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柔軟性に優れ、高温でも物性を維持!LSR(液状シリコーンゴム)活用のメリット

※本記事は米プロトラブズにて編集・作成されたものです。
文中の一部サービスには日本では未展開のものも含まれています。
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通常、LSR(液状シリコーンゴム)を最も簡単に見つけることができるのは、自動車用品販売店でしょう。チューブ入りの形で売られており、作動中のエンジンの高熱で硬化する、柔軟なガスケットとして使用されています。極端な状況では、LSRは、最大316°Cの継続温度、371°Cの断続温度に耐えることができます。

一般的な熱可塑性樹脂に詳しい方には、このようなゴム材料が高温用途で使用できることについて、直観ではわかりづらいかもしれませんが、LSRは実際、熱に耐えるように作られているのです。

加熱すれば軟化する熱可塑性樹脂と違って、LSRのような熱硬化性樹脂は、高温で加工され、さまざまな状況で、熱可塑性樹脂なら溶けてしまう温度でも難なく耐えることができます。このような特性から、高温車載用途や工業用途、高温で殺菌する医療用製品に幅広く使用されています。

Flexible liquid silicone rubber part
図1:LSRは、強靭で柔軟な材料であり、物性を十分に維持します。

通常、LSRは高温のほか、摂氏マイナス2桁以下に及ぶ低温でも柔軟性を維持しながら耐えることができます。柔軟性の正確な度合いは、化合物によって異なりますが、極めて高い可能性があります。たとえば、LR3003/50の破断伸び率は480%です。LSR化合物にはさまざまなデュロメーター(硬さ)があり、用途の要件に合わせて選択することができます。

LSRは、耐熱性、耐薬品性、電気抵抗に優れていますが、ガソリンや石油系溶剤(塗料用シンナー)などの特定の溶剤で侵されることがあります。そのため、高温車載用途では使用できても、燃料経路では使用できません。また、圧縮永久ひずみ(力を加えて、取り除いた後も残存する変形)が低いので、エラストマーとして理想的です。LSRをSantopreneのような熱可塑性エラストマーと比べると、LSRは「免疫抑制作用をもったエラストマー」と言われています。

さらにLSRは、皮膚に直接触れる、医療用途として承認されています。LSRの安定性によって、皮膚感染を防ぎ、あるいは逆に皮膚に触れることで感染するのを防ぐことができます。LSRの一部のグレードは、適切な製造環境が整えば、インプラント用途での使用が可能になります。その疎水性(撥水性)によって、LSRは水処理用途に理想的なものになっています。さらに難燃性であり、燃焼時に毒素やハロゲンガスを放出しないので、さまざまな安全用途に適切です。詳細については、材料仕様をご確認になるか、金型製作者にご相談ください。

熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂

熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABSなど)と、LSRなどの熱硬化性樹脂を成形する方法では、一部で顕著な違いがあります。熱可塑性樹脂は室温では固体ですが、加熱すれば軟化し、冷やせば固体に戻ります。このような特性によって、再利用が可能です。一方、熱硬化性樹脂の最初の状態は、通常、コロイド状の液体です。白金触媒を用いて加熱すると固体になり、再び液体の状態に戻ることはありません。この特性は再利用には不向きですが、高温では圧倒的な性能を期待できます。

熱可塑税樹脂、熱硬化性樹脂
図2:強度、安定性、耐熱性などの熱硬化性樹脂の特性の多くは、架橋結合の構造によって決定されています。

このような熱に対する反応の違いによって、成形プロセスも次のように異なります。熱可塑性樹脂は、ペレットを加熱して溶かした状態で金型に射出し、成形品は冷却して離型します。これに対して、熱硬化性樹脂は、事前に冷却してから金型に流し込んで加熱すると、硬化します。

ずり流動化

硬化前のLSRは、ずり減粘流体(擬塑性流体)です。ずり減粘とは、ずり応力(金型への射出にかかる圧力のようなもの)を受けることで、流体粘度が低下する特性で、金型内におけるLSRの挙動に大きな影響を及ぼします。擬塑性材料の挙動について、LSRのようにずり減粘流体であるケチャップと、ずり減粘流体ではない蜂蜜を比較して考えてみます。

ケチャップの瓶を傾けるとどうなるか想像してください。つづいて、蜂蜜がいっぱい詰まったあのクマのかたちをしたプラスチックの容器を傾ける様子を思い浮かべてみてください。室温の場合、蜂蜜は、たとえゆっくりでも流れ出ます。ケチャップは、おそらく流れないでしょう。それは、ケチャップの粘度の方が高いからです。最終的にはケチャップの瓶を振ってみたり、テーブルナイフで引っかけて取り出すことになります。今度は、スクイーズボトルに入ったケッチャプを思い浮かべます。そのボトルとプラスチックのハニーディスペンサーを握って、比較します。蜂蜜は出にくいですが、ケチャップは簡単に流れ出てきます。一瞬でハンバーガーやフライドポテトにかけることができます。このような粘度の変化は、ずり減粘の一例です。同じことがLSRを金型に射出する際にも起こります。ずり減粘は、LSR成形にプラスとマイナスの両方の影響を及ぼします。実は、ずり減粘は、薄肉部分の樹脂の流れを良くします。熱可塑性樹脂の成形では、パーツ全体の均一な肉厚が求められますが、LSRではその必要がありません。その一方で、LSRは金型内をとてもスムーズに流れるので(金型の合わせ目の隙間にも流れ込むため)、バリが発生しやすくなります。不要な痕が残り、二次加工で取り除く必要があります(図3を参照)。バリは、金型の設計を工夫することで防いだり、少なくとも最小限に抑えることができますが、あくまで、パーツ設計上の問題です。

バリとバリ取り後
図3:LSRはバリが発生しやすく、場合によっては、0.005mmほどの隙間にも流れ込みます。

LSR成形パーツは、離型後も冷却され収縮し続けます。これは、通常金型が高温であることによるものです。このため、LSRは、熱可塑性樹脂のようにコアだけに張り付くことはありません。代わりに、表面積が大きい方の金型に張り付く傾向があります。LSRは柔軟性があるので、金型に残らず、成形パーツの一部が張り付いたぶら下がりの状態になる可能性があります。これを防ぐにはパーツの再設計が一部必要になるかもしれません。

LSR製パーツの設計上の注意点

パーツ設計者から見れば、LSRの設計ガイドラインは、熱可塑性樹脂のガイドラインと似ています。一部でLSRの設計条件がゆるい箇所がありますが、その理由は、柔軟性を備えたLSRは熱可塑性樹脂より自由度が高い材料であるためといえます。金型が開くときの方向と平行になる面は、通常、金型の加工ができるように、ある程度抜き勾配が必要になります。これはパーツを取り出す際に金型の壁でパーツ表面に摺りキズがつかないようにするためだけではありません、パーツを金型から取り出しやすくするためでもあります。目安としては、金型25mmの深さに対して1度が一般的です。

ずり減粘特性を有するLSRは、金型内をスムーズに流れるので、熱可塑性樹脂の場合なら充填不足が発生する可能性がある薄肉部分も流れます。ずり減粘特性により、肉厚が不均一であっても問題ありません。また、熱硬化性樹脂は、熱で固化して、冷却する前にほとんど硬化するので、ヒケは発生しづらいものです。つまり、一般的な熱可塑性樹脂材料の場合より、パーツを厚めにすることが可能なのが特徴です(但し、必要以上に厚肉にすると、成形サイクルに影響しますので注意が必要です)。それよりも、熱可塑性樹脂と熱硬化性LSRの金型設計の最大の違いは、アンダーカットの扱いにあります。

Standard and optical liquid silicone rubber parts
図4:LSRは光学グレード同様、複数の色を使用できます。

熱可塑性樹脂では通常、アンダーカットの形状をスライドを使用して、金型が開く前にスライドを引き抜いてパーツを取り出すか、置き駒のような複雑な技法でアンダーカットを設けることができます。一方、LSRは非常に柔軟なので、多くの場合、成形品は、金型から「引きはがすようにしてパーツを取り出す」ことができます。これは熱可塑性樹脂ではできないアンダーカットを形成できるのが特徴です。

プロトラブズのLSR成形

熱可塑性樹脂の場合と同じように、プロトラブズの見積もりと製造解析サービスProtoQuoteでは、LSR製パーツの製造に対応しています。そのプロセスは、熱可塑性樹脂の場合と同じです。

  • 設計データ(3D CADデータ)をアップロードする
  • 材料と数量を指定する
  • 見積と製造解析レポートを平均3時間で回答

LSR製パーツの現在の製造納期は標準で20営業日です。パーツによっては追加料金で納期を早めることができます。従来の工法より格段に短期での製造が可能です。当社の製法では3D CADモデルを直接、加工プログラムに取り込んで金型を加工します。熱可塑性樹脂と同様に、プロトラブズではICT駆使した独自のマシニングセンターで、金型の加工工程を管理しています。ICTシステムで生成した加工プログラムに従って、マシニングセンターで金型を加工して、LSR専用成形機にセットします。

この工法では、25~5,000個以上のLSR製パーツをコスト効率良く製造することができ、従来と比較して短期かつ安価にパーツの製作が可能です。非常に少量の生産や試作用の数量でも、プロトラブズでは、本格的な製造工程を経て製作します。

従来は、試作用に実際のパーツを得るために、製造用の金型ができるまで待たなければならず、それは、数週間から数か月かかりました。もし開発の最終段階で問題が発覚した場合は、開発プロセスにおいて、深刻な後退を招く可能性があり、プロトラブズではアルミ金型での短納期サービスを実現しており、開発の早期段階で実際の材料と射出成形にて効率の良い試作を行うことが可能であり、時間とコストの削減につながります。

プロトラブズでは、対応可能な範囲を増やす取り組みを継続しておりますが、現在の設計ガイドラインは以下になります。

  • パーツの最大サイズは、304mm x 203mm x 50mmです。
  • パーツの最大体積は、217,000 mm3です。
  • 製品全体の形状、肉厚にもよりますが、部分的に最小0.25mmまで薄い肉厚が成形できる場合があります。
  • 内側のフィレットの半径は、肉厚と等しくすることが望ましいです。
  • ヒケは、ほとんど発生しませんが、無駄な厚肉部分をなくすことで材料コストを削減できます。
  • パーティングラインをできる限りシンプルで短くすることでバリを軽減ことができます。
  • LSR製パーツの離型は、通常エジェクタピンを使用せず、手作業で行います。金型の設計にあたっては、パーツ全体が金型固定側(キャビ側)、可動側(コア側)のどちらかの金型に保持される状態を想定して設計します。さらには、金型が開いた時のパーツのフィーチャの位置が金型のパーティングライン面よりも上にあると離型がスムーズになります。
  • 比較的シンプルなアンダーカット形状であれば、スライドなどの金型機構を用いることなく、無理抜きのような形でオペレーターが簡単にパーツを取り出すことができます。
  • LSR製パーツは、一般に熱可塑性樹脂の抜き勾配と同様の抜き勾配が必要です。目安としては、25mmの深さに対して1度です。浅めのパーツであれば、抜き勾配がなくても問題ないこともあります。LSRの性質上、熱可塑性樹脂のパーツよりも抜き勾配は少なくて済む傾向があります。
  • LSRは流れ易いので、比較的小さいゲートから注入する必要があります。注入開始は厚肉部分あるいは断面が最も広い部分から行うようにするのが理想的ですが、絶対条件ではありません。LSRエッジゲート位置には、ゲートカット跡が残るので、形状あるいは外観を重視しない箇所にするか、カット跡が出っ張らないよう逃がし形状(凹形状)を設けます。
  • 場合によってはプロトラブズにて、ベント、オーバーフローを設けることがあります。これはパーツの品質を高めるための方策ですが、成形品の表面に小さな痕が残ることがあります。プロトラブズはゲートの位置(必要に応じてエジェタピンの位置)をご提案し、承認していただいてから金型の製作を開始します。
  • LSR金型の表面仕上げとしては、以下から選択いただくことができます。
    • PM-F0
    • PM-F1
    • SPI-C1
    • SPI-A2
    • PM-T1
    • PM-T2

成形性を良く考慮して設計された部品で予想される公差は±(0.08 mm0.01 mm / mm)です。LSRはバリが発生し易い材料なため、その許容範囲などについてお知らせください。

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