エネルギー業界のスタートアップが、短納期試作・量産部品を活用してブレーカー界に革命を起こす

アトム・パワー社が開発した大規模事業所・産業施設向けの新型ソリッドステートブレーカーは、より安全・迅速な回路遮断の手段となることが期待されている

アメリカでは、創業3年目の新興エネルギー企業が開発した、大規模事業所・産業施設向けの新型ソリッドステートブレーカーが、より安全・迅速な回路遮断の手段になると期待されています。米国ノースカロライナ州シャーロットを拠点とするアトム・パワー社は、大規模事業所・産業施設向けでは初の商業ベースのソリッドステートブレーカーを開発し、現在はアメリカ製品には必須のUL承認の取得に向けた取り組みを進めています。

アトム・パワー社の機械設計技術者でプロジェクトリーダーのテイラー・サントーレ氏は、「私たちがソリッドステートブレーカーで目指しているのは、より安全かつ迅速に回路を遮断する手段をつくることです」と言います。従来のブレーカーは、安全装置として、自動的に作動する機械的な電路開閉機構によって回路の電流を止めていました。アトム・パワー社のブレーカーは、これを機械的プロセスからデジタルプロセスに変えるものです。「この新しいソリッドステートのブレーカーはお客様により高い安全性と信頼性を提供するもので、部品の寿命もより長くなります」とも、サントーレ氏は語りました。

これがどのぐらい画期的な技術かは、エネルギー大手のシーメンスが目を付けたことからもわかります。シーメンスは、その投資部門であるNext47を通じてパートナーシップを結び、アトム・パワー社に投資しています。

シーメンス社のテリー・ロイヤー氏は「アトム・パワー社は従来のブレーカーの根本的革新を最先端でリードしており、エネルギー産業の複雑化が進むなかで、エネルギー意識の向上や迅速対応の実現に向けて、大きな将来性を示しています」と、最近のシャーロット・ビジネス・ジャーナルの記事で述べています。ロイヤー氏は、シーメンスの低電圧・製品事業部門でオペレーションと製品開発を担当する副社長です。

開発の試練: ULの早期取得を目指し、3DPから射出成型まで

サントーレ氏によると、アトム・パワー社は当初、自社の3Dプリンターによる3Dプリント(3DP)で製作した部品を使い、プロジェクト初期の設計段階ではそれでうまく行きました。「すべてのパーツを試作し、寸法や公差を出し、検討ポイントをすべて検討することができました。何度も射出成形(IM)を行うことなく、多額のコストを節約することができました。」

しかし3Dプリントによるアルファ版・ベータ版試作品の製作後、最後になってドラフトがないなどの成形設計上の問題が出てきたため、サントーレ氏らはプロトラブズに試作品用の成形部品の製作を依頼することにしたということです。

こうしてプロトラブズで射出成形によるバージョン3にあたる試作品を製作、さらにいくつか微調整を行ないバージョン4を製作しましたが、変更点はほんのわずかで実質「バージョン3.5」だった、とサントーレ氏は述懐しました。

この過程ではどのバージョンの試作でも、プロトラブズの自動見積システム内の設計解析が有益だった、とサントーレ氏は言います。また、プロトラブズのカスタマーサービスのアプリケーションエンジニアと何度もやりとりした質問や議論が、特に役立ったと語ります。

もちろんこうした作業は、UL認証取得に向け要求される様々な試験やレビューをこなしていくアトム・パワー社のスケジュールに合わせ、スピード感をもって行われました。「当社のようなスタートアップでは、納期が無茶なんですよ」とサントーレ氏は言います。「どうにかこうにかこれらの部品を完成させましたが、プロトラブズが魅力的なのは、とにかく早くやってもらえるところです。」

「当社のようなスタートアップでは、納期が無茶なんですよ」「どうにかこうにかこれらの部品を完成させましたが、プロトラブズが魅力的なのは、とにかく早くやってもらえるところです。」
とサントーレ氏は言います。
デジタル式ブレーカーの外装
プロトラブズは、アトム・パワー社の新型ブレーカー用に、この筐体をはじめいくつかの試作品・最終生産用部品を製作している
製造ソリューション:オンデマンド小ロット生産

このスピード感にプロトラブズのオンデマンド・短納期・少量生産能力が融合し、アトム・パワー社が直面していた、通常あまりない製造上のジレンマを解決しました。この、通常あまりない問題が生じた背景は、UL認証です。

UL認証を取得するまでは、あるいはサントーレ氏の言葉を借りるなら「ULのステッカーを貼れるようになるまで」は、ブレーカー製品の部品の大量生産を始めるわけにはいきません。そこで、「生産がいつでも可能な状態」にしておくことを考えたというのです。

つまり部品は発注するが、量は少なくするということです。「万一UL から設計変更を求められた場合を考えると、何千個も作っておきたくなかったので」とサントーレ氏は説明します。

「これがオンデマンド製造の大きなメリットです」とサントーレ氏は続けます。「おかげさまで、生産用に大きなロットで流す必要がなく、部品を迅速に製作して、外観や感触や強度や、部品が機能するかを確認することができました。」

アトム・パワー社は新型ブレーカーにおいて、機能面でゲームチェンジャーとなるだけでなく、見た目の向上も追求しました。サントーレ氏は言います。「今までブレーカーは後から付け足すものでした。金属製のキャビネットに入れて、閉じこめてしまうものでした。このブレーカーは、ボタンに付いている画面が緑と赤に点灯してオン・オフを表示し、筐体にもそれが表示されるようになっていて、白い操作パネルで全体の見た目も良くしています。」

製品の完成:機能テストの成功

プロトラブズがアトム・パワー社のために製作した完成部品の品質と、納品の速さ、サントーレ氏がプロトラブズを「頼りになる製作所」と呼ぶ2大理由です。

シミュレーション・応力解析、「実使用」試験、さらにUL規定による1万回機械的サイクル試験などで、部品は要求通りの性能を発揮したと語るサントーレ氏。「ここ当社内で試験を行ったのですが、

まったく問題ありませんでした。試験は当社にとって、非常に重要でしたから、、、すべてよく持ちこたえてくれて、みんな喜びました。疲労亀裂も、ストレスマークも、何もなくて、素晴らしい結果でした。」

さらに、納期の短さも「大きなポイントでした」とサントーレ氏は言います。「プロトラブズに電話すれば15日後には必要なものが手に入るので、本当にありがたかったです」

ULの試験は今も続き、追加の製品ラインの開発も行われています。アトム・パワー社ではプロトラブズが担当した交流・直流100A製品はすでに完成し、現在は200A・800A型などの開発を進めています。