Case Study

試行錯誤が生み出した「至福の一杯」

オンデマンド射出成形サービスの活用で 新方式のコーヒードリッパーを製品化した 倉敷のベンチャー、「ゾイコフ.」。

「Gentle Coffee Dripper」は給湯タイプの本格ドリッパー ハンドドリップと変わらないコーヒーがいちどだけの給湯で簡単に。


User’s Profile 

ZoeCof.[fee] (ゾイコフ.)

http://gentledripper.com/

本社:          岡山県倉敷市大内王子掛968-4

代表:          岸本恵子

設立:          2015829日 

事業内容:    コーヒー豆焙煎、コーヒードリッパーの開発・製造・販売


本製品の「タンク」部分の製作にプロトラブズの射出成形サービスを活用。 耐熱性のあるポリプロピレンを使用することで安定した形状を保持。

絶妙に焙煎した豆を丁寧に挽き、ゆっくりとハンドドリップで淹れたコーヒー。その味わいと香りに魅せられた倉敷の起業家、岸本恵子氏。感動的な「至福の一杯」を誰でも簡単に楽しめるようにと、これまでになかったコーヒードリッパーを生み出しました。しかし、その開発の道のりは決して平坦なものではありませんでした。数年におよぶ地道な試行錯誤のあと、目の前に立ちふさがった耐熱性タンクの製造。この難題を一気に解決したのは、プロトラブズのオンデマンド射出成形サービスでした。

伝統のドリップ、透明な味わいへの一歩

「一口にコーヒーと言っても、実際にはいろいろな淹れ方があります。エスプレッソやフレンチプレスなどもそうですが、日本には昔からの淹れ方としてハンドドリップがある。挽いた豆にお湯を少量注ぎ十分に豆を蒸らした後、コーヒー粉が膨らんだところに優しくお湯を注ぎ入れてコーヒーを抽出する。これを透過法といって、このやり方で淹れると、雑味のない透明な味わいになります」。そう話すのは倉敷でコーヒーロースタリーを営む岸本氏。同氏は今年、長年の夢だったコーヒードリッパー「Gentle Coffee Dripper」を完成させました。お湯を一気に注ぐだけでハンドドリップの味わいを再現できるオリジナルドリッパーです。

そもそも岸本氏がハンドドリップのコーヒーの味に目覚めたのは5年前。スペシャルティコーヒーの生豆を手に入れ、みずから焙煎して飲んでみたところ、その味の違いに驚きました。「こんなに美味しいコーヒーは飲んだことがない」。そう思った岸本氏は、もっと多くの人々にこの美味しさを味わってもらいたいと考え、方法を模索しはじめます。

とはいえ、ものづくりに関してはいわば素人。自分の舌の確かさと一杯のコーヒーが与えた感動だけが頼りの、手探りの製品開発でした。「紙製のコーヒーバッグを作ってみたり、お米の計量に使う金属容器の底に穴を開け、二枚の磁石をバルブ代わりに貼り付けてみたり、アクリル板を熱で加工して貼り合わせたり、とにかくあらゆることを試してみました」と岸本氏は当初の悪戦苦闘ぶりを振り返ります。

結局のところ試作に3年を費やし、ようやく満足のいくものができあがりかけたとき、目の前に大きな壁が立ちふさがりました。製造です。地元のプラスチック加工業者に製作を依頼したところ設計の詰めが甘いと断られました。射出成形を勧められたものの、紹介された金型業者の見積もりはとても手が届くものではありませんでした。

作り手と共にコスト、製造性を検証

「最低でも1,000個の発注で、費用は数百万円と言われました」と岸本氏。これでは手が出ない、自作するしかないと思い直して、アクリル板を手にとって加工してみましたが、何度もお湯を注ぐと変形するなど、どうしてもうまくいかない。半分諦めかけていたとき、ネット検索で目に飛び込んできたのがプロトラブズのオンデマンド射出成形サービスでした。

「クリックすると、いくつか事例が紹介されていて、そこに最小オーダーは25個からとありました。しかも、かかる費用は数十万円。信じられませんでした」と岸本氏は話します。半信半疑で連絡を取ってみると、3次元データさえあれば引き受けられるとのこと。岸本氏は急遽フリーソフトで2次元図面から円錐形タンクの3次元モデルを作成し、それをプロトラブズの見積もりサイトにアップロードしたところ、数時間後には最初の見積もりが提示されたのです。

「ほかの金型業者は相手にもしてくれなかったのに、プロトラブズはそのデータをもとに製造性を検証し、問題点まで指摘してくれました」と岸本氏はその徹底したサービスを満足げに語ります。

 

たとえば円錐形タンクの内側にある注湯ライン。これは当初凹型になっていましたが、それでは金型が入れ子になりコストがかさむため凸型に変更しました。また、タンク底のバルブ装着部分にも金型が抜けないアンダーカットが見つかったため形状を修正しました。このほか面取りや肉厚、エジェクターピンの位置など、素人には気づきにくい部分にも「駄肉を避けるためのフラット形状の提案」など、具体的かつ細かなアドバイスがあり、金型の費用削減にも役立ちました。

また、多くの選択肢から適切な素材を選ぶことができるのも大きなメリットだったと岸本氏は話します。開発当初から悩みの種だったアクリル製円錐形タンクの変形の問題は、素材を耐熱性のあるポリプロピレンに変更することで一気に解決しました。

最終仕様がようやく固まり、岸本氏は200個の円錐形タンクを発注。数日して倉敷の仕事場に届けられました。「箱を開けたときは、感動しましたね。思った以上の仕上がりです」。思い立ってから5年間、妥協せず味にこだわり、至福の一杯を求めてきた努力が実った瞬間でした。

起業家を支援、製造のパートナー

2015年、岸本氏は日本の伝統的コーヒー文化であるハンドドリップ式コーヒーの味を広めることを目指し、自分たちのコーヒーロースタリー「ゾイコフ.」を立ち上げました。このところハンドドリップコーヒーはサードウェーブという流れの中で注目を集め、その代表格である米国のコーヒーチェーンは日本市場にも進出を果たしています。この波にうまく乗れば、ゾイコフ.にも大きな成功のチャンスがあるかもしれません。

今後、岸本氏は、円錐形タンクに加えアクリルの本体部分も射出成形に変更する予定です。また、2杯から3杯のコーヒーが抽出できる大ぶりのドリッパーの開発も視野に入れています。それらの資金調達には銀行ではなくクラウドファンディングを利用する計画です。

資金集めからものづくりまで、起業家のイノベーションをサポートする仕組みは今後も確実に整っていくでしょう。時と場所を選ばず、アイデアを持つ人々が手軽に斬新な製品を市場に送り出す時代がやって来つつあります。

そのなかで、こと製造に関してはプロトラブズが最良のパートナーだと岸本氏は話します。「これからも製品化のプロセスでは、プロトラブズ以外には考えられません」。