領域に足を踏み入れることになります。ただし、そのときは企業資産であるIPを保護するために、さまざまなポリシーやテクノロジーを導入することになるでしょう。オンライン支払いやオンラインストアでの買い物を始めた頃のことを覚えていらっしゃいますか。誰もがそのような時期を過ごされ、経験されてきたことと思います。

ここで重要なのは、サプライヤーをきちんと調べることです。考慮すべき事柄を以下にいくつか示します。

  • 強固かつ容易に締結できる秘密保持契約
  • 顧客の立場を考えたプライバシーポリシー
  • PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)やNIST(米国国立標準技術研究所)セキュリティフレームワークなどのセキュリティ基準の遵守
  • ITAR(International Traffic in Arms Regulations)および輸出関連法規の遵守(関連する製品がある場合)
  • 安全なWebサイト
  • 関係する法令

見逃されがちですが、ここにインダストリー4.0の大きなメリットがあります。ここ20年間の低価格の(ただし低速な)成形ソリューションは、中国などの地域の安い労働力を使うことで成り立っていました。外国のサプライヤーと連携する場合、異なる文化規範や、IPの保護や環境など各種の問題に関するポリシーを守る必要があります。自国とは異なる慣習、常識のために想定外の行き違い等も否定できません。インダストリリー4.0はもともと自国内製造を前提としています。自分の地域、タイムゾーン、言語でビジネスを行うことをお勧めします。

まとめ

現在、そして次世代のプロダクトリーダーは、デジタル・マニュファクチャリングで可能になる様々な機能の評価計画を用意し、その位置付けを検討する時期に直面しています。その進め方を考えられる際に、当資料が参考になりましたら幸いです。特に、ビジネスマネージャーやプロダクトラインマネージャーである皆さんには、現在存在する制約に挑戦し、プロダクト4.0のメリットを活用することで、製品開発サイクル、収益とコスト、ご自身の会社、そして何よりも顧客に提供する価値をどのように向上できるかということを検討していただくためのきっかけ、一助になればと願ってやみません。