
射出成形で発生する主な不良の種類と対策方法を解説
ホーム > 技術情報一覧 > 月刊Design Tips >射出成形で発生する主な不良の種類と対策方法を解説
※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

≪目次≫
射出成形の主な不良と対策
射出成形で部品を作る場合、材料や部品に合わせて適切な設計や条件設定が必要です。条件が不適切だと作った部品にさまざまな不良が発生し、作り直しになってしまう可能性があります。
今回は射出成形で部品を作る際に発生する主な不良について、その特徴や原因、対策方法を解説します。不良についてあらかじめ把握しておくことで、不良が発生する前に対策を打てるため、失敗の回数を減らすことが可能です。
射出成形の主な不良と対策
2.フローマーク
フローマークは、樹脂を投入する箇所や絞られた経路から広がる箇所で生じる不良です。経路が広くなる箇所を中心に、年輪状の波模様が生じます。
樹脂の温度が低かったり射出速度が遅かったりすることで、金型内を樹脂が流動する途中で冷却されてしまうのが、主な原因です。
対策としては、途中で樹脂が固まってしまわないようにする必要があります。例えば、射出速度を速くすることや金型の温度を高くすることが効果的です。
3.クラック
クラックは、成形品に欠けや細いひびが発生する不良です。欠けをクラック、細いひびをクレージングとよびわける場合もあります。成形品に内部応力があったり、成形品を型から外す際の力が強すぎたりすることが原因です。
内部応力が小さくなるように、射出速度を遅くすることや型の締め付け圧力を適正にすることが対策となります。また、型から外れやすくするために金型にテーパーを取ることも効果的です。
4.ショートモールド
ショートモールドは金型の一部に樹脂が充填されていない状態で冷却され、不完全な成形品となる不良です。ショートショットともいわれます。
これは、樹脂の流動性の悪さや樹脂が通過する経路が狭いことが要因です。また、射出成形機の性能(樹脂を溶かし金型に射出する能力)が不十分な場合にも発生します。
成形機の性能が不足している場合には、より高性能な機械に変更する必要があります。それ以外では、樹脂がしっかり充填されるように射出圧力を高めたり、金型の温度を高くしたりする対策が効果的です。
5.ウェルドライン
樹脂が金型内で一度分岐し再度合流する際に、合流地点できれいにつながらない不良がウェルドラインです。樹脂が合流する地点での温度が低くなり、きれいに合流する前に固まり始めてしまうことで線が残ってしまいます。
樹脂の温度や流動性を高めたり、樹脂を射出する際の速度や圧力を高めたりすることが効果的な対策です。
7.ボイド
ボイドは、成形品の内部に空洞が発生してしまうことです。厚い成形品を作る場合に、成形品の表面と内部で冷却が不均一になることで収縮の仕方が異なり、発生する可能性があります。
対策はヒケと同様で、樹脂の充填量を増やしたり射出速度を調整したりすることが効果的です。
8.シルバーストリーク
シルバーストリークは、成形品の表面に銀白状の筋が残る不良です。樹脂が流れる方向に発生します。成形材料の事前乾燥が不十分な場合に残った水分や、金型と材料の温度差で発生する水滴が原因です。
材料を十分に事前乾燥することで原因となる水分を取り除けます。また、金型と樹脂の温度差が小さくなるように金型温度を下げることが効果的です。
9.反り
反りは、成形品が成形後に反ってしまう不良です。材料の冷却が均一ではなく、場所によって収縮の仕方が不均一な場合や、射出成形時の残留応力が原因となります。
対策としては、冷却を均一にするために金型の温度を均一にしたり、射出圧力を下げたりするなど、残留応力を下げる方法が効果的です。
10.パージ剤残り
パージ剤残りは、成形品の中にパージ剤(洗浄剤の一種)が残ってしまう現象です。残ってしまったパージ剤を完全に取り除くためには、射出成形機を分解し洗浄する必要があります。
対策としては、金型が汚れにくくなる表面加工が効果的です。パージ剤を使用した洗浄の回数を減らすことで、設備を分解し、洗浄する際の負担を小さくできます。
まとめ
今回は、射出成形で部品を作る場合に生じる代表的な不良モードについてご紹介しました。10種類の不良を取り上げましたが、その多くが樹脂の流動性や金型の設定温度が影響しています。
また、それぞれの不良は背反関係にあるため、不良が発生しないようなちょうどいいバランスを見つけ出すことが重要です。
射出成形に関するさまざまな経験やノウハウを元に、作りたい部品に合った成形条件を確立しましょう。