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3Dプリンティングの次の局面

~積層造形の現状と未来~

この10年でインダストリアル グレードの3Dプリンターへの注目が高まり、特筆すべき技術の進化と新たな応用の可能性を切り拓いてきました。また、3Dプリンティングや積層造形をめぐっては、登場して30年以上経つこのテクノロジーが、機能面で大きく飛躍する段階に入ったかどうかで、業界誌の誌面を賑わせています。

米 Proto Labs の積層造形部門バイスプレジデント、Rob Connelly は、最近相次いで発表された新しい機器、材料、ソフトウェアにおける進展を指して、こう表現しています。「現在は、これまでの進化が結実しつつある時期です。」

3Dプリンティングの現状と未来を洞察するために、3Dプリンティング業界をリードする3名にインタビューを行いました。

 

3Dプリンティングの機器、工法、機能に関する最新情報

Murray 氏:
ごく最近、欧州の大手自動車部品メーカー向けに6気筒エンジンブロックを3個造形しました。今頃ドイツのアウトバーンを走っていますよ。すごいでしょう。ですから、最新の注目ポイントとして、「大型部品を出力できること」を挙げたいと思います。 もう1つ期待しているのが、現在ベータテスト中のモジュラー式装置「Factory of Tomorrow」です。数百台のマシンを、完全に自動化された自律的な1つの環境に連結するものです。 [編集者注:Concept Laser製X line 2000Rの最大造形範囲は800mm x 406mm x 508mm]

 

ROB CONNELLY
米 Proto Labs
積層造形部門バイスプレジデント

JOHN MURRAY
Concept Laser 社
(金属3Dプリンターの世界的メーカー)
米国支社長兼CEO

PATRICK DUNNE
3D Systems 社
(3Dプリンターの製造販売)
Advanced Application Development 部門
バイスプレジデント

Dunne 氏:
私の見方では、3Dプリンターの進化は新しい機能に関するもので、新製品ではありません。結局、重要なのは、3Dプリンターから何を得られるかに尽きます。現状では、既存の3Dプリンティング技術の多くで、急速に機能が進化しています。

Connelly 氏:
当社がHP社の新テクノロジー「Multi-Jet Fusion」のパートナーの1社に選ばれたことを喜んでいます。このテクノロジーは、3Dプリンティング業界の焼結樹脂部品の分野を根底から変える大きな可能性を秘めています。それを評価し、進化させるための助言や、お客様に役立つための位置付けを行うために、HP社と緊密に協力していきます。当社は機器メーカーではなく、いかなる機器OEMメーカーの傘下にもありません。そのため、ベストの機器を取り入れて、スピーディーに当社サービスに組み込むことができます。

「材料面」の新たな動きとは?

Dunne 氏:
現在の材料によって、3Dプリンティングは試作にとどまらず、機能パーツの製造を可能にしつつあります。この状況は金属と樹脂の両方で起きています。樹脂で注目すべき進展は、先日当社が発表した Figure 4 プラットフォームによって実現しました。 Figure 4 では、超高速積層造形を自動化された生産環境に導入できます。このシステムの特徴により、従来は達成不可能だった特性や、機能熱硬化性樹脂を上回る特性を持つ、新しいポリマーを使用することが可能です。

Murray 氏:
当社は金属を専門にしています。1つのトレンドは、競争優位性を求めるお客様の存在です。非常に特殊な合金を開発するために、当社に相談に来ます。私は「ブティック合金」と呼んでいます。先日、航空宇宙部品メーカーの金属加工技術者に、笑顔でこう言われました。「貴社のテクノロジーは最高ですね。金属を意のままに扱えるのは初めてです」

Connelly 氏:
新型 Carbon プラットフォームは、光造形の実用化のための試作だけでなく、最終パーツの製造を可能にし、発展させるものです。 Carbon の工法には、他の工法と同様に長所と短所がありますが、1つの長所が樹脂の新たな材料です。1回で使用される材料がごく少量であるため、Carbon の工法では、限られた作業時間で複合材料を経済的に使用できます。そのため、現行の長期保存が可能な樹脂より性能の高い材料の可能性が広がります。現在、評価を進め、お客様に役立てていただける時期を探っているところです。また、1つのパーツ内で複数の素材を組み合わせて造形することも、楽しみな展開の1つです。この可能性についても、現在評価を行っています。

ソフトウェアのトレンドについて

Connelly 氏:
処理能力の爆発的な向上と対応するソフトウェアのパワーは、3Dプリンティングの応用を広げるうえで大きな原動力でした。注目すべきトレンドとしては、ユーザーインタフェースの向上、工法別の解析/シミュレーション、将来的に3Dプリンター用入力データのSTLファイルに代わる、新たなファイル形式規格の確立が挙げられます。

Dunne 氏:
ソフトウェアの面では、楽しみな領域が2つあります。 1つは、トポロジーの最適化です。アルゴリズムを使って構造体を設計します。人手で少ない回数を繰り返すのではありません。これにより、効率と最適化を最大限に高めることができます。興味深いことに、このように最適化された形状は、従来の製造技術ではほとんど対応できません。トポロジー最適化と3Dプリンティングの間には、一種の共生関係が生まれています。 もう1つは、3Dプリンターとの制御や対話を行うソフトウェアの進化です。これらのソフトウェアツールは、デジタルファイルを読み込んで、物理ファイルとしてエクスポートするプロセス全体の制御や管理を可能にします。

Murray 氏:
当社の新しい QM Meltpool 3D システムは、本当に強力なパーツ監視・検査用ツールです。造形が完了すると、その造形全体の仮想CTスキャンが得られます。航空宇宙や医療の分野で多くの注目を集めています。 このほか、当社の Parameter Editor は、材料の各変数の策定、適性の検討、調整を行う、従来にない機能をお客様に提供します。パーツの全体的な品質の向上を目指します。

3Dプリンターの「試作」での活用は依然堅調だが、量産への導入にはさらなる進化が必要か?

Connelly 氏:
3Dプリンターを使った生産は、長年多くの企業にとって「達成するのはかなり難しい」ことでした。実際には、一部の生産用途で数十年間コンスタントに使用されてきました。工法の技術革新が継続に行われ、テクノロジーが進化するなか、3Dプリンターを使った生産を実用化できる用途は今後増えていきます。

Murray 氏:
量産用3Dプリンターはすでに存在します。未来の波ではありません。最大手クラスのあるお客様は、膝や股の人工関節の生産を始めてもう6年になります。これには皆さん衝撃を受けますね。また、航空宇宙の分野では、航空機メーカーのエアバス社が、3Dプリンターを使った大量生産に非常に積極的に取り組んでいます。

Dunne 氏:
すでに当社には、1日15万個以上の独自パーツを生産している積層造形ワークフローがあります。こういった「マスカスタマイゼーション」製造ワークフローに加えて、「大規模に複雑化」する製造ワークフローも増えています。そこでは、設計エンジニアがパーツの複雑さをうまく活用して、最終製品の価値を高めています。好例が、脊椎手術で使用される3D出力した脊椎ケージです。インプラントであることは同じですが、従来の製品を格段に上回る性能特性を実現します。

3Dプリンティングが従来の製造業の一角を占める理由 

Murray 氏:
3Dプリンティングはすべてを解決できるわけではなく、万能でもありません。ただ、ツールが増えたということです。3Dプリンティングにより、10個の部品を一体化したり、パーツを軽量化したり、強度を高めたり、製造を効率化したりできます。

3Dプリンターを有効活用している業界

Dunne 氏:
「航空宇宙」と「ヘルスケア」が思い浮かびます。航空宇宙では、部品点数の削減、性能の向上、軽量化がすべてです。航空機は、重量や金属の塊が空を飛ぶという点で、効率の悪い部分が多々あります。トポロジーの最適化により、その重量を大幅にカットできます。ヘルスケア企業でも、同様のメリットを得ています。

そのほかの注目すべきトレンド

Connelly 氏:
検討すべきトレンドの1つは、デスクトップ3Dプリンターのコンシューマ/ホビー市場を重視するのをやめることです。今では明らかなように、この分野は早い段階で大きく騒がれましたが、現在は下火になっています。

Dunne 氏:
特に興味深いトレンドは、メイカー(アマチュアのモノづくり)運動の帰結として、3Dプリンターの工法と可能性に精通した設計者世代が、業界に現れ始めていることです。彼らにとって、3Dプリンターは最初からある当然のテクノロジーです。問題を解決するのに、専用工具ではなく、最初のツールとして3Dプリンターを考えるのです。

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