Case Study

短納期切削加工があったから形にできた

デザイナーのユニークなインスピレーション

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武蔵野美術大学
1929年に開学された帝国美術学校を祖にし、1948年に現在の武蔵野美術大学となった同学は、学部から博士課程まで、さまざまな分野の造形の専門家を育てており、現在は11の学科、7000名の学生を擁している。現在、その卒業生は60,000人を超え、美術やデザイン界にとどまらず、建築、映像をはじめとして、文学や演劇、さらに音楽も含めた、多彩な領域においてその高い専門性と視野を活かした能力を発揮する人材を輩出し続けている。

武蔵野美術大学は1929年の創立以来、さまざまな分野の造形のプロフェッショナルを育てています。その中でもユニークな存在が「共通デザイン研究室」の存在である。共通デザインでは、特定の専門領域にとどまらない、根源的な造形力を追求している。今回、同研究室で開発された自転車「Lightning-Man」は、その造形力をフルに活かしてデザインされている。実は、その実現に重要な役割を担ったのがFirstcut だと言っても過言ではない。

目的の形状を実現できる試作ソリューション

日常の「足」としての役割が期待されることが多い自転車は、機能性やシンプルさが求められてもアーティスティックなものを考慮して設計されることは少ない。ところが、今回、武蔵野美術大学の共通デザイン研究室で助手を勤める吉岡孝浩氏は、自転車「Lightning-Man」を開発するにあたり、デザイナーらしいこだわりを形にした。吉岡氏は彫刻学科の出身で、フォルムを 3D CADを使って作成することにも以前から取り組んでいる。見立てと読み解きによって、さまざまなモチーフを組み合わせ、それらを見立てて小説を読み解くようにストーリーのある作品を作るのが吉岡氏のやり方だ。吉岡氏は、男っぽさや濃さに魅力を感じると言う。言い換えると生きていることが実感できる、アグレッシブな存在だ。単に自 転車に乗るのではなく、獣にまたがるというアグレッシブさに発想が拡がる。どうせ獣なら雷神のような神様にまでその発想が至る。それが、この自転車の形に反映されているだけでなく、「Lightning-Man」と命名されるきっかけにもなった。 2011年4月から11月に至る開発期間中のうち、スタートから7月までを、素材や加工方法の研究などの技術上の調査にあてた。ボディーの主要部品には、目指す意匠性の実現に最適と考えられるカーボンファイバーのコンポジット材(CFRP)を採用した。 重要な機能部品は、アルミの切削加工で製造する。そして、このアルミの部品の製造が一つのハードルでもあった。というのも、例えば、アルミ部品の中でもハンドルは、雷神の角であり、根本は機能部品であるとともに意匠上も重要な役割を担っていた。もちろん、精度も必要だ。軸受、ベアリングが入るカップなどは精度が求められる部分だ。ところが、これが意外なネックであった。確かに切削加工をやってくれる企業は決して少なくないものの、吉岡氏が求めるデザインを求める精度で引き受けてくれるところを中々見つけることができなかったのだ。最終的に依頼したプロトラブズの決め手は、そのスピードであったが、同時に Firstcutを活用することで望みの形状が望みの精度で作れることは大きかった。吉岡氏は、「角の根本にあたるハンドル付け根の部分は、まさにFirstcutがなくては作れなかった部品です」と語る。

「Lightning-Man」は、吉岡氏が「雷神」とそれを乗りこなす猛々しさをモチーフに デザインした。ボディーはCFRP製、重要な機能部品はアルミの切削加工による。 サドルが乗る部分は背骨、サドルは鞍、ハンドルステムは角である。

「設計」のプロでなくても意匠と加工性の両立を助けてくれるソリューション

プロトラブズのFirstcutの利用に必要なのは3D設計データだけである。吉岡氏は、従来からRhinocerosで3Dモデリングをおこなっていることもあり、うってつけのサービスだ。しかし、3Dモデリングができることイコール加工性のある設計ということにはならない。従来の加工サービスであれば、設計者が自分の意図を図面で示し、加工できるデータを作っていくのは加工者だ。 Firstcutの場合には、デザイナーや設計者がダイレクトに自分の意図を加工に反映させやすい一方で、加工性を考慮したモデリングは、自分で行わなくてはならない。 Firstcutの場合には、FirstQuoteと呼ばれる双方向の見積もりサービスが用意されている。自分がアップロードした3Dデータに対して、加工性の問題が表示され、それに対応することで加工 可能な形状を仕上げることができる。また、この支援をするプロトラブズ社のサポート担当者との会話も、お互いに同じ3Dデータの画像を共有するだけに、スムーズに進む。 「言葉だけで自分のイメージを伝えることは非常に難しいのですが、目の前の3D画像を元に会話をするので意思疎通が楽でした。また、このプロセスを通じて、自分なりに加工を意識したモデ リングができるようになったと考えています」と吉岡氏は語る。

Firstcutによるハンドル部分の付け根。上部の曲面は意匠的にも重要

目的の素材を使って短納期で部品を試すことができることの重要性

吉岡氏は、基礎調査が終わった後、8月から一気に自転車のモデリングを開始し、11月のデッドラインを目指した。自転車のモデリング作業自体も約3週間という極めて短期間に行ったが、部品製造に残されていた時間も短いし、使えるコストにも制限がある。さらに、元々工業デザイン出身でない吉岡氏にとって、素材の特性を活かしたデザインをしてくというチャレンジによる設計上のトライアンドエラーもあり、さらに時間がタイトになる。開発そのものは時間との戦いでもあった。ここでも、Firstcutが大きな役割を果たした。Firstcutでは 1日~3日という短納期で部品が納品される。吉岡氏によれば、かなり時間に追われることもあり、このスピードに救われたとも語る。また、もうひとつ重要なポイントは、素材の選択肢の自由度だ。吉岡氏はアルミの中でも6061などの使用を決めていたが、この素材を扱ってくれる会社がなかなか見つからなかったと言う。プロトラブズではFirstcutの素材としてこのアルミ6061を在 庫していて、本番の素材を最初から使うことができた。Firstcutの魅力は、従来から製造業に携わっていた人にも、その他の分野からモノづくりに参入する人にも、QCD(品質・コスト・納期)をバランスよく提供する点にもあると言えそうだ。

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