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形状に<アンダーカット>のあるパーツの成形テクニック ― 5つのヒント

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アンダーカットとは、金型から成形品を取り出す際に、そのままの状態で離型できない形状のことです。2方向抜き金型では、金型のパーティング面に対して垂直に配置されていない突起、穴、くぼみなどはどれもアンダーカットと言えます。

例えば、射出成形したスクリューキャップの内ねじ、樹脂製継手の内径穴、スマートフォンケース側面にある充電ケーブルの穴、樹脂ケースのフックやラッチなどにアンダーカットの形状があります。

このような形状のあるパーツは他にもたくさんあり、成形しやすくするためにパーツの設計にちょっとした工夫をする必要があります。今月のDesign Tipsでは以下の5つのテクニックについて紹介します。 

  • パーティングライン
  • スライド
  • 無理抜き
  • 置き駒
  • 押し切り合わせ
アンダーカット

①のようなアンダーカットは金型構造が複雑になり、パーツを取り出せなくなる場合があるため、できる限り設けないのが無難ですが、②のように押し切り合わせで成形することもできます。

1. パーティングライン

アンダーカットを処理する最も簡単な方法は、金型のパーティングラインの位置を変更することです。パーツ外周に位置決めや固定用として四角または円形の突起形状が必要な場合があるとします。パーツの外側面に抜き勾配が設けられているので、パーティングラインの位置を変え、抜き勾配の角度を調整することで、アンダーカットを回避することが可能です。場合によっては、このようにしてパーティングラインを上下方向に切り替えることで、複数のフィーチャに対応することができます。しかし、パーツの向きやパーティングラインの配置は、パーツ全体の形状、樹脂の流動など、その他数多くの要因も考慮して、決定する必要があります。したがって、次善の策として型開き方向に対して垂直に動くスライドも考慮してみましょう。

2. スライド

保護キャップのような筒状のパーツを例に取り上げてみます。これは、型開き方向に対して垂直に動くスライドを使う最適な事例です。スライドを使用して、内径穴を作ることができます。この場合、パーツの長手方向に沿って金型を分割します。成形サイクルが開始すると、アンギュラピンに沿ってスライドコアが前進し、金型が閉じます。溶解した樹脂を充填して、しばらく冷却させます。金型が開くと、再度アンギュラピンに沿って、スライドコアが後退し、アンダーカットが徐々に外れ、完全に外れたところで、パーツが押し出されます。

対応可能なスライド形状部の最大寸法は、幅213.8mm、高さ60.3mm、引き方向は73.6mmです。複数のスライドを使用することも可能ですが、パーツサイズ、複雑さ、マルチキャビティ金型によってスライドの数やサイズが制限される可能性があります。スライドを使用することで金型のコストは高くなりますが、それによって得られる形状や機能との、費用対効果を検討する必要があるでしょう。

スライドに適しているのは、ABS、ナイロン、ポリカーボネート、アセタールなどの硬質材料です。弾性のある柔軟な材料は、離型抵抗により変形してしまう可能性がありますので、スライドで形成する範囲について注意が必要です。

パーティングライン

勾配付きの外側面に突起形状を設けるとオレンジ部分がアンダーカットになります。パーティングラインの位置を変更することでアンダーカットを回避することが出来ます。

筒形状のパーツ

筒形状のパーツを2方向抜き金型の固定側と可動側のみで成形するのであれば(図左)、より大きな抜き勾配をつけて、肉厚を増やさないと、金型の加工や、パーツの離型が難しくなることがあります。その対処方法として、パーツを横にして、筒形状の長手方向にパーティングラインを配置し(図右)、内径をスライドによって成形できるようにすると、取り出しが容易になります。

3. 無理抜き

無理抜きを使用すると、ヒンジ付き容器の蓋など、本体にカチッとはまる部品を成形することができます。スライドを使用するのではなく、入れ子にアンダーカット形状を加工し、金型に挿入して固定します。パーツの離型時、アンダーカット形状が一時的に潰されながら金型から外れます。
無理抜きをうまく行うには、滑らかでエッジの丸い、あまり尖っていない形状でなければなりません。また材料には、ちぎれることなく凸凹を通り抜けるだけの柔軟性が求められます。適している材料としては、PP(ポリプロピレン)やLDPE(低密度ポリエチレン)のほか、TPE(熱可塑性エラストマー)などがあります。
無理抜きを利用するにあたってパーツの取り出しについても考慮する必要があります。エジェクタピンがパーツを突き破ったり、白化したりすることなく、きちんと押し出せなくてはいけません。場合によっては、押し出し面積を増やすために、ブロックやプレート突出しを検討する必要があります。

柔軟な材料と無理抜きと言って思い浮かぶのは液状シリコーンゴム(LSR)成形でしょう。これは熱硬化させてパーツを成形するプロセスです。シール、ガスケットなど、高い柔軟性が必要なパーツの製作に特に適しており、アンダーカットや複雑なパーツに対する制約も樹脂射出成形に比べると少ないのが特徴です。

4. 置き駒

医療機器向けの樹脂製ケースについているスナップ、たとえば、血糖値計を例に考えてみましょう。大きさはPCのマウス程度で、筐体は2つに分かれます。一方の底には内周に沿って突起がついており、回路基板などの電子装置を埋め込みます。突起は無理抜きを行うには高さがあり過ぎて、尖り過ぎています。また、パーティングラインを調整することはできません。どうしたらよいでしょうか。

このような場合、置き駒を利用しましょう。アンダーカット形状を加工した金属の置き駒を手作業で金型に挿入します。成形オペレーターは1ショットごとに置き駒をパーツと一緒に取り出し、次の成形でこの置き駒を再度金型に取り付けます。
この操作は手作業ですので、自動で行えるスライドと比べて成形時間が多少長くなります。しかし、試作品や小ロット生産であれば、置き駒は傾斜コアの代用として適切です。高温の置き駒やパーツを手で扱うので、防護手袋を着用しての作業となるため、置き駒のサイズも考慮する必要があります。10mm×10mmを下回ると小さすぎて取り扱いが困難になります。

5. 押し切り合わせ

2方向抜きの金型の面を擦り合せて密着させる押し切り合わせはフックやクリップ形状の成形によく使用されます。スライド、置き駒、無理抜きでは金型が複雑、高価になってしまうことが多いのですが、押し切り合わせではこれらを利用せずに、金型の固定側と可動側の面を擦り合せて密着させることで、フックなどのアンダーカット形状を成形することができます。

押し切り合わせは、金型の設計を簡素化し製品コストを削減する効率的な方法です。使用する場合、摩擦による傷みからの保護と合わせ面同士の密着度を強くするため、抜き勾配を大きめにする必要があります。最低でも3°の抜き勾配(最適な勾配量は押し切り面の高さによります)を設けると、金型の押し切り合わせ面同士のクリアランスが確保されますので金型開閉時に擦れなくなり、バリに繋がる金型かじりや摩耗のリスクを避けることができます。

アンダーカットに関するその他のヒント:
  • スライドや置き駒を使用してアンダーカット処理を行うことで初期金型費用やパーツ単価が増加します。長期的な製品計画を立てて、その費用対効果を検討することが重要です。
  • 当社では対応していませんが、二次加工という選択肢もご検討ください。ボール盤やフライス盤を使って成形パーツに穴をあけるような追加工は、金型ですべて対応しようとして複雑な構造にしてしまうよりコストがかからないこともあります。特に、プロジェクトの試作や小ロット生産の段階ではそうです。

本件に限らず、ご質問やご不明な点につきましては、弊社エンジニアまでお気軽にお問い合わせください。
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技術資料(ホワイトペーパー):

図解 樹脂部品設計 Vol 1

樹脂射出成形を考慮した樹脂設計について図解しました。射出成形の仕組みから推奨肉厚、肉厚、表面仕上げ、公差、キャビ・コア、樹脂の選定など樹脂製品の設計にお役立てください。

図解 樹脂部品設計 Vol 2

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