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株式会社アロマジョイン
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ITの進化にともなって高解像度の画像はもとより、動画の配信もごく一般的になり、ものづくりの分野すらも個人が作り手として発信できるほど身近になってきた現在でも、遠隔地に伝えることができないものが「香り」でした。その香りを動画とともに視聴者に伝えることができる、これまでになかった画期的な製品が「アロマシューター」です。この製品を実現したものこそ、アロマジョインの代表を務める金東煜氏の研究の成果です。製品化にあたって、ものづくりの側面からはプロトラブズの射出成形サービスが一役買いました。
香り研究の第一人者のものづくりへのチャレンジ
アロマシューターは、六角形のカートリッジの中に、6種類の香りのカートリッジが格納されており、香り分子の噴射に指向性を持たせるとともに、香りを迅速かつ自由に切り替えることができるため、動画に連動させて目的の香りを瞬時に視聴者に届けることができるのです。
カートリッジは簡単に交換できるだけでなく、標準的な使用方法で毎日使用しても約180日は持つため、利用者の手間も少なくてすみます。
アロマシューターの原点は、2004年に金氏が博士課程に在学中の研究にあります。当時の研究成果として、金氏は分子レベルでの香りの制御に成功しています。基礎研究の成果をもとに実際に機能するものを作り上げるところまで成果を積み重ねてきた金氏はいよいよ本格的な製品開発に着手します。金氏は、単に研究としての成果を求めるだけではなく、研究領域からその成果を実用化するプロセスの全体をマネジメントしたい、と考えました。これが、アロマジョインという研究所発のベンチャーの出発点になったのです。
香りを分子レベルで制御するというこの方式には、指向性をもたせ、かつ希釈度がはるかに高く瞬間的に切り替えることができるという利点があります。複数の香りの元を組み合わせれば、様々なバリエーションを作りだすこともできます。その要素技術を完成させた金氏は、実際の製品開発に着手しました。
しかし、ものづくりの専門家ではない金氏にとって、製品の各コンポーネントの量産に向けた開発は困難を極めました。手探りの中、切削加工を専門とする企業と巡り合い、一年がかりで試作品を完成させたものの、そのままでは量産できないということが判明しました。しかも、その段階ですでにかなりの資金を使いきっており、コストも時間も余裕のない状況でした。
その中で巡りあったのが、プロトラブズの射出成形サービスです。金氏が評価したポイントの一つは、金型の製造にかかるコストです。一般に大量生産品に使用するスチール製の金型では、製作コストがかかります。アルミ型ではそのコストが抑えられ、また当初のプランで考えていた「1000台の製造」という観点からもプロトラブズの射出成形を選択することは最適なものでした。
製造から修正までをスピーディーに実現
量産用のモデルの開発は、切削加工の会社から紹介された設計事務所に委託しました。その設計事務所でもプロトラブズの射出成形サービスで量産用のモデルを製造するのが良いのでは、という意見を得た金氏は、プロトラブズに製造を依頼することを決めました。実際の技術上のやりとりは、設計事務所とプロトラブズの間でのインターネットを通じたものになりましたが、そのコミュニケーションには必ず金氏も含まれていたため、そのプロセスには透明性がありました。
プロトラブズのメリットは単にコスト面の優位性だけでなく、そのスピーディーさにもあります。徹底的に自動化を実現しているため、金型の製造から、パーツの成形に至る時間も早く、一刻も早くアロマシューターを市場に投入しなければならない金氏にとっても大きなメリットとなりました。もちろん、すべてが初めからうまくいったわけではありません。「実際にパーツを成形してみると、修正しなければならない箇所が見つかりました。しかし、それらの修正も迅速に対応してくれたことに満足しています」と金氏は述べています。現在、アロマジョイン社では、基板とエンジン以外のすべての樹脂パーツをプロトラブズで製造しています。

サービスの良さと安心感も選択のポイント
金氏はさらにこう続けます。「コストとスピードが最優先のポイントであったが、射出成形を意識した設計への支援、金型の修正といったヒューマンサイドのサポートも重要だ」と。元々、Face to Faceのコミュニケーションを好む金氏にとって、今回の製造でもそのような場があったほうが望ましかったようですが、ネットによるスピードとヒューマンタッチな支援は満足のいくものだったと言います。さらに、人や組織が信頼に足るのかということも重要だと言います。アロマシューターという比較的小型の製品にも特許9件をはじめとする知的資産がつまっており、開発において業務秘密がきちんと守られるかということは金氏にとって重要なポイントでした。その面でも、設計のパートナーであった事務所はもとより、プロトラブズにも安心して任せられたと述べています。
アロマシューターが製品化されたことで、金氏が目指す香りと多様なメディアを融合し、香りで世界を変えることへのチャレンジができるようになりました。元々は、黒だけの色展開だった筐体にも白が登場し、利用者の選択肢は今後ますます増えていきそうです。利用シーンとしては、動画の視聴者に香りを届けるという本来の用途はもちろん、ビジネス面においても、香水をはじめとして香りを選ぶというシーンや、あるいは香りつきのデジタルサイネージといった多様なシーンでの活用が期待されます。