Design Tip

5つのヒントから考える!射出成形パーツの複雑なフィーチャをマスターするために

樹脂射出成形パーツの設計は、パーツごとに様々な特徴や役割を持ち、使用する材料にも長所と短所がありますので、上手く導いてあげる必要があります。とても手がかかる場合もありますが、いくつかのシンプルなルールに従えば、難しい設計上の課題も乗り越えることができます。

例えば、射出成形では、一般的に次のような要素がパーツ設計時の課題になります。 

  1. クリップとスナップフィット
  2. リビングヒンジ
  3. ボス
  4. パーツ上の文字
  5. 二色成形

上記の要素は、パーツ設計に取り入れることができる魅力的なフィーチャと重なる部分があります。つまり、これらの設計要素を理解することは、フィーチャをマスターすることに繋がります。

用途によっては、これらのフィーチャを使用することで、さらに機能的で美しいパーツを実現しつつ、生産コストを削減することができます。以下のヒントやテクニックが、それを実行する手助けになるでしょう。 

クリップスナップフィット

成形品にクリップやスナップフィットが必要な例は、数多く存在します。たとえば、電子機器のケースや工具セットのスナップ式の蓋などです。両方とも、嵌合パーツの雌ポケットやスロットまで届いて引っ掛かる、柔軟性のあるフック状の形状が必要になります。どちらの場合も、このようなフィーチャを作成する最適な方法は、テーパ合わせ面による二方向抜きでの形成です。この手法を用いたスナップフィットの設計では、スナップの真下の部分に穴を開ける必要があります。この穴を利用して固定側と可動側の金型をテーパ合わせさせることで、スナップフィットを作り出すのです。

ただし、この手法では、パーツフィーチャの向きが金型の型開き方向と一致している必要があり、またクリップの根本の部分に穴を開けなくてはいけません。さらに、テーパ合わせ面には勾配やクリアランスを大きくしなければならない場合もあります。いずれも不可能な場合は、スライドによる成形を検討するとよいでしょう。ただし、スライドの方向が、金型のパーティングラインの向きと一致していて、抜き方向に対して直角である必要があります。

最後に、手動装着式の型インサート(置き駒)を使用する方法があります。これはフィーチャが加工された金属の小さなピース(入れ子)で、手動で挿入し、1ショットごとに金型から取り出す必要があります。材料についても検討してください。アクリルやPEEKを使用するよりも、ABS、ポリカーボネートやポリプロピレンなどの柔軟性のある樹脂のほうがクリップには適しているでしょう。ただし、クリップの長さや形状を変更するなど、設計を巧みに調整することで、材料の制約を回避することもできます。

リビングヒンジ(パーツがそこで折れ曲がる、プラスチック製の薄い部分)は、成形容器の本体と蓋をつなげる効率的な方法です。適切に設計すれば、何千回も開閉でき、強度や柔軟性が失われることもありません。

リビングヒンジ(パーツがそこで折れ曲がる、プラスチック製の薄い部分)は、成形容器の本体と蓋をつなげる効率的な方法です。適切に設計すれば、何千回も開閉でき、強度や柔軟性が失われることもありません。

リビングヒンジ

蓋や柔軟な材料の話題が出ましたが、リビングヒンジは、成形容器の本体と蓋をつなげるのに適した方法です。ビタミン剤やミント菓子の容器を思い出してください。多くの場合、片側には何らかの種類のクリップが、その反対側にはリビングヒンジが付いています。ここで最も配慮すべき点は材料です。ポリカーボネートを使用すると、優れたクリップができあがりますが、リビングヒンジで想定される、数千回、数万回と繰り返される開閉には間違いなく耐えられません。代わりにポリプロピレンやポリエチレンを使用すると良いでしょう。

ブレークアウェイタブはリビングヒンジに似たフィーチャです。補充済みのプロパンガス容器やアイスクリーム容器のプラスチックのキャップを剥がして外したことがあるならば、その仕組みはご存知のはずです。 ただし、タブでもヒンジでも、設計上配慮が必要な点がいくつかあります。ヒンジ部は、十分に薄くして柔軟性を確保しなければならない一方で、折り曲げの繰り返しに耐えられるだけの厚さが必要です。想定される可動範囲によっては、ヒンジが折れ曲がるように、ヒンジの中心に曲げ半径(溝)が必要となることもあります。

また、ここでは容器と蓋を同時に成形しようとしており、薄肉のヒンジと比較的厚肉の容器と蓋の各部分に同時に材料が流入するため、バリや充填の問題が発生する可能性があります。お見積り時に提供している製造性の解析(DFM)に十分注意してください。 

ボス

タッピングネジでパーツを留める場合には、“ボス”は確実に必要です。深いリブや厚肉のスタンドオフと同様、ボスは問題が発生する可能性のあるフィーチャです。これらのパーツフィーチャが長すぎると、金型加工に勾配付きの長いエンドミルが必要になり、成形時にはショートや焼けといったガス溜りの問題が生じます。また、厚肉すぎると、表面にヒケが発生するおそれがあります。

これを回避する方法として、ボスの周囲にリブを使用してボスを支え、肉厚を薄くできるようにする方法があります。また、深い(高い)リブ、スタンドオフ、ボスにはエジェクタピンやコアピンなどを配置してガス抜きを考慮することができますが、この場合、ピンを配置するためのスペースが必要になります。スペースが十分でない場合はパーツに駄肉が付くことになります。

パーツ上の文字

パーツの上に製品名や会社ロゴをデザインすることは、よく行われていることです。しかし、よく注意して設計しないと問題になる可能性があります。初めての場合は、小さいフォントをお勧めしますが、文字の太さが0.5mm 以上あるゴシック体(サンセリフ 系フォント)を選択しましょう。 Century Gothic 26 ポイントの標準フォントおよび16 ポイントの太字フォント、またはComic Sans MS 24 ポイントが金型彫り込み可能な文字サイズです。

彫り込み文字よりも浮き出し文字のほうが作成しやすく、判読性も高くなります。文字の高さ(金型の側から見れば深さ)は0.250.38mm程度にしてください。文字を配置する位置によっては、エンドミルが届きにくく、金型加工が困難な場合があります。その場合、パーティングラインの近くや高さのあるフィーチャから離れた位置に文字を配置することをご検討ください。 液状シリコーンゴム(LSR)や熱可塑性エラストマー(TPE)のような柔らかい材料で成形する場合を除いて、文字は常に金型の抜き方向に向けてください。そうしないと、パーツの取り出しで問題が発生しますので、手動装着式の型インサートやスライドを取り入れる必要が生じるでしょう。

この飲料容器の蓋のように、パーツ上の文字はよく見られるフィーチャですが、細心の注意を払う必要があります。

この飲料容器の蓋のように、パーツ上の文字はよく見られるフィーチャですが、細心の注意を払う必要があります。

Triax Technologies社では、つい先日、このSpot-Rの二色成形で米プロトラブズのサービスを利用しました。これはIoT対応のウェアラブルデバイスで、建設作業現場の厳しいIT環境向けに作られています。二色成形を使用することで、防水封止用のガスケットを備えた硬質プラスチックケースの設計と生産が可能になりました。(※本内容はプロトラブズ米国本社での事例となります)

Triax Technologies社では、つい先日、このSpot-Rの二色成形で米プロトラブズのサービスを利用しました。これはIoT対応のウェアラブルデバイスで、建設作業現場の厳しいIT環境向けに作られています。二色成形を使用することで、防水封止用のガスケットを備えた硬質プラスチックケースの設計と生産が可能になりました。(※本内容はプロトラブズ米国本社での事例となります)

二色成形

短納期二色成形は、ドライバーの柄に人間工学的なグリップを加えたり、外科器具に滑らない清潔な持ち手を加えたり、計器のケースに耐衝撃性を持つカバーを加えたりするのに適した方法です。このようなカバーを射出成形パーツに接着したり、ネジで留めたりする必要はありません。2段階のプロセスで仕上げる二色成形では、従来の結合方法よりもはるかに優れた接着が得られるからです。

二色成形では、成形済みの一次側パーツを二次金型に配置して、二次側成形材料を充填します。ただし、注意する点がいくつかあります。2種類の材料に親和性が必要です。ポリエステル系エラストマー(TPC)とABSまたはポリカーボネート、スチレン系エラストマー(TPS)とポリプロピレンの組み合わせが良いでしょう。

結合の種類も考慮しなくてはいけません。前述の例は、いずれもしっかりした化学的結合が得られますが、一部の材料は親和性が低く、形状的に結合する必要があります。そのために一次側成形品にアンダーカット形状を設けるとコスト面が心配になりますが、この方法は実際に、二色成形パーツを確実に連結させるのに効果的な方法です。検討中の材料にかかわらず、ほとんどの樹脂メーカーでは、化学的な結合と形状的な結合の併用を推奨しています。また、大規模なプロジェクトに着手する前に、二色成形材料サプライヤーと相談することをお勧めします。

ご参考:
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 電 話: 0120-2610-25 
 Email: [email protected]

技術資料(ホワイトペーパー):

図解 樹脂部品設計 Vol 1

樹脂射出成形を考慮した樹脂設計について図解しました。射出成形の仕組みから推奨肉厚、肉厚、表面仕上げ、公差、キャビ・コア、樹脂の選定など樹脂製品の設計にお役立てください。

図解 樹脂部品設計 Vol 2

凹凸形状や穴形状、直線や曲線などさまざまなフィーチャを備えた樹脂パーツの設計に関するアドバイスをまとめました。 スライド、テーパ合わせ、置き駒、無理抜きなどに関する解説もお役立てください。