切削加工の図面によく出てくる記号について解説!

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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

 


≪目次≫

1. 寸法公差

2. 幾何公差

3. 表面粗さ記号


切削加工で部品を作る場合、必ず図面に基づいて作業が行われます。図面にはいろいろな指示を表わす記号が使われています。今回は切削加工の図面によく登場する代表的な記号について、その意味や使い方を見てみましょう。

 

寸法公差

寸法公差とは、基準の寸法値に対してずれが許される範囲のことです。部品を設計するとき、設計者はこの箇所をこの寸法で仕上げてほしい、といった理想の値があります。しかし、すべての箇所をその値ぴったりに加工することを目指すのは必ずしも好ましいことではありません。例えばぴったりに加工するためには非常に高精度な加工機が必要になり、加工速度も遅くなります。その後の寸法測定の時間と手間にも影響します。

 

また部品の使われ方によっても、理想の値におおよそ近い寸法であれば問題ない箇所もあれば、とても高精度な寸法が求められる場合もあり、まちまちです。図面上でおおよその寸法で良い箇所は緩く、精度が求められる箇所は厳しい寸法公差を指示することによって、メリハリをつけて管理することができるようになります。この寸法公差は19世紀後半から使われるようになったといわれています。それまでは各寸法がどれくらいの幅に入っているのか管理されていなかったため、同じ種類の部品でも組立ができたりできなかったりという事実上現物合わせのような状態でした。そのため寸法公差の導入は工業製品の大量生産に大きく影響しました。

 

寸法公差の最も基本的な形式は、基準となる寸法の横に公差値を加える方法です。上限、下限の幅が同じ場合は±(1)、違う場合は上限を上、下限を下に記入します(2)。軸や穴など、円筒形状で互いに嵌めあう部品の場合、公差域クラス記号という形式で表すことがあります。例3は例2と同じ意味の寸法公差を公差域クラス記号で表したものです。

 

 

寸法によっては公差が入っていないものがあります。この場合、普通公差とよばれる寸法公差が適用されます。下表は普通公差を適用した場合に、基準寸法に応じてどれくらいの幅を許容するのかを意味しています。

 

幾何公差

寸法公差は各箇所の寸法の幅を指定するものでしたが、製品にはその形自体を管理したいこともよくあります。身の回りのもので例えてみましょう。テーブルはその天板の上面がフラットである必要があり、また床に対しても平行でなければ使い勝手に影響します。シャープペンシルの芯は全長に渡ってきれいな円筒であり、また曲がっていない必要があります。このような形の制限は、内容によっては寸法公差で表すこともできなくはありませんが、難しい場合も多くあります。これらを管理するため、幾何公差というものが使われています。

 

下図は幾何公差が入った図面の例で、ブロックに円筒の穴が空いている状態です。オレンジ、青丸で示されているものがそれぞれ位置度、直角度とよばれる幾何公差を意味しています。幾何公差によっては、基準面からの距離などで精度を規定します。この基準面を「データム」といい、赤丸のような記号で記入します。またデータムからの寸法を「理論的に正確な寸法」といい、緑丸のように寸法値を四角で囲みます。この指示の意味を見てみましょう。位置度についてはデータムAB面からそれぞれ54mmの箇所にある直径0.01mmの仮想的な円の中に直径5mmの穴の中心が入っていること、という意味です。直角度については矢印で指されている実際の面が、データムB面に対して垂直で仮想的な幅0.1mmの平行二面の間に入っていること、という意味です。

 

幾何公差は次の表に示したとおり、全部で15種類あります。なかでも、平面度、真円度、平行度、直角度、位置度、同軸度などが切削加工部品で指定される機会が多いものです。幾何公差は寸法公差以上に数字に対する厳しさの度合いがわかりづらいといえます。

しかし意味もなく闇雲に入れると加工が急激に難しくなったり、コストや納期に大きく影響することも考えられます。機能上必要な精度がどのレベルか十分検討するのはもちろん、同時にこれまでの類似部品での要求精度や、自社で使うことのできる加工機ではどの精度まで達成できるのかよく確認してから要求値を決めることで、後工程でのトラブルを減らすことができます。

 

表面粗さ記号

寸法公差や幾何公差で表現できないものが、加工面などの表面粗さです。切削加工などで表面を削ると一見つるつるしていても、必ず微細な凹凸ができます。またこの凹凸の大きさ、深さなどは加工方法や条件などにも影響されます。部品の使われ方によって、粗くてもよいところと平滑な表面が必要なところが決まってきます。これを図面上で指示するものが表面粗さ記号です。加工面の粗さの上限値や加工目の方向、加工方法などを指定できます。

下図が表面粗さ記号の例です。この場合、Ra(算術平均粗さ)6.3を上限として、旋盤加工(L)によって同心円状の加工目の面(C)となるように加工を行いなさい、という意味になります。

 

算術平均粗さRaは表面粗さの種類になりますが、これは他にも多くの種類があり、それぞれ計測のしかたに違いがあります。Raは最も一般的に用いられているものですが、求める機能によっては別の種類を使うこともあります。加工方法や加工目の方向をなぜ指定するのか疑問に思う方もいると思いますが、使われ方によっては影響があります。例えばフランジ部品など、Oリングなどが接触する箇所をフライス盤によるエンドミル加工で綾目の加工目になった場合、使用中に加工目に沿ってオイルやガスが滲み出してしまうことがあります。これを旋盤加工による同心加工を行えば、オイルやガスが滲み出るには凹凸を乗り越える必要があり、シール性が格段に向上します。

 

まとめ

切削加工の図面でよく使われる記号についてご紹介しました。記号を追加するのは簡単ですが、裏にはその精度を指定する必要性や、それを達成するための切削加工技術が隠されています。それらの意味や影響も考えながら、図面記号と向き合ってみてください。