金型の入れ子構造を採用する目的とメリットについて解説

金型の入れ子構造を採用する目的とメリットについて解説

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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

 


≪目次≫

1.金型の入れ子構造とは

2.入れ子構造を採用するメリット

3.入れ子構造の種類

(1)加工性を向上させる

(2)ガス抜きをしやすくする

(3)冷却性を高める


金型を用いて製造したい完成品として、どのような特性、形状を実現するかによって金型に求められる要求特性は異なります。特に工夫をせずに、形状だけを重視して金型を製作してしまうと、狙い通りの完成品実現が難しいため、金型を製作する際には入れ子構造を採用する場合が多くなっています。入れ子構造を採用するにあたっては、さまざまな狙いがあるため、金型の入れ子構造について採用のメリットや入れ子構造の種類について紹介します。

 

1.金型の入れ子構造とは

 

 

 

2.入れ子構造を採用するメリット

 

金型の入れ子構造とは、母型とよばれる金型本体に対して、別部品をはめ込む型を採用した構造のことです。多くの金型は母型と入れ子のセットでできています。主に、精密な精度が求められる部品の金型に多く用いられています。

一般的には、部品点数が増えると誤差の累積により位置精度は落ちてしまいます。しかし、金型の入れ子構造の場合には、金型を一体式で加工するよりも入れ子部品を加工する方が精度よく加工でき、さらに入れ子を動かすことで位置の精度を調整できるため、部品点数が増えても高い精度を確保できます。

一方で、入れ子を用いて金型を分割した場合、成形を行う際に分割部分で製品の外観にラインが出てしまいます。外観の品質に高い要求があるデザイン性が重視される部品などの場合には、入れ子を用いることがNGになっている場合があるため、注意が必要です。その場合には一体成形で加工せざるを得ません。

金型を入れ子構造にするメリットとして、部品交換や加工を容易にすること、入れ子部分のみ材料を変えられること、成形不良を防ぐことなどが挙げられます。

例えば、金型本体に細かなでっぱりの形状が必要な場合、一体加工をする際にはこのでっぱりを実現するために複雑な加工を行う必要があり、加工効率が悪化します。このでっぱり部分を入れ子部品として加工すれば、金型全体の加工効率が向上します。

また、金型の中でも特定の部分にだけ摩擦が加わるような場合には、その部分を入れ子構造にすることで、金型自体の耐久性向上が実現できます。例えば、入れ子部分だけ耐摩耗性の高い材料を使ったり、本体と同じ材料だった場合でもその部分だけ交換をしたりすることで、交換費用などを大幅に低減できます。

このように、金型に入れ子構造を採用することには多くのメリットがあるため、多くの金型で入れ子構造が採用されています。

 

 

3.入れ子構造の種類

 

入れ子構造には、その目的に応じてさまざまな種類があります。具体的にどのような種類の入れ子構造があるのか確認します。今回紹介するもの以外にも、入れ子構造にはさまざまな工夫が行われているため、用途に合わせた構造を選択することが重要です。

 

(1)加工性を向上させる

金型本体の加工性を向上させるために、でっぱり部分に入れ子構造を採用することがあることは紹介しました。加工性向上という観点では、でっぱり以外にも細く深い凹形状を構成する必要がある場合も、入れ子構造の採用が効果的です。

金型に広く深い掘り込みを行い、最終的な金型の細く深い凹形状を実現できる入れ子部品を採用することで実現できます。中には、切削加工ではなく放電加工で製作することもありますが、電極の用意などが負担になるため、入れ子構造を採用する方が高効率です。

 

(2)ガス抜きをしやすくする

樹脂成形に深い形状の金型を用いる場合には、樹脂(プラスチック)を流し込んだ先端部分にガスが発生してしまう可能性があります。ガスの影響で成形不具合が生じる原因になるため、ガスを上手く抜く必要がありますが、入れ子構造が役に立ちます。

入れ子構造を採用することで、入れ子と金型本体の間に合わせ目ができるため、そこからガスを抜くことが可能です。入れ子構造にすると分割ラインが出てしまうため、外観が重視される部品などには使えない場合もありますが、分割ラインが見えにくいように上手く場所を工夫するような取り組みが行われています。

 

 (3)冷却性を高める

樹脂(プラスチック)は常温では固体であり、成形時には加熱溶融しています。成形後には冷却して固化する必要があるため、金型に冷却水を通すような経路を構築して冷却効率を高めることがあります。

冷却部分からの距離によって冷却のしやすさが異なり、それによって成形不良につながってしまう可能性があります。それを避けるために、入れ子構造を用いることで冷却性を均一にし、不良を発生しにくくすることが可能です。

 

 

まとめ

金型の入れ子構造は、金型自体を効率よく高性能に製作するために用いられています。また、金型を用いた金属や樹脂(プラスチック)製の完成品を、不良を起こさずに製作するために用いられることも多くあります。

金型そのもの、もしくは金型を用いた完成品を製作する際には、金型の入れ子構造を採用する目的や入れ子構造の種類を確認することが重要です。適切な構造を選択することで、長期間にわたって安定した品質の製品を提供できるでしょう。