
射出成形を行う場合に確認すべき成形条件とは?種類と注意点を解説
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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

≪目次≫
射出成形で確認すべき成形条件
射出成形で精度良く部品を作るためには、さまざまな「成形条件」を適切に設定する必要があります。成形条件が不適切な状態だと、不良品ができてしまう可能性が高くなります。
この記事では、射出成形における成形条件の種類と、条件を設定する際の注意点を解説します。
射出成形で確認すべき成形条件
射出成形で部品を成形する場合には、さまざまな条件を適切に設定する必要があります。具体的にどのような条件があり、成形した部品にどう影響するのか解説します。

1.樹脂温度(シリンダー温度)
射出成形を行う上で、樹脂の温度はとても重要な条件です。シリンダーの温度設定を変更することで調節できますが、適切な温度は使用する材料によって異なります。
樹脂温度が高すぎると粘性が低く、金型の外に漏れだす可能性があります。一方で、樹脂温度が低すぎると粘性が高く、必要な個所に樹脂が充填されず、不良品になってしまいます。
2.金型温度
金型温度は、金型に射出された樹脂の収縮に影響を与えるため、表面の形状などがきちんと狙い通りにできるかを決定づける重要な要素です。
金型温度の中でも特に、材料である樹脂と接触する金型の表面温度を適切に管理することが重要です。樹脂温度と同様に、温度が高すぎると粘性が低くなり、温度が低すぎると粘性が高くなるため、期待通りの部品精度を実現できません。
5.保圧
保圧は、樹脂を金型内に充填したあと、樹脂が射出成形機に逆流してこないように保持する際にかけ続ける圧力です。樹脂を充填する入口であるゲート部分が冷却され、固まって樹脂が逆流しなくなるまで、圧力をかけ続けます。
保圧が不十分な場合には、樹脂が逆流してしまうことで樹脂が不足するため、完成品が凹んだり、狙いよりも寸法が小さくなる可能性があります。圧力の大きさとともに、保圧する時間も十分確保する必要があります。
6.射出時間
射出時間は、充填時間と保圧時間を合わせた時間です。射出時間が短すぎると、完成品に不良が生じる可能性があり、長すぎると生産性が低下します。高い品質と低コストを両立するためには、適切なバランスを取った時間設定が必要です。

7.冷却時間
金型内に熱い樹脂を射出し、成形品を金型の中で固まらせるまでの時間を冷却時間といいます。冷却時間が長ければ当然きちんと固まりますが、時間をかける分、生産効率が低下します。対して冷却時間が短く、樹脂が十分に固まっていない状態で金型から突き出された場合は、完成品の変形が大きな懸念です。
8.スクリュー前進位置
部品を作るために必要な樹脂を、金型に充填しきったタイミングにおけるスクリューの位置です。スクリュー前進位置を適切にコントロールすることは、保圧を適正にかけられるかどうかに影響を与えます。
前進させすぎると保圧が大きくなりすぎますし、逆の場合には保圧が小さくなり、充填した樹脂が逆流する可能性があります。

9.スクリュー回転数
射出成形の材料である樹脂のペレットを適切に混ぜるためには、スクリュー回転数の設定が重要です。複数種類の樹脂を混ぜて射出成形を行う際に、スクリュー回転数が小さすぎると樹脂がよく混ざらず、品質が安定しません。スクリュー回転数が大きすぎると、樹脂の中にエアを噛みこんでしまい、充填時や充填後にエアがガスとなって発生するため、不良品になってしまいます。
10.金型開閉速度
金型を開けたり閉めたりする速度も、高品質な射出成形品を作るために重要な条件です。
金型開閉速度が遅いとサイクルタイムが長くなるため、製品コストが高くなります。一方で金型を閉める速度を速くすると、金型同士がぶつかる可能性があり、完成品が金型にくっついてしまう可能性があります。
11.突き出し速度
突き出し速度は、成形が完了した部品を金型から外す際に、エジェクタロッドで部品を押し出す際のロッド速度です。突き出し速度が速すぎると、部品に対して不要な圧力が加わるため、部品が変形してしまったり圧力がかかった部分が白くなってしまうことがあります。
一方で突き出し速度が遅すぎると、部品を金型から外すのに時間がかかるため、サイクルタイムが長くなり、製品コストが高くなります。
12.突き出し回数
突き出し回数は、エジェクタロッドを突き出す回数です。金型から離れやすい部品の場合には一度で十分ですが、形状が複雑な場合などには複数回の突き出しが必要となることがあります。突き出し回数も少ないほうがサイクルタイムを短くできるため、コストを低く抑えられます。
まとめ
今回は、射出成形における代表的な成形条件をご紹介しました。
いずれの条件も、どちらか片側に調整すればいいというわけではありません。大きすぎても小さすぎても悪影響があるため、適切な範囲を保つ必要があります。
また、一つの不具合に対して、複数の成形条件が影響を与えている可能性も高いです。どの条件が不適切なのかを見極め、調整していくことが重要です。