切削加工の工具寿命は予測できる?影響を与える要素を解説

切削加工の工具寿命は予測できる?影響を与える要素を解説

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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

 


≪目次≫

1. 切削工具の寿命とは?

2. 切削工具の寿命は予測できるか?

3. 工具の寿命に影響を与える要素

(1)工具と材料の硬度

(2)切削速度

(3)送り量

(4)切削時の角度


切削加工において、工具の寿命は製造コストに大きな影響を与える重要な要素です。寿命が長い工具であれば、一つの工具で多くの製品を作ることができるため、工具そのものや工具交換によるコストを低減できます。

また、自動で製造をする場合、作業員がいないタイミングで工具が寿命を迎えてしまうことは避けなければなりません。工具の破損などにより製品が不良品になったり、設備が壊れてしまったりする可能性があります。

今回の記事では、工具の寿命予測や工具寿命に影響を与える要素について解説します。

 

1.切削工具の寿命とは? 

 

切削工具の寿命とは、同じ工具を使い続けた際に、材料を狙い通りに切削し続けることができなくなる状態を指します。一般的に切削工具が寿命を迎える事象は、摩耗型と欠損型に分類されます。

摩耗型は、製品を削る工具が摩耗することで、切削工具本来の機能を失ってしまう状態を指します。具体的には、工具と材料との間で発生する摩擦や摩擦時に発生する熱が影響を与えます。

また、欠損型は工具の一部分が欠けてしまい、適切に切削加工が行えない状態です。工具の中でも負荷がかかりやすく、弱い部分の破壊や塑性変形により工具が欠損します。

切削工具が寿命を迎えている状態のまま、気づかずに製造を続けてしまうと、取り返しのつかない状況に陥ってしまいます。

例えば、製品が適切に加工できずに不良品をお客様に納品してしまうと、お客様からの信頼を失い、トラブルに繋がることもあるでしょう。また、寿命を迎えた工具が製造中に欠損し製造設備が壊れると、多額の費用が必要になります。

お客様からの信頼を積み上げ、品質を確保した製品を製造し続けるためには、切削工具の寿命に関するケアは必要不可欠です。

 

 

2.切削工具の寿命は予測できるか?

 

切削工具の寿命を予測できれば、一つの工具を最大限活用することでコストが削減できます。また、無理して使い続けることで発生するトラブルを避けることが可能です。

工具の寿命を予測する考え方の一つに、Taylorの方程式があります。同じ工具と材料を用いる加工という前提において、切削速度に応じて寿命が決まるという方程式です。

しかし、実際の製造現場では、同じ工具と材料で、常に同じ条件で製造をする機会は多くありません。

そこで、Taylorの方程式をベースにさまざまな寿命予測のモデルが構築されています。どのような条件でどのような製品を作るのかが明確になれば、ある程度工具寿命を予測することは可能です。

また、近年は製造工程のIoT化に取り組む企業が増えています。IoT化の導入支援をしている企業では、切削加工時の電流などさまざまなデータから工具の寿命をタイムリーに予測するシステムを構築しています。このようなシステムをうまく導入することで、切削工具の寿命を予測し、効率よく製造することが可能です。

 

 

3.工具の寿命に影響を与える要素

工具寿命にはさまざまな要素が影響を与えます。具体的にどのような要素が影響を与えるのか、代表的なものをご紹介します。

 

(1)工具と材料の硬度

切削工具と材料の硬度は、切削時の工具寿命に大きな影響を与えます。工具の硬度に対して材料の硬度が高すぎると、工具の摩耗が促進され寿命が短くなります。一方で、工具が硬すぎる場合には欠損などが起きやすくなってしまうため、材料の種類に合わせた適切な硬度の工具を選定することが重要です。

 

(2)切削速度

切削加工時の速度が大きい場合、工具の摩耗が促進されたり工具の刃の部分がだれてしまったりします。また、逆に速度が小さすぎる場合には、材料が工具の刃にくっついてしまい、工具寿命に影響を与えることがあります。工具寿命を長くするためには、硬度と同様に切削速度も適切な範囲で設定することが必要不可欠です。

 

(3)送り量

送り量は、材料を一回転させる間に工具を進める量を指します。送り量が大きい場合には切削速度が大きい場合と似たような状態になり、工具の摩耗が促進されます。一方で、送り量を小さくすると摩耗しにくくなりますが、加工に時間がかかりコストが増加してしまう点がデメリットです。

 

(4)切削時の角度

切削加工では、工具を材料に食い込ませることにより加工を進めます。切削時の角度とは、工具を材料に食い込ませる際の角度を指します。適切な角度設定をしないと、切削した際に生じる切りくずが加工部分に溜まってしまい加工の邪魔になります。

また、材料の硬度が高い場合に設定角度が小さいと、工具をうまく食い込ませることができずに、工具の欠損が生じやすくなってしまいます。

このように、工具の寿命に影響を与える要素は多くあります。またこれらの要素は、どんなときでも一定にすればいいわけではありません。工具と材料の硬度の関係や、製造する製品などに合わせて適切に調整する必要があるため、さまざまな分野における深い知識や経験が必要です。

 

 

まとめ

切削工具の寿命は、使用する工具の種類や加工する材料、加工時の条件に影響を受けます。同じ品質を持つ製品を製造する際に、一つの工具を長く使い続けることができればコスト低減が可能です。

また、工具が寿命を迎えるタイミングを予測することで、不良品を出してしまうリスクも軽減されるでしょう。高品質の製品を低コストで実現するために、工具の寿命に影響する要素や寿命予測に関して、どのような観点があるのかきちんと把握しておきましょう。