ABS樹脂とは?加工方法や特徴を紹介

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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

 


≪目次≫

1.ABS樹脂とは

2.ABS樹脂の特徴

(1)ABS樹脂の長所

(2)ABS樹脂の短所

3.ABS樹脂の加工方法

4.ABS樹脂の切削加工の手順

5.ABS樹脂の活用事例


樹脂(プラスチック)にはさまざまな種類があり、その中で最も汎用性が高いといわれるのがABS樹脂です。工業製品の材料として使われるのはもちろんですが、実際に私たちの生活の中にも、ABS樹脂で作られたものが多くあります。

この記事では、幅広い用途に使われるABS樹脂の特徴に加え、加工方法や活用事例について解説します。

 

1.ABS樹脂とは

ABS樹脂は略称であり、正式名称は「acrylonitrile butadiene styrene copolymer」です。正式名称を英語表記した場合の頭文字を取って、ABS樹脂とよばれています。アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂の総称で、日常生活の中でも幅広いシーンで用いられている樹脂(プラスチック)の一つです。

樹脂(プラスチック)材料にはさまざまな種類がありますが、その中でもABS樹脂は汎用性が高い材料として知られています。

 

 

 

 

2.ABS樹脂の特徴

ABS樹脂は、熱可塑性樹脂の一種で、耐熱温度は約70℃~100℃、剛性・硬度・加工性・耐衝撃性・曲げ疲労性など、機械的特性のバランスに優れています。ABS樹脂は総称なので、すべてのABS樹脂が同じ特性を持つわけではなく、一部の特性を強化するために配合比率を調整することもあります。

有機溶剤には溶けますが、酸性溶液やアルカリ溶液には溶けません。また、耐候性はあまり高くなく、長時間直射日光に当たるような状況では劣化します。さらに耐薬品性も低いため、アルコールや鉱物油、強酸、強アルカリなどが付着すると劣化し、ケミカルクラックが生じます。

ABS樹脂の長所と短所について、それぞれ確認しましょう。

 

(1)ABS樹脂の長所

ABS樹脂は、特徴でも紹介したように機械的特性が高く、一部の特性を強化するために配合比率の変更が可能です。また、加工性に優れており、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、FDMなどに対応しています。

表面加工が比較的容易にできるのも特徴で、印刷や塗装、メッキなどをABS樹脂に施すのは難しくありません。表面の光沢性に優れているので、これらの表面処理を行わなくても高品質な質感を出すことが可能であり、低コストで目に触れる部品に採用できます。

また、切削などの加工性に優れている点もABS樹脂の持つ長所の一つです。

 

(2)ABS樹脂の短所

長所が多く幅広い用途に使用できるABS樹脂ですが、特徴で挙げたように耐光性や耐薬品性が弱い点が短所となります。また、可燃性であり燃えてしまうため、極めて高温の環境や火種がある場所には向いていません。

また、ABS樹脂の加工中は独特の臭気が発生するため、注意が必要です。

 

 

3.ABS樹脂の加工方法

ABS樹脂は熱可塑性樹脂であるため、樹脂(プラスチック)成形の一般的な手法に対応しています。その中でも、大量生産においては生産性に優れた射出成形やブロー成形など、金型を用いた加工法が多く用いられています。また、近年はその汎用性の高さから、3Dプリンターの材料としても認知度の向上が顕著です。

ABS樹脂の加工方法としては、切削加工もよく用いられる手法の一つです。特に、大量生産をしない部品を作る場合には金型を作る必要がないため、低コストかつ比較的短時間での加工を実現できます。また、射出成形などで作った部品の精度向上や形状を最適化するための後加工にも用いられます。

切削加工としては、旋盤加工やマシニング加工が代表的です。

 

 

4.ABS樹脂の切削加工の手順

ABS樹脂の切削加工として代表的なマシニング加工の手順を紹介します。

マシニング加工を行う際には、はじめに加工プログラムを用意します。加工プログラムでは、使用する工具や工具の動作、速度、回転数など、細かい加工条件を設定します。

次に、材料を用意します。ABSの板材やブロック材を用いるのが一般的です。加工をする際の加工代を十分考慮し、製品よりも少し大きめの部材を用意します。

材料の準備が完了したら、マシニング加工を実施します。設定したプログラムに基づいて、工具の交換や加工を行います。

最後に、仕上げ・検査としてバリの除去や面取りなどを行います。また、狙い通りの寸法になっているか、穴径などが正しく加工できているかの検査をして、問題なければ完成です。

 

 

5.ABS樹脂の活用事例

ABS樹脂は汎用性が高く、さまざまな製品に使われています。代表的な用途としては、テレビや冷蔵庫、掃除機などの家電製品や精密機器が挙げられます。また、プラモデルなどのおもちゃや文具、スポーツ用品などにも活用されています。

工業製品としては、自動車部品や工業部品などにも用いられており、現在では欠かすことのできない材料となっています。

ABS樹脂は単体で使われるだけでなく、強化ガラス繊維や炭素繊維など、樹脂(プラスチック)などと組み合わせた機能性プラスチックに加工することも可能です。

 

 

まとめ

汎用性の高い熱可塑性樹脂であるABS樹脂について、その特徴や加工方法、用途などについて解説しました。ABS樹脂は加工性の高さや機械的特性の高さが特徴であり、家電製品や精密機器、工業製品などさまざまな用途に用いられています。

ABS樹脂は配合の比率を変更することで特性を強化することが可能です。また、3Dプリンターの材料としても有効なため、今後も広く活用されていくでしょう。