
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは?それぞれの特徴と違いを解説
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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

≪目次≫
(1)特徴
(2)成形方法
(3)該当する樹脂
(1)特徴
(2)成形方法
(3)該当する樹脂
樹脂(プラスチック)は熱に対する特性の違いから、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分類されます。この違いによって、対象となる製品や加工時に用いる成形方法が異なります。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂それぞれについて、代表的な樹脂(プラスチック)や成形方法、特徴について解説します。
1.熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とでは、材料が加熱された際の特性に大きな違いがあります。熱可塑性樹脂は加熱することで柔らかくなり、流動的になります。冷却すると再度固化するため、加工時には加熱・冷却をすることで任意の形状に成形することが可能です。
一方で、熱硬化性樹脂は加熱することで硬化する特性を持っています。熱可塑性樹脂のように流動的にはならないため、加工時には金属などの材料と似たような加工法が用いられるか、あらかじめ流動する状態で型に充填し、加熱することで固化させます。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂について、それぞれの材料が持つ特徴や具体的な成形方法、該当する樹脂(プラスチック)材料などについて、詳しく解説します。
はじめに、熱可塑性樹脂の特徴や成形方法、具体的な材料を紹介します。
(1)特徴
熱可塑性樹脂は、それぞれの材料が持つ融点まで加熱することで柔らかくなる特性を持った材料です。柔らかくなった材料は、再度冷却することで冷却した際の形状で固化するため、この特性を用いて様々な製品に採用されています。
成形をする際に化学変化を起こす必要がないため成形しやすく、大量生産に用いられることが多くあります。また、リサイクルがしやすい点も熱可塑性樹脂の持つ特徴の一つです。
また、機械的特性を強化した熱可塑性樹脂のことをエンジニアリングプラスチック(エンプラ)と呼びます。エンプラには様々な種類があり、それぞれの持つ特徴に合わせて特に工業製品に用いられています。

(2)成形方法
熱可塑性樹脂は加熱すると溶融し、冷却すると固化する特性を生かした成形法が選択されます。もっとも一般的な加工法は射出成形で、それ以外には形状に合わせて様々な加工法が選択されます。
例えば、フィルムなどを成形する際には押出成形、ペットボトルなどはブロー成形、卵のパックや自動車の内装など特殊な形状の場合には、真空成形や圧空成形が用いられます。
いずれも金型を使用し、大量生産が可能な成形方法です。
(3)該当する樹脂(プラスチック)
熱可塑性樹脂は汎用樹脂、汎用エンプラ、スーパーエンプラに分類できます。
汎用樹脂 |
ABS樹脂(ABS) ポリエチレン(PE) ポリスチレン(PS) ポリプロピレン(PP) 塩化ビニル樹脂(PVC) ポリエチレンテレフタレート(PET) |
汎用エンプラ |
ポリカーボネート(PC) ポリブチレンテレフタレート(PBT) ポリアセタール(POM) |
スーパーエンプラ |
ポリイミド(PI) ポリフェニレンスルフィド(PPS) 液晶ポリマー(LCP) |
3.熱硬化性樹脂
次に、熱硬化性樹脂の特徴や成形方法、具体的な材料名を紹介します。
(1)特徴
熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂とは異なり、加熱することで硬化する材料です。加熱すると結びつきの強い架橋反応を起こし、その結びつきの強化により硬化します。この特性により、熱可塑性樹脂と比較して、機械的強度と耐熱性に優れています。
しかし、熱可塑性樹脂よりも硬いため耐衝撃性は劣る材料が多く、用途に応じて使い分けられています。
(2)成形方法
熱硬化性樹脂も熱可塑性樹脂と同様に金型を用いて成形されるのが一般的です。流動性がある状態で圧力を加えることで、金型の中に充填します。その後、加熱をすることで成形します。
具体的な成形法としては、射出成形に加え、樹脂(プラスチック)材料をあらかじめ軟化させた状態で金型に移動させ硬化させるトランスファ成形、適当な充填剤と配合し金型で加圧することで成形する圧縮成形、樹脂(プラスチック)原料を含ませた紙や布を重ねて加熱成形する積層成形などがあります。
(3)該当する樹脂(プラスチック)
以下のような材料が熱硬化性樹脂に分類されます。
・フェノール樹脂(PF)
・メラミン樹脂(MF)
・エポキシ樹脂(FP)
・ポリウレタン樹脂(PUR)
・シリコン樹脂(SI)
・アルキド樹脂(ALK)
4.結晶性プラスチックと非結晶性プラスチック
熱可塑性樹脂は、その特徴により結晶性プラスチックと非結晶性プラスチックに分類することが可能です。溶融された樹脂(プラスチック)の温度がある一定の温度まで低下した際の、分子の状態によって分類されます。
冷却され、固化した材料の分子が規則的に並んだ特徴を持つものが結晶性プラスチック、不規則に絡み合ったものが非結晶性プラスチックです。非結晶性プラスチックの分子状態は、ランダム構造と呼ばれます。
この構造の違いにより、一般的には以下のような特徴の違いが生じます。これは代表的な傾向であり、個々の材料の種類や添加剤などにより異なります。
特徴 |
結晶性プラスチック |
非結晶性プラスチック |
透明性 |
低い |
高い |
耐薬品性 |
強い |
弱い |
寸法精度 |
成形収縮率が大きい |
成形収縮率が小さい |
これらの特徴から、完成品の特性により使い分けられています。
まとめ
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂は、加熱時の状態に大きな違いがあり、成形後の材料としての特徴や成形方法、用途などが大きく異なります。材料を選定する際には、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の特徴や成形法などを十分に理解することが重要です。