Case Study

ブランド品質を試作する

スピード切削加工サービスで次世代AR(拡張現実)映像デバイスの装着性を高めたエプソン

セイコーエプソン株式会社
ビジュアルプロダクツ事業部
HMD 事業推進部 主任

鎌倉和也 氏

User’s Profile

セイコーエプソン株式会社

http://www.epson.jp/

本 社 : 長野県諏訪市大和三丁目3番5号
創 立 : 1942年5月18日
資本金 : 532億400万円
売上高 : 連結 10,924億円(2016年3月期)
従業員数 : 連結73,340名/単体12,333名(2016年9月30日現在)
事業内容 : プリンター事業、 プロフェッショナルプリンティング事業、ビジュアルプロダ クツ事業、ウエアラブル機器事業、ロボティクスソリューションズ事業、 マイクロデバイス事業、他

ウオッチ開発で磨きあげられた精密加工の技と、市場を切り拓く斬 新なイノベーションにより世界シェア1位の製品を数多く生み出して きたエプソン。同社のビジュアルプロダクツ事業部は先ごろ、独自の 光学技術を駆使したAR(拡張現実)スマートグラス「モベリオ」の 最新モデルを発表しました。有機ELの採用により軽量化と高画質を同 時に実現したこの製品の開発にあたり、ユーザビリティを左右する装 着性の検証に力を発揮したのが、プロトラブズのスピード切削加工サ ービスです。

AR市場向け新世代モデル、設計の挑戦

近未来的なフォルムを持つスタイリッシュなデザイン。光沢を放つそのシルバーフレームには、液晶で培われてきたマイクロディスプレイのノウハウと最新の光学技術が詰まっています。これはエプソンが近ごろ開発した「モベリオBT-300」。有機EL の採用により液晶のバックライトをなくし、小型軽量化を実現。メガネのようなかけ心地でユーザーに鮮やかなAR(拡張現実)体験を提供するスマートグラスです。外部メディアへの接続機能も備え、インターネット上の動画やDVDに納められた映像コンテンツにアクセスできるほか、専用アプリを使えば、飛行中のドローンによる空撮映像を目の前の風景に重ねることも可能です。
「コンシューマー向けなので、とにかく軽さ、かけやすさを目指しました」と話すのは、BT-300の機構設計を担当した鎌倉和也主任。先行モデルでは、重さや大きさに対するユーザーの要望が多かったため、小型化、軽量化、装着性の向上を開発目標に据えたと話します。「このモデルから光学システムをOLED(有機EL)に変えたことでバックライトが不要となり、その分軽くなっていますが、さらに樹脂部分の肉厚をできるだけ削ぎ落とし、部品点数も最小に抑えました」。
鎌倉氏は機構設計に10年以上の経験を持つベテラン。軽量化、小型化、強度確保といった要件は、いわば日常茶飯事の事柄です。しかし、今回はひとつだけ悩ましい問題がありました。それは、装着性。「ワールドワイドで発売する商品であるため、ユーザーは日本人ばかりでなく海外の方も含まれます。男性もいれば女性もいる。当然、頭のサイズは異なり、かけ心地に関する感じ方も一様ではありません」。
装着性は、強度や重心バランスとは違い、データ上で検証できないため、実際にものを作って確認するほかありません。BT-300は光学システムを刷新した次世代機種のマスターモデル。失敗は許されないなか、設計のタイムリミットが迫っていました。

出図直前の装着性確認、ブランド品質を確保

「プロトラブズの切削加工サービスを知ったのは、まさに出図直前でした」と鎌倉氏は振り返ります。「量産前にどうしても、もう一度、テンプルやクリングスのかけ心地をフィジカルに確認しておきたいと思っていたのです」。加えて、この試作には設計ばかりでなく事業部としての最終承認の意味合いも含まれていました。鎌倉氏は早速、設計データをプロトラブズの見積もりサイトにアップロードします。
発注は初めてでしたが「不安はなかった」と鎌倉氏は話します。「削り残しなどの加工リスクが事前にわかる仕組みになっていて、問題を潰しておくことができるからです」。また、そうした製造性確認のほか、カスタマーサポートとの電話でのやりとりも安心につながりました。「とにかくスピードが最優先なので、今回は多少の削り残しはそのままにし、こちらで処理することにしました。その方が早いからです。電話で綿密な打ち合わせができ、納品されるものの予測がつくことは、設計者としてはありがたい」。

「普通の試作方法だと時間とコストがかかるところ、プロトラブズのサービスなら、 そこをクリアできます」と、鎌倉氏

最終的に、鎌倉氏は出図前に2回の試作を実施しました。「ウレタン樹脂成形などの簡易金型は、3週間に1回が限度ですが、今回は2回の試作を行うことができました。同じ時間で試作サイクルを倍に増やせることは、やはり嬉しい。それだけ設計精度も上がります」と鎌倉氏は評価します。「装着性の評価も上々でした。身につけて使う製品なので、かけ心地が悪いと話になりません」。こうしてBT-300は、エプソンブランドにふさわしいプロダクト品質を確保し、量産へと進めることができたのです。

業務用モデルにも展開、QCDの好サイクルへ

今回の評価を受け、エプソンではプロトラブズの試作サービスを他機種にも拡大展開しています。「モベリオ業務用モデルの新機種では、射出成形も含めて様々な工程でサービスを利用しています」と鎌倉氏は打ち明けます。「設計精度を高めるにはどうしても時間がかかりますが、納期は動かせない。普通の試作方法が抱える時間とコストの課題も、プロトラブズのサービスならクリアできます」。

鎌倉氏は、スピードやコストのほか、コミュニケーションの明確さもプロトラブズの試作サービスを利用するメリットのひとつに挙げています。「試作では、思惑違いということがよく起こります。たとえば金型メーカーは金型を一番作りやすいかたちで作ろうとしますが、それがこちらの考えとは異なり、納品された時にパーティングラインが違っていた、といったことがよくあるのです。しかし、プロトラブズの場合は、型割りがどうなるのか、ひけ(成形収縮による凹み)がどこにできやすいかなど、すべて明確に示されています。これなら誤解は生じません」。

さらに鎌倉氏は、開発のQCD(品質/ コスト/ 納期)の好循環へ期待を寄せています。「従来1、2回しか回せなかった試作サイクルを倍に増やすことができれば、それだけ設計精度が上がる。すると金型や設計の手戻りがなくなります。開発において、金型修正のような事態は、絶対に避けなければなりません。開発日程だけでなく開発コストにも大きく影響するためです。そうした意味では、手戻りを減らすプロトラブズの試作サービスは、開発におけるQCD好循環のよい誘い水になるのではないでしょうか」。

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