Design Tip

ヒケを避ける設計

図1 厚肉部分にできるヒケのレンダリング表示

道路や地面の陥没に関するニュースを目にすることがあります。自然に起きる土壌の侵食、採掘、地下水の水位低下などさまざまな原因で地表を支えるべき地下の基底層の土壌が奪われて空洞ができ、最終的には地表が陥没してしまうのです。スケールはずっと小さいですが、同様のことが射出成形でも起きて、ヒケができます。軽度であっても見栄えに影響しますし、ひどい場合にはパーツの機能に悪影響を及ぼします(図1)。ほとんどのヒケの原因は、パーツの外側が冷えて固化しているにも関わらず、パーツの内部の樹脂はまだ固化しきれていないことによります。こうなると、パーツ内部が冷えるにつれて収縮し、パーツの表面が内側に引っ張られることになります。最悪の場合表面が破れて穴ができることがあります。

その他の多くの材料同様、樹脂は液体の状態では体積が膨張し、冷却とともに収縮します。金型はこの膨張と収縮という現象を考慮した設計にし、成形されたパーツが設計通りの寸法になるようにします。しかし、金型の設計で対応するといっても限界もあります。そこで、パーツの設計者が、このような現象を考慮に入れてパーツを設計することが、ヒケの防止に必要不可欠になってきます。

収縮量はさまざまですが、すべての樹脂は冷却とともに収縮します。ABSやポリカーボネート、あるいはこれらの2種類がブレンドされた材料の収縮率は比較的低いですが、ナイロンやHDPE、POMの収縮率は高く、よりヒケが発生しやすい傾向があります。パーツの寸法もこの収縮率に比例して収縮しますので、その収縮量を考慮して金型を設計します。パーツの肉厚が均一であるほど収縮率も安定し、金型の設計値も狙いやすくなります。(注)樹脂によっては樹脂が流れる方向によって収縮率が異なる場合がありますのでゲートの位置にも考慮する必要があります。

図2: 肉抜き(肉盗み)によってパーツの裏側の肉厚すぎる部分を薄くして、パーツの表側に発生するヒケを抑えることができます。

ProtoQuote®で図解している解析結果には、ヒケが発生しやすい箇所を示す項目があります。パーツの3Dモデルの肉厚が厚すぎる領域が濃い青で点滅し、“注意点”として解説とともに表示されます。パーツ全体として大きな支障がある場合には“注意点”ではなく“要設計変更”の項目として表示されることもあります。これ �の内容をもとに、機能上に問題がないか、設計変更するか必要があるかどうかはお客様の判断に委ねられますが、パーツ修正のガイドラインとしては下記のようなものになります。

  1. 射出成形における推奨肉厚は樹脂の種類によっておおよそ決まっています。パーツの大きさ、ゲート等によっても影響されますが、まずはこの推奨肉厚を参考の上、パーツの設計を考慮ください。
  2. 射出成形パーツの設計上の調整としては、厚肉部分を肉抜きし、できる限り均一化することです。(図2)
  3. 数の形状が交差する部分には注意が必要です。例えば、リブ形状が交差する部分は厚肉になる傾向があります。パーツ表面のヒケを抑えるためには、リブの肉厚を表面形状の肉厚の約半分程度に抑えることが理想です。
  4. ボス形状も周囲の形状から離した場所に設置し、肉厚にならないよう注意が必要です。ヒケを抑えるためには肉抜きなども検討し、表面形状の約半分程度に肉厚を抑えることが重要になってきます。
  5. クリップのような形状も同様です。一つの大きなクリップではなく、複数の小さなクリップにすることで肉厚を考慮しましょう。
  6. ガラスやミネラルなどを含有した樹脂は、全体として収縮率が小さくなりますが、反面、反りの原因になる可能性があります。

ProtoQuoteの解析結果や自身の知識や経験、さらにプロトラブズのカスタマー サービス エンジニアも加わって問題を回避する策を検討し適用していくことができます。本型を起こす前の試作で得た知見に基づく対策を本型で活かすことができれば、試作の意義も高まるのではないでしょうか。

ご参考:
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 電 話: 0120-2610-25 または 046-259-9821
 Email: customerservice@protolabs.co.jp

技術資料(ホワイトペーパー):
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図解 樹脂部品設計 Vol 1

樹脂射出成形を考慮した樹脂設計について図解しました。射出成形の仕組みから推奨肉厚、肉厚、表面仕上げ、公差、キャビ・コア、樹脂の選定など樹脂製品の設計にお役立てください。

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図解 樹脂部品設計 Vol 2

凹凸形状や穴形状、直線や曲線などさまざまなフィーチャを備えた樹脂パーツの設計に関するアドバイスをまとめました。 スライド、テーパ合わせ、置き駒、無理抜きなどに関する解説もお役立てください。