Design Tip

クラッシュリブ−圧入パーツ設計のポイント

Illustration of drive shaft part
図 1:ギアパーツ中央のD字型の穴にドライブシャフトが嵌ります。

圧入するパーツを射出成形で作ることには難しさがあります。射出成形では、パーツに抜き勾配を与えることで、金型からのエジェクト(取り出し)を円滑にしますが、圧入するパーツの場合は、その抜き勾配が影響して、完全な固定ができなくなることがあります。シャフトに押しこむギアのパーツを例にあげて説明します(図1)。シャフトの断面はD型をしており、平らな部分がシャフトを固定し、アセンブリ時のパーツの向きがわかるように設計されています。

軸の平らな部分がシャフト回転時の空回りを防ぎます。D字型の穴の成形にあたっては通常、抜き勾配を求められることになります。樹脂は冷却するときに穴を形成する金型のコアを締め付けるように収縮するので、樹脂の食い付きを低減させるためには、抜き勾配が必要なのです。納得できる要件ではありますが、設計の仕様上抜き勾配をつけることができないという場合にはどうしたらよいのでしょうか。2つの対策が考えられます。

1. 設計を変えることなく、抜き勾配をゼロにする穴がさほど深くなければ特に問題はないかもしれませんが、穴が深くなればなるほど、樹脂の冷却時とパーツの取り出し時にコアにかかる応力は高いものになります。取り出しの際に必要な荷重が大きくなると、えぐったようなエジェクタ痕ができたり、場合によってはコアやエジェクタピンが壊れることも考えられます。射出成形の技術者は、金型へのダメージを防ぐために、成形条件を調整しますが、ヒケやウェルドなど、仕上りに問題が発生することが考えられます。

Draft and assembly function
図 2:シャフトと穴のフィティングの断面図。紫色の樹脂パーツの穴の下方向に勾配がついています。これはアセンブリを組んだ時に揺れの原因となります。

2. 穴に抜き勾配をつける抜き勾配をつけることでパーツは取り出しやすくなります。勾配がついていることで、パーツはエジェクタピンに少し押されただけで、パーツとコアの間にクリアランスが生じ、金型から外れやすくなります。このことでパーツ、金型の双方にかかる応力は小さなものになります。パーツに抜き勾配がついていることで、型技術者は形状や外観の課題を優先して成形条件を調整することができます。ただ、設計者としては、アセンブリ全体を考慮して、抜き勾配によって意図する機能が果たされない、ということがないようにする必要があることは確かです。例えば、シャフトをギアに嵌めた時、ギアの揺れの原因になるような隙間があってはいけません。(図2)

3. クラッシュリブをつけるそこで3番目のオプションが考えられます。クラッシュリブをつけることです。クラッシュリブであれば、成形に必要な抜き勾配を設けることができ、製品の仕様上求められる軸のアラインメントを両立できます。穴部分に抜き勾配をつければ、離型性を確保でき、金型へのダメージを回避できます。そして3つ以上のリブを穴の内側に追加すれば、きっちりとしたフィッティングとシャフトとのアラインメントを実現できます。このリブには抜き勾配は不要です。(図3)

Injection molding crush ribs illustration
図 3:典型的なクラッシュリブ例。三角形の尖った部分が抜き勾配のないリブです。穴の部分には抜き勾配がつけられています。

金型全体に対してリブが占める面積はとても小さいため、抜き勾配がなくても、パーツ取り出し時の抵抗は最少で、金型へのダメージも心配する必要はありません。シャフトと接触するリブのごく狭い領域が、相手のパーツを押し込むときに変形して、確実に嵌合します。変形は微小なので、パーツそのものへの影響もほとんどありません。ただ、このようなV字形状は放電加工などのプロセスが必要で、コストの上昇につながります。

Protomold 射出成形では、コスト削減と製造時間短縮のためにも金型をマシニングセンターで加工できるリブ形状を提案します。V字型のリブではなく、半円形のリブ形状を検討してみてください。(図4)半円状のリブであれば、3軸のマシニングセンターで加工できるので放電加工のプロセスは必要ありません。このほうがV字型のリブを加工するよりも早く、コストを押さえることができ、しかもシャフトが押し込まれた際にV字型の接点よりもつぶれが発生しづらくなります。

Crush rib design example
図 4:Protomold 射出成形で提案するクラッシュリブ。リブの先端は、エンドミルで削ったままの形状で、穴部分の側面には抜き勾配がついています。

このようなリブ形状は、たとえば、エアギャップ(空隙)を必要とするようなパーツの嵌合部分での絶縁を実現したいときにも有効です。エンドミルで加工された半円状のリブであってもたいていは必要な機能を果たし、金型の複雑さが緩和されることで製作時間の短縮とコストの削減が実現できると確信しています。製造にかかる時間が短縮されれば、それだけ早くパーツを入手でき、試作も早くできるため、製品の市場への投入も早めることができます。

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