
用途に応じて使い分けが必要/射出成形の種類とは
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※本シリーズは設計者の皆さまの学習にお役立ていただくために、一般的な製造手法のノウハウについてご紹介します。記事内でご紹介する内容はプロトラブズにて未展開のものも含まれます。

≪目次≫
(1)低圧成形
(2)射出圧縮成形
(1)ガスアシスト射出成形
(2)二色成形
(1)インモールド成形
(2)反応射出成形
射出成形と一口に言っても、その種類はたくさんあります。成形する製品の種類や材料などによって、使い分ける必要があるからです。
そこで今回は、それぞれの特徴を知っていただくために、
・低圧成形
・射出圧縮成形
・ガスアシスト射出成形
・二色成形
・インモールド成形
・反応射出成形
という6種類の射出成形をご紹介します。より最適な成形方法をみつけるときの参考にしてみてください。
1.射出成形の種類①:低圧成形/射出圧縮成形

最初にご紹介するのは、おもに電子機器などの加工に用いられる低圧成形と、光ディスクなどの成形に用いられる射出圧縮成形です。
(1)低圧成形
「低圧成形」とは文字通り、金型内部の圧力を低くして行う射出成形です。電子機器をオーバーモールディングする際などに、よく用いられます。
高い圧力で射出成形を行うと、ガス焼けやバリの発生、素材が変形するなどの不具合が生じやすくなります。しかし、低圧成形であれば、これらの問題を解決することが可能です。ただし、低圧成形には精密な圧力のコントロールが求められるため、製品の構造に最適な金型の成形や射出速度の調整が必須となります。
(2)射出圧縮成形
「射出圧縮成形」とはキャビティ(金型の空間部)に圧縮ストローク用の余白を残しながら溶液樹脂を射出して圧縮成形を行う方法になります。つまり、圧縮成形と射出成形を組み合わせた成形方法といえるものです。
射出圧縮成形では射出成形時に発生するひけやひずみを防止するため、キャビティ内の圧力を一定に保つ点が特徴となっています。したがって、射出圧縮成形はおもに光学レンズや光磁気ディスクなど、微細なひずみなどの発生が許されない製品の成形に用いられるのが一般的です。
2.射出成形の種類②:ガスアシスト射出成形/二色成形
次にご紹介するのは、医療機器や自動車などの加工に用いられるガスアシスト射出成形と、2つの材料を組み合わせて加工する二色成形です。
(1)ガスアシスト射出成形
「ガスアシスト成形」とは、加熱融解させた樹脂を金型の内部に射出し、そこに不活性ガスを注入することで製品を成形する方法です。通常の射出成形では製品にひけやそりといった変形が生じる場合があるのですが、内部圧を一定に保つガスアシスト射出成形であれば精度の高い成形が可能になります。
ガスアシスト成形は少ない材料で成形することができ、製品の軽量化やコストカットにつながり大量生産にも最適です。おもに医療機器や自動車機器、産業機器の外観パーツの成形に用いられることが多い成形方法となっています。
(2)二色成形
「二色成形」とは2つの金型を使って2種類の樹脂を射出し、1つの金型で1つの製品を成形する加工法です。通常2つの金型を使って作った製品を、後の工程で組み合わせて1つの製品にするケースが一般的なのですが、二色成形なら1度で済みます。そのため、工期短縮とコストカットが図れる成形方法といえるのです。
二色成形は1つの樹脂では実現不可能な製品の成形が可能なので、固めの樹脂で成形した製品をゴムのような柔らかい樹脂でコーティングするといった使い方がされます。医療機器や歯ブラシ、製品のシール部分などに用いられることが多いです。
3.射出成形の種類③:インモールド成形/反応射出成形
最後は表面加飾に用いられるインモールド成形と、おもにポリウレタン製品の成形に活用される反応射出成形のご紹介です。
(1)インモールド成形
「インモールド成形」とは、デザインが印刷されたフィルムを金型の内部に挟みこんで行う射出成形になります。つまり、製品の成形と同時に表面加飾(デザイン)が施せる射出成形がインモールド成形です。
低コストかつスピーディーに製品を成形できるだけでなく、複雑なデザインにも対応しており、家電や自動車部品の成形に適しています。また、製品の表面にメッキやテクスチャーを塗布することも可能なため、活用範囲が広い点もインモールド成形のメリットです。
(2)反応射出成形
「反応射出成形」とは数種類の低分子量かつ低粘度の樹脂材料などを、金型内に混ぜて射出し、化学反応を起こして製品の成形を行う成形方法になります。おもにポリウレタン製品の成形に用いられることが多いです。なお、反応射出成形は「RIM(Reaction Injection Molding)」成形と呼ばれることもあります。
反応射出成形は低圧での成形が実施可能であり、一般的な樹脂製の金型を活用できるためコストカットにつながる点がメリットです。大型製品の成形にも向いています。
4.目的に応じて最適な加工法を選択しよう
射出成形の種類には、
・低圧成形
・射出圧縮成形
・ガスアシスト射出成形
・二色成形
・インモールド成形
・反応射出成形
などさまざまなものがあり、作りたい製品やデザインなどに応じて最適な射出成形を行うことが重要です。この機会に奥深い射出成形の知識を深めてみてください。
