切削加工の時に問題になることって? 設計段階で気をつけたいポイントとは

切削加工の時に問題になることって? 設計段階で気をつけたいポイントとは

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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

 


≪目次≫

1.切削加工に共通する気をつけたいポイント

(1)確実に保持できるつかみ代を設ける

(2)ツールパスを考える

(3)不必要な難削材を使わない

2. フライス加工で気をつけたいポイント

(1)不必要な複雑形状を避ける

(2)内角はなるべく大きなRにする

3. 旋盤加工で気をつけたいポイント

(1)細くて長い形状を避ける

(2)深く、貫通していない穴の中ぐり加工を避ける

(3)薄肉部品の加工を避ける

(4)突切り加工を避ける

4. 穴あけ加工で気をつけたいポイント

(1)細くて深い加工を避ける

(2)穴側面の面粗度は別に考える


 

切削加工はいろいろな形を作ることができますが、形によっては加工が難しいものもあり、コストや納期に影響することがあります。今回は切削加工と各代表的な加工法で問題となる形状の例について見ていきます。

 

切削加工に共通する気をつけたいポイント

1)確実に保持できるつかみ代を設ける

どんな切削加工でも加工物を固定することが必要です。例えば旋盤加工ならば3ツ爪チャック、フライス加工や穴あけ加工ならばクランプやバイスなどです。切削部品を設計するときは、つかみ代をどこにするのか考える必要があります。本来いらない治具が必要になったり、そもそも加工ができなくなったりします。またつかみ代はただあればいいわけではなく、十分な面積と力で確実につかめなければなりません。薄肉部品などチャックすると歪んでしまうような場合であっても、正確な寸法に仕上げられないと問題になりますので注意が必要です。

 

2)ツールパスを考える

加工に使う工具を通すために必要な空間をツールパスとよびます。これは工具だけではなく、例えば工作機械のチャックやシャンクなども影響します。思った以上に広い空間が必要になってくることもあるため、設計後に問題になることも少なくありません。形状によっては必要以上に複雑な加工プロセスが必要になったり、そもそも加工できなくなったりします。また加工だけに気をとられがちですが、製品が完成した後は決められた寸法通りにできているか検査が必要です。検査のための測定用具が問題なく入るのか、現実的に計測ができるのかという点も考慮が必要です。必要なツールパスは加工機や刃具の種類によっても変わってきますので、心配な場合はあらかじめ製造部や品証部などと協議することが後々問題にならないために有効です。

3)不必要な難削材を使わない

設計の際は、対象の部品をどの材質で作るかも選定する必要があります。このとき難削材といわれる切削加工に困難を伴う材質は、可能な限り避けるべきです。難削材にも種類があります。

まず純粋に切削加工が難しいステンレス鋼やチタン合金などです。ステンレス鋼などは近年の工具の発展により比較的対処できるようになっていますが、決して切削が容易な材質ではありません。

次に切削性のデータに乏しい材料です。切削加工ではどのような工具を使い、どのような切削条件で加工を行うかが出来栄えに影響します。一般に流通量が少ない材質などの場合、このような情報が少ないため問題に繋がりやすく、良好な加工品質を得るまでの手間が伴います。耐熱合金であるインコネルやナイモニックなどがその例です。

最後は、加工に危険が伴う材料です。これは主に切削中に出る切粉が問題になることが多いといえます。例えば黄銅など切削は易しいですが、粘りのある材質のため切粉が連続して長く続きます。これが影響して回転中の加工物や工具に巻き付いてしまったり、樹脂などが加工熱で溶けてしまい切削が続けられなくなることがあります。またマグネシウム合金は発火性があることが知られていますが、これは切粉など空気と多く接触できる形状になると危険度が増します。

 

フライス加工で気をつけたいポイント

1)不必要な複雑形状を避ける

切削加工では基準面を定めて加工が行われます。フライス加工の場合この基準面に対し直角、平行を外した加工は難易度が上がることがあります。例えば基準面に対してどの軸も傾斜している場合、加工する前に治具の製作が必要だったり、5軸マシニングセンタが必要になったりと、コストや納期に影響が出る可能性があります。加工を行う前の検討段階でも複雑な加工を考えることはミスを誘発します。このためなるべく基準面から平行、直角となるような設計にすることが好ましいといえます。

 

2)内角はなるべく大きなRにする

マシニングセンタなど多軸のNC加工機では、3次元的な複雑形状も作れます。しかし一見簡単そうに見えて難しい、あるいは加工できない形状があります。よく問題になる例がポケットや溝部の内角です。このような箇所はエンドミルで加工を行うことが多いのですが、エンドミルの腹で作られるコーナー部は、どうしてもエンドミルの半径分のRが残ってしまいます。エンドミル先端で作られるコーナー部も、どうしてもRが付きます。これをなくそうとするとフライス加工では難しく、放電加工などを使うことになります。しかしこれはコストも時間もフライス加工に比べて遥かにかさみます。逆に設計上許される範囲で大きなRを取ることは、加工上有利に働くことが多いです。例えば工具も大径のものを選択できるため、一回の送りで大きく材料を削り取ることができます。

 

旋盤加工で気をつけたいポイント

1)細くて長い形状を避ける

旋盤は加工物の一端をチャックでつかみ、その外周部や端部をバイトで削ります。この際、加工物はバイトからも少なからず力を受けます。加工物が長尺の場合、このバイトからの力に影響されて逃げてしまうことがあります。こうなると、円筒状に切削しているはずなのに製品はテーパー状(たる型)になってしまいます。これを防ぐための振れ止めなどのアタッチメントもありますが万能ではありません。

 

2)深く、貫通していない穴の中ぐり加工を避ける

中ぐり加工はバイトが華奢になることが多い加工法です。このため加工状態も不安定になることが多く、径が小さくて深いものほど難しくなります。さらに貫通していない穴の場合、切粉が内部に留まりやすく内部での加工状態がわからないため、さらに問題が起こりやすくなります。

3)薄肉部品の加工を避ける

つかみ代にも通じますが、薄肉部品の加工は難しいことが多いです。旋盤加工の場合は、加工中に「キャー」という鋭い音が発生することがあります。これはバイトと加工物の間の摩擦によって自励振動という共振現象が起こり、加工物が細かく振動することによって発生するものです。振動してしまっているため、加工後の表面には波紋のような跡が残ってしまい問題になります。作業者は切削条件を変化させることでこれを防ぎますが、薄肉部品ほどこの問題解決は難しくなります。

 

4)突切り加工を避ける

突切り加工は他の細かな加工がすべて終わった後、つかみ代と製品とを切り離す際などに用いられる加工法です。一般的な加工法のひとつではありますが、他の旋盤加工と比べると、加工機やバイトへの負担が大きいといえます。結果的に加工速度も落とす必要があり、生産性にも影響するため、使わなくて済むならば避けたい加工法です。

 

 

穴あけ加工で気をつけたいポイント

1)細くて深い加工を避ける

ドリルやタップは加工中大きな力を受けるため、その影響で曲がります。これは細くて長い場合が顕著です。このため、穴やねじ切りの径に対してその深さがあまりに大きいと加工の途中で曲がってしまったり、工具が折れたりします。曲がりにくい工夫をした加工機などもありますが、一般的ではないため余計なコストや時間がかかります。必要がないのであれば、このような形状は避けたほうがいいです。

 

2)穴側面の面粗度は別に考える

ドリルでの加工を考えた場合、穴はドリル先端にある切れ刃部で作られていきますが、穴の側面については積極的に削ってはいません。このため穴側面の面粗度は綺麗にならないことが一般的です。もし面粗度を指定した場合、例えばドリルでの穴あけの後リーマなどで仕上げを行うことになり、コストや時間に影響します。必要がないのであれば、穴側面の面粗度は指定するべきではありません。

 

まとめ

切削加工で問題になるポイントと設計段階で気をつけたいことについてご紹介しました。設計は図面の上では簡単に描けても、実際にその通りに製作できるかが重要ですので、色々なことに気を配って進める必要があります。問題が起きないようあらかじめ対策するためにも、製造部の方とよく連携をとることが大切です。